【TABIZINE自由研究部】調べる、考える、まとめる、伝える。
夏休みの自由研究のように、心惹かれることについて、じっくり調べてみる。考えて、試行錯誤し、また考えて、まとめて、発表する。TABIZINEにもそんな場がほしいと思い【TABIZINE自由研究部】を発足しました。部員ライターそれぞれが興味あるテーマについて自由に不定期連載します。
今回は、TABIZINEライター、坂本正敬の自由研究「地元の町に外国人観光客を集める方法」をお届けいたします。
自分の町に外国人観光客を呼ぶ方法を探るTABIZINE自由研究部、前回までは自分たちの暮らす町を商品として磨き上げるために、売り込みたいターゲットを決め、5つの力を高めていくという話をしました。
その中に情報の力、具体的には情報を発信していく力を高めるという話がありましたが、実際に情報発信とはどのようにすればいいのでしょうか?
今回は一流の講師陣の講義を在宅で受けられるgaccoの「文化財を活用した観光拠点形成」をテキストに、情報発信のヒントを学びたいと思います。
相手に会わせた宣伝方法を考えてみる
そもそも旅行のPRなどジャンルに関係なく、情報発信や広告戦略はどのような点に注意して行えばいいのでしょうか?
ベストセラーシリーズのグロービス・マネジメント・インスティテュート編著『[新版]MBAマネジメント・ブック』(ダイヤモンド社)を見ると、大まかに分けて2つ、
・メディア戦略(どのメディアを使うか)
・クリエイティブ戦略(どのように伝えるか)
を考えるといいと言います。もちろんこの戦略を考える上では、前回までの自由研究で考えたSTPマーケティングが大前提となってくると思います。要するに誰に伝えるかですね。
今回の自由研究では、富山県南砺市の井波という町を題材に考えてきました。日本人のターゲットであれば関西に住む50代以上の社寺仏閣巡りが好きな男女を1つの仮説として思い浮かべていましたね。
今回のオンライン講座を受け持つ講師の1人、大手広告代理店の博報堂のテーマビジネス開発局に在籍する大羽昭仁さんによると、インターネットが発達した今の時代でも、50代以上の男性はラジオに触れる機会が多いと言います。
それなら関西で放送されるラジオを使ってPRしていくという案も出てきます。
一方で外国人の場合、ターゲットの1つとして信仰心の強い仏教徒のタイ人を想定してきました。
この仮説が正しいかどうかは別として、もし本当に呼び込めるのであれば、タイ人がどうやって旅先を決めるのかを調べてみると良さそう。
デジタルマーケティングを提供するWorld Wide System の行った「タイ・インドネシア・ベトナム訪日外国人旅行動向調査」によれば、タイ人はTV・ドラマで使われたロケーションに行きたくなる、あるいは友達など人から聞いた話をもとに、旅行先を決める傾向があるといいます。
また、具体的に参考にしている情報源として、レビューサイト、旅行会社のホームページ、SNSが挙げられると書かれていました。
同じタイ人の中でも、どのような地域に暮らす、どのような年代の人が主にレビューサイトを好み、どういった人がSNSを好むのかなどは、さらに突っ込んだ調査が必要だと思います。ただ、メディア戦略(どのメディアを使うか)については大まかな方向性は見えてきますよね。
まずは伝えたい相手を思い浮かべて、その人たちが触れているメディアに乗せて情報を発信する作業が重要なのですね。
シェアされるような仕組みを作る
上述したような基本に加えて、大羽昭仁さんはインターネットやSNSの発達した現代における情報発信のヒントも、講義内で解説してくれています。今の時代は自分の町に多くの観光客を呼び込むために、AISASという点に注意すべきなのだとか。
AとはAttention (注意)、IとはInterest(関心)ですね。広告などを通じてどこかの土地に興味を持ったら、現代人はその次にS、Search(検索)をすると言います。
なるほど自分自身の行動を考えてみても納得ですよね。何かが気になれば検索、現代人が行っている自然な作業です。
ならばその検索ニーズにこたえるためにも、検索エンジンで上位に表示されるような対策を施した外国語のウェブマガジンを作成して、検索してくれた人に情報を提供するなどの手も考えられます。
A、Action(行動)をして、実際に遊びに来てくれた人には、Share(シェア)してもらえるような工夫も今の時代は必要だとか。
先ほど「タイ・インドネシア・ベトナム訪日外国人旅行動向調査」で紹介したタイ人の例でも、SNSが観光の情報源としてTOP3に入ってきています。
講師の大羽昭仁さんによれば、思わずSNSでシェアしたくなるような、見た目にインパクトのあるビジュアルポイントを観光地に用意して、どんどん自慢してもらうなどの工夫が必要なのだとか。
(C)Masayoshi Sakamoto
なるほど先日、取材旅行で訪れたオランダのアムステルダムには、I amsterdamというモニュメントがあり、多くの観光客が競って写真撮影をしてSNSにアップしていました。
そのビジュアルポイントは、呼び込みたい町のテーマや物語に沿っている必要があるはず。井波の場合は、木彫りの町ですから、何か分かりやすい木彫りのモニュメントでしょうか。
もっと深い考えが必要でしょうが、いずれにせよ自分たちの町にはどのようなインパクトのある写真撮影スポットがあるのか(作るのか)、シェアをしてもらえるように考えたいですね。
以上、自分たちの町の魅力を世界の人たちにどうやって伝えるのか、その基本的な方法を学びましたが、いかがでしたか?
この場合も、やはり呼び込みたい人はどのような国のどのような人たちなのかを念頭に置きながら、あれこれと仲間たちで相談してみるといいのかもしれませんね。
[グロービス・マネジメント・インスティテュート編著(2006)『[新版]MBAマネジメント・ブック』(ダイヤモンド社)]
[gacco – 文化財を活用した観光拠点形成 ] [訪日外国人旅行動向調査 – World Wide System ] [All Photos by shutterstock.com ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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