(C)美祢市総合観光部観光振興課
どこか厳かで幻想的な雰囲気の漂う「鍾乳洞」。長い歳月をかけて姿形を変え、見る人の心を鷲掴みにする自然のアートでもありますが、山口県には、国の特別天然記念物に指定され、国内最大級といわれる鍾乳洞が存在します。その名は「秋芳洞(あきよしどう)」。あの歴史上の人物が住んでいた、とも言われるスポットがあったりと、なにかと話題が豊富なこの秋芳洞の魅力に迫ってみたいと思います。
鍾乳洞って?
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鍾乳洞というのは、石灰岩の中に形成された洞窟で、特に鍾乳石の発達したもののことを指します。簡単に説明すると、大昔に栄えたサンゴなどの石灰質の殻を持った生物たちが、長い年月をかけて海底に溜まりやがて層になり、堆肥した層が最終的に石灰岩となり「陸地」へと変貌を遂げたというものです。
そんな鍾乳洞のなかでも「日本最大級」といわれる鍾乳洞があるのが、山口県・美祢市にある「秋芳洞」です。その規模は凄まじく全長8.9kmにも及び、観光できる場所だけでも約1kmと圧巻の大きさ。一瞬にして異世界へと迷い込んでしまったかのような、時空を超えた世界がそこには広がっています。
冒険への入り口
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まるで時代がタイムスリップしたかのようなこの秋芳洞への入り口のその外観は、まさにいつの日か夢見た冒険への入り口そのもの。心の奥に閉まってあるはずの遊び心と探究心が刺激され、どこからともなく高揚感が湧いてきます。驚くほどに澄んだ空気と川の水の透明度、そしてこの先に待っている冒険への期待感は、なんだか浮世離れした感覚さえ覚えるほど。そんな秋芳洞の入り口の先には、期待以上の光景が待っています。
コバルトブルーに輝く水面
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一歩足を踏み入れるとひんやりと肌が感じる冷たい外気と、声がこだまするその空間。そしてコバルトブルーに輝く水面が、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出すこの場所こそが「秋芳洞」です。洞内は寒いのかと思いきや、温度は四季を通して17度と変わらずちょうど良い快適な温度。そのため観光するシーズンが限定されることがないのも魅力の一つです。
どんどん歩みを進めていくと、人の手では決して作ることのできない独特の隆起が施された石灰岩や、キラキラとまばゆい光が反射する水面が目の前に広がります。理屈では決して説明できないような、雄大な自然の生み出す造形美に、ただただ心が揺すぶられ自然の偉大さを実感します。
珍しい動物たち
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秋芳洞の魅力の一つに、野生の「洞窟固有動物」を間近で見ることができるという点が挙げられます。この洞窟固有動物というのは名前の通り、洞窟でしか見ることができない稀有な動物のことであり、時代や環境に合わせ自らの生態を適応させてきた動物たちのこと。なんでも彼らは、洞窟で生きられるようにあえて体を白くし目を退化させ、洞窟で生活できるように進化する手段を選んだ動物たちなんだとか。
目を「退化」させるのも「進化」の一つだったなんて、その生命力に脱帽してしまいますが、代表的な例だと「コウモリ」や秋芳洞の名前をとった「アキヨシシロアヤトビムシ」などが秋芳洞で見ることのできる野生動物として挙げられます。ここだからこそ見ることのできる動物たちは、間違いなく一見の価値あり!
「あの武将」が潜んでいた!?
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また少し離れた鍾乳洞のひとつには、ある歴史上の人物に深くまつわる鍾乳洞が存在します。その鍾乳洞の名前は「景清洞」。なんと実はこの景清洞は、あの壇ノ浦の戦いに敗れた平家の武将・大庭景清が潜んでいた場所として知られているんです。
今もなおその当時の様子を垣間見ることのできるものがあったりと、歴史の片鱗に触れる体験ができる場所として、多くの人に愛され何度も訪れるファンも多いそう。洞窟内は秋芳洞よりもずっと小さく暗いので、まるで自分が冒険家だと錯覚するほど雰囲気たっぷりロマンたっぷりの洞窟体験を堪能できます。
選べる3つのツアー
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この洞窟探検で選べるのは、美祢市が開催している3つのツアー。スタンダードに岩肌を登って鍾乳洞を楽しみたかったら「秋芳洞冒険コース」、営業後にスタートする静寂の暗闇の中、ロマンたっぷりの雰囲気を味わいたかったら「秋芳洞闇のロマン体験(要予約)」、普通じゃ物足りない景清洞をメインに見たい方だったらぴったりの「景清洞探検コース」と、それぞれ自分の目的に応じて選択が可能です。
「明かりがなくて心配!」という方には懐中電灯の貸し出しもしているので、暗闇のなかでも安心して探検ができちゃいます。ただそれぞれ事前申し込みが必要な場合があったり、時期によって内容が変わることもあるので、こちらををこまめにチェックしておくと良いかもしれません。
鍾乳洞だけじゃない!
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鍾乳洞を堪能したあとに訪れたいのは、美祢市の観光地として秋芳洞と肩を並べる「秋吉台」。
ここは太古の時代に遠い海でサンゴ礁として誕生した地であり、約3億5千万年という長い歳月をかけ石灰岩の台地となった「カルスト台地」です。その規模は日本最大とされ、石灰岩の中にはサンゴやウミユリといった化石が今現在も眠っています。
この場所だけなぜか永遠に時間が止まったままのようにさえ感じてしまう、壮大でありながら非日常的な光景の広がるこの秋吉台。歴史に思いを馳せながら、四季の移り変わりで表情を変えるその光景に、ただただ心を委ねてみてはいかがでしょう。