
ゆりが丘ヴィレッジ(神奈川県川崎市)
ファッションや雑貨、街並みや文化など、「レトロ」に注目が集まる今日この頃。昭和や平成に建築されたマンションも築年数を感じさせないくらい、個性的で素敵なものが多いんですよね。
「マツコの知らない世界」でも憧れの秀和レジデンスや著名な建築家による芸術性あふれるマンションなどに注目。これまで1,000棟以上のヴィンテージマンションを観察し、書籍『秀和レジデンス図鑑』の共著者でもあるhacoさんが紹介してくれます。
ヴィンテージマンションとは
ただ古いマンションというだけではなく、築年数が経っているにも関わらず価値が上がっているマンションのことを「ヴィンテージマンション」といいます。
1960年代の日本では、東京オリンピックなどが景気を刺激する材料となって空前のマンションブームが巻き起こり、豪華な装飾や建材を使ったマンションが次々と建てられました。そして、時を経た今、立地、デザイン、管理体制などのよさから、そんなヴィンテージマンションに注目が集まっています。
当時の斬新なデザインやその時代の最先端だったタイル、手すり、階段などに使われた素材などは、今も色あせず、おしゃれ!
可能なら1度は住んでみたいヴィンテージマンション。hacoさんがおすすめヴィンテージマンションを紹介してくれました。
hacoさんおすすめのヴィンテージマンション
川口アパートメント(東京都文京区)
1964年竣工の「川口アパートメント」。hacoさんによると、財を惜しみなく投じた重厚さ漂うマンションだといいます。小説家・劇作家の川口松太郎さんが自宅を兼ねて、1700坪の土地に当時の金額で約8億円を使って建てたそうです。5階建て89戸。
その昔、千葉真一さんと野際陽子さんご夫婦をはじめとした著名人の方も住んでいたというマンション。マツコさんも「当時の超高級マンションよ!」とご存知でした。
これまでテレビ取材はNGだったそうですが、マツコさんの番組ならばと取材を受けてくれ、今回、1960年代の面影を残す「川口アパートメント」に、なんとテレビ初潜入!
フロントにはフロントスタッフさんが24時間常駐しています。8の字型の構造を活かした2つの中庭は開放感抜群! 当時はプールもあったそうです。案内表示やフロアサインは当時のまま残されています。
現在、トランクルームとして使われている場所は、当時、住み込みのお手伝いさんなど、スタッフ専用の部屋だったのだとか。住み込みのお手伝いさんがいるマンション……それだけでも、夢のようです。
実際に住人の方に部屋の中を見せてもらうと、広さ20畳の広々としたリビングがあり、外壁タイルが部屋の中まで続いてデザインされています。また庭付きの部屋には、川口松太郎さん、俳優で探検家の川口浩さん一家が当時植えた木が残るなど、住民たちに愛され続け、当時の姿を受け継いでいます。
〒112-0003 東京都文京区春日2丁目22-5 川口アパートメント
カーサ第一亀戸(東京都江東区)
1974年竣工の「カーサ第一亀戸」は、12階建て、総戸数256戸。2棟からなるヴィンテージマンション。設計は日本のガウディと呼ばれる、梵寿綱(ぼんじゅこう)さん。1983年竣工のデザイナーズマンション「ドラード和世陀(わせだ)」を設計したことでも有名な建築家です。
「カーサ第一亀戸」の外壁にあるのは、1974年当時から変わらないデザインタイル。とても華やかです。建物の入り口から入るとエントランスには、白黒のタイルを交互に並べることで平行なものが斜めに見える「カフェウォール錯視」も利用されていて、おしゃれ。当時、とても前衛的であったことが伺えます。
〒136-0071 東京都江東区亀戸7丁目39-1 カーサ第一亀戸
ビラ・セレーナ(東京都渋谷区)

古さを全く感じないビラ・セレーナ(東京都渋谷区)
1971年竣工の「ビラ・セレーナ」は、7階建て、総戸数25戸のマンション。ビラシリーズの内装は、当時、斬新なデザインでマニアの間でも人気です。ブロックを重ねたような外観は、54年前に建てられたものとは思えないほど、現代の街並みに溶け込んでいます。差し色で使われている「黄色」も特徴の1つ。渡り廊下があり、建物全体を見渡すことができます。
hacoさんによると「空間が贅沢に使われている」とのこと。25戸に対して、エレベーターが2基も!
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2丁目33-18 ビラ・セレーナ
都会から少し離れたところにある違った味のヴィンテージマンション
ゆりが丘ヴィレッジ(神奈川県川崎市)

