(c) Koninklijk Eise Eisinga Planetarium
大人も子どももプラネタリウムに行くと、宇宙と一体化できるようでワクワクしますよね。ヨーロッパのオランダには、「世界最古」と言われるプラネタリウムが今も現役で動いているのでご紹介したいと思います。しかもそのプラネタリウム、まるでファンタジー映画から飛び出してきたような美しさなのです。
オランダ北部にある世界最古のプラネタリウム
その世界最古のプラネタリウムがあるのは、オランダのフリースラント州にあるフランエーケル(またはフラネケル。Franeker)。オランダ北部に位置するので、アムステルダムからは電車で2時間半ほどかかります。人口約1万2000人ほどの小さな町にもかかわらず、そのプラネタリウム目当てに世界中から天文ファンが訪れてくるのだとか。
(c) Koninklijk Eise Eisinga Planetarium
実はプラネタリウムは今は「Koninklijk Eise Eisinga Planetarium」という博物館になっているのですが、その噂の施設の外観がこちら。「えっ、カフェじゃないの?」と思われるかもしれませんが、それは隣にカフェが併設されているから。建物の壁にはちゃんと「プラネタリウム」(PLANETARIUM)と書かれていますのでご安心を。
では、早速中に入ってみましょう。
美しいプラネタリウムを作った天才学者
(c) Koninklijk Eise Eisinga Planetarium
これが、「Koninklijk Eise Eisinga Planetarium」の様子。今から200年以上も前の1781年に完成した、惑星の運行を正確に表示してくれる世界最古のプラネタリウムです。現代の投影式プラネタリウムとは構造が異なりますが、ため息が出るほど美しいですね。まるでファンタジー映画の舞台セットのようです。ここから何かストーリーが始まりそうですねよ。
ただ、天井に設置された器具たちとはうらはらに、何やら壁の部分にはソファーのようなものが見えませんか? 写真の右端には、クローゼットのような扉もありますね。この生活感あふれる内装は、一体どういうことなのでしょう。
(c) Koninklijk Eise Eisinga Planetarium
実はこの「Koninklijk Eise Eisinga Planetarium」は、製造者のアイゼ・アイジンガ(Eise Eisinga)氏のご自宅のリビングに造られた設備なんだとか。そのため、美しいプラネタリウムに18世紀の庶民の生活が垣間見える何とも不思議な場所なのです。
このアイジンガ氏は家業である羊毛業に従事していましたが、幼少期から天文学に興味を示し、独学で宇宙に関する勉強をしていたアマチュア天文学者でもありました。なんと15歳で650ページの数学の本を執筆するほどの天才ぶりで、後に当時のフランエーケル大学に教授として招聘されたそうです。
※画像はイメージです。
そんな彼が自宅リビングにプラネタリウムを作ったのは、18世紀のオランダ社会に起こっていたパニックを鎮めようと考えたからなのだとか。
1774年、太陽系の惑星(水星、金星、火星、木星)と月の軌道が重なる珍しい惑星配置が起こりました。当時の人々は「世界が終わる」「地球が軌道から離脱、太陽に衝突する」という不穏な噂で持ちきりになってしまったのだとか。アイジンガ氏は「そんなことは起こらないから安心して」と人々に説明するために、なんと7年もかけて自宅に太陽を中心とした惑星の運行表示装置を作り上げたのです。
200年後でも現役、正確なプラネタリウム
(c) Koninklijk Eise Eisinga Planetarium
このアイジンガ氏のプラネタリウムは1000個以上の手作りの釘と木製の歯車で構成されているのですが、1781年の完成から200年以上経った今も、ほぼ正確に惑星の運行を示していると言われています。そればかりではなく、彼は太陽と月の運行、地球の回転による天体の動き、その他の現象を示すあらゆる種類の特殊装置まで製作していたのです。
「天才」という言葉は、きっとアイジンガ氏のような人のためにあるのでしょう。
(c) Koninklijk Eise Eisinga Planetarium
天文ファンだけが楽しむのはもったいない「Koninklijk Eise Eisinga Planetarium」。機会があればぜひ訪れてみたいですね。
[Koninklijk Eise Eisinga Planetarium]
[Eise Eisinga Planetarium]
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