狐の嫁入りのあらすじ
昔むかし、山奥に暮らす3人の親子家族がいました。ある日、父親は村へ買い物に行く道中で、子どもたちにいじめられている狐を発見。かわいそうに思った父親は、その狐を買い取りそのまま逃がしてあげることに。
その日の晩。父親が山奥の家に帰ると、あたりが急に暗くなり、豪華な嫁入り行列が出現。父親は誘われるがままにその結婚式に参列し、その夜は花嫁の家に泊まることに。
父親の寝床にあった長持ちの箱に対して、花嫁は「決して箱の中身を見ないように」と忠告をしましたが、父親は言いつけを破り、箱を開けてしまいます。
箱の中には鏡が貼られており、その鏡には狐の顔が映っていました。そう、父親の顔は狐の顔になっていたのです。
そんな顔では帰れないと父親は花嫁に「そのまま家におかせてほしいと」と提案すると、花嫁は大変喜んで、父親は3年間居座ることに。
しかし、そのうち父親は家に残してきた家族が気にかかりはじめ、花嫁に引き止められつつも、自宅へ。帰った父親の顔は人間の顔に戻っており、3年と思っていた月日も実際には3日しか経っていませんでした。
父親が助けた狐が恩返しのために花嫁に化けてお礼をしたと考えられています。
これが日本昔話『狐の嫁入り』の一般的なあらすじです。
狐の嫁入りの舞台はどこ?
狐の嫁入りは日本各地に伝承があります。その中から今回は3つのスポットをご紹介します。
京都府「高台寺(こうだいじ)」
京都市東山区にある高台寺付近では、古くから狐の口から吐き出された火と言われる「狐火」がよく見られたとされており、それになぞらえて「狐の嫁入り」の伝承が残っています。
毎年の4月には、狐に扮した花嫁が町を練り歩くイベントが開催されていたことも。残念ながらイベントは2024年の春を最後に終わってしまいましたが、高台寺では、春、夏、秋と、夜間のライトアップイベントを開催しています。
幻想的で少し妖しさが漂う高台寺は、まるで物語の世界のよう。清水寺からも近いので、立ち寄ってみるといいかもしれません。
住所:京都市東山区高台寺下河原町526番地
電話:075-561-9966
▼秋の夜間特別拝観
期間:2024年10月25日(金)〜 12月15日(日)
拝観時間:17:00〜22:00(21:30受付終了)
HP:https://www.kodaiji.com/
新潟県「阿賀町」
新潟県の中部にある山「麒麟山」では、たくさんの狐が生息しており、毎晩のように狐火が見られたといいます。多くの狐火が連なっている様子から、夜間に狐の嫁入りの伝承が生まれたとのこと。
麒麟山からほど近い阿賀町の一角では、毎年の6月上旬に江戸時代の嫁入りを再現した「つがわ狐の嫁入り行列」が行われます。
松明や提灯が灯され、幻想的な雰囲気の中、白無垢姿で狐のメイクをした花嫁が夕方からお供を連れて行列します。
住所:新潟県東蒲原郡阿賀町津川
山口県「花岡地区」
かつてその地の住職がなくした数珠を、白狐の夫婦が住職の下へ届けたことにルーツをもち、戦後には「狐の嫁入り」行列が行われるようになった、山口県下松市花岡地区。
狐の嫁入りが行われるのは奇祭とも称される「稲穂祭」。
毎年の11月3日に開催され、狐のお面を付けた新婚夫婦をはじめ、狐のメイクや豪華な衣装を身にまとった参加者たちが町を練り歩きます。
主役となる夫婦は、実際に周辺地域の新婚の2人。決してお面を外すことはなく、誰が演じているかは一部を除いて明かされないのが決まりです。
住所:山口県下松市末武上戎町1224
電話:0833-43-4500
▼稲穂祭
開催日:2024年11月3日(日)
開催時間:11:30〜16:30
HP:https://kudamatsu-kanko.jp/inahomatsuri/
天気雨をなぜ狐の嫁入りという?
狐の嫁入りは物語としてだけでなく、「晴れているのに雨が降る」天候状況、つまりは天気雨を指す言葉でも使われています。
狐の嫁入りは人に見られてはいけないとされており、狐が雨をわざと降らせて、人々を家の中に退避させている、ということからそのように呼ばれているのだとか。
なお、天気雨は狐が降らす神秘的な雨としても知られ、雨にあたると心身の汚れや穢れを浄化してくれる言い伝えも。
遭遇したときには少しあたってみるのもいいかもしれません。
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