斜面に建つゆりが丘ヴィレッジ(神奈川県川崎市)
新宿から車で40分ほど、川崎市麻生区にある「ゆりが丘ヴィレッジ」は、1986年竣工で10階建て、総戸数81戸の傾斜地に建つマンションです。108段の階段の両脇にそれぞれの部屋があります。最上階には車を付けることもできます。
敷地内にはおよそ300mの遊歩道があり、まるで住民専用の公園のようで、読書やランチをすることができるスペースもあります。マツコさんも「ゆとりがある使い方だわー」と感心していました。毎日5名体制で清掃をしており、植物のメンテナンスも万全!
各部屋には、約50㎡のルーフバルコニーが付いており、土のある庭も手に入ります。ただし、バルコニー部分は階下のリビング部分にあたるため、植えることができる植物の種類にも規定があります。そして、それにより、地形との一体感のある景観が守られているのだそうです。4LDK(162㎡)で、分譲価格は約1億円(管理費等別)。
マツコさんは「いいわぁ~。ここに絶対住みたいって人はいるから、価値は下がらないわよ」と納得の様子でした。
〒215-0003 神奈川県川崎市麻生区高石3丁目19-11 ゆりが丘ビレッジ
原宿ビューパレー(東京都渋谷区)
1970年竣工、明治通り沿いにある11階建てのマンション。ギザギザの外観が特徴的で、hacoさんの興奮ポイントは時計塔がついているところ、1970年代のマンションにはたまに時計(時計塔)が付いているマンションもあるそうですが、3面に時計が付いているのは初めて見たとのこと。
この原宿エリアには、ヴィンテージマンションが多く存在しているんですって。
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2丁目33-8 原宿ビューパレー
現代のお城物件!青い瓦屋根と白い壁がステキな「秀和レジデンス」

秀和レジデンス
マツコさんも「1度は住んでみたい」と、何度か内見に行ったことがあるという秀和レジデンス。青い瓦屋根と白い塗り壁が特徴のマンションは、1960年代、当時の秀和株式会社が手がけたマンションシリーズ。hacoさんによると、全部で144棟建設され、現在は130棟が残っているといいます。
秀和レジデンスは、それまで現金を持っている富裕層しか購入できなかったマンションを一般の人にも買えるようにと「住宅ローン制度」の導入を目指したことでも有名です。
hacoさんイチオシ秀和レジデンス10のチャームポイント
・タイル
・ウォール
・屋根
・金物
・ステンドグラス
・アイアン柵のバルコニー
・照明
・植栽
・館銘板
・塔屋
特にウォールは、マンションごとにデザインが異なるところが可愛いとhacoさん。
hacoさんおすすめの3つの「秀和レジデンス」
秀和恵比寿レジデンス(東京都目黒区)
1970年竣工、8階建て、総戸数202戸。可愛いポイントは、アイアンの門柱。直線とS字カーブの組み合わせが繊細で上品。そして、植栽に向かって立ち上がるようなデザインになっているタイル。モルタルの特徴的なウォール、エントランスも広々としています。
秀和恵比寿レジデンスの住人、アーティストの方の部屋を見せていただくと、広いリビングルームが目に入ります。一番のお気に入りは約30㎡のルーフバルコニー。目の前を遮るものがなく、180度以上の眺望は朝陽も夕陽も眺めることができるのだそう。
現在の相場は、賃貸は約26万円(2LDK/54㎡)、分譲は約8,000万円(2LDK/56㎡)。管理費別です。
〒153-0061 東京都目黒区中目黒1丁目1-26 秀和恵比寿レジデンス
秀和参宮橋レジデンス(東京都渋谷区)
1986年竣工、8階建て、総戸数108戸。アプローチにある2つの青い瓦屋根が可愛らしい! 住人の方の部屋は、木目調の床を進んでいくと、植物であふれる部屋が現れ、さらにルーフバルコニーにもたくさんの植物が。新宿方面を眺められる眺望もお気に入りだそうです。
〒151-0053 東京都渋谷区代々木4丁目23-16 秀和参宮橋レジデンス
秀和青南レジデンス(東京都港区)
1968年竣工、8階建て、総戸数76戸。お城のような螺旋階段とそれを囲う階段室が素敵です! エントランスには照明とステンドグラス、アイアンの柵があり、お城の広間のような空間になっています。
住人の方の部屋は広さ63㎡。約5,600万円で購入し、壁一面の収納も手作り。バルコニーからは恵比寿方面の景観を望みます。
〒107-0062 東京都港区南青山4丁目18-3 秀和青南レジデンス
マツコさんも内見に行ったことがあるという「秀和レジデンス」をはじめとしたヴィンテージマンションは、素敵な環境にあることも多いのも特徴。また、建物自体も現代の建物とはまた違った魅力があり、住人のみなさんも誇りをもって住んでいるような印象があります。
古くなったら新しくすればいい、ではなく、60年代や70年代の建物を、大切に住んで未来につないでいく……。
時代を経ても愛されるマンションがきっとこれからも増えていくんだろうなとうれしくなったとともに、いつか住んでみたい、と思うのでありました。
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/archive/202505061/