【TABIZINE自由研究部】調べる、考える、まとめる、伝える。
夏休みの自由研究のように、心惹かれることについて、じっくり調べてみる。考えて、試行錯誤し、また考えて、まとめて、発表する。TABIZINEにもそんな場がほしいと思い【TABIZINE自由研究部】を発足しました。部員ライターそれぞれが興味あるテーマについて自由に不定期連載します。
今回は、TABIZINEライター、坂本正敬の自由研究「地元の町に外国人観光客を集める方法」をお届けいたします。
今までは、自分の町に外国人観光客を呼び込む方法を学んできました。まずは核となる文化財と、その文化財を取り巻く周辺の暮らしを貫くようなテーマを探る。そのテーマから物語を作って、町全体で観光客を喜ばせる仕組みを作るという流れを学んできました。
さらには呼び込みたいお客さんを具体的に思い浮かべて、その人たちが喜んでくれるような町の魅力の高め方、情報の発信の仕方を学びました。そうした作業を一緒に仲間と行うための場所づくりも重要だとも知りましたね。
そこで今回は一流の講師陣の講義をオンラインで受けられるgaccoの「文化財を活用した観光拠点形成」をテキストに、実際に多くの外国人観光客を呼び寄せる長野県の妻籠宿を、成功例の1つとして見ていきたいと思います。
朽ち果てた宿場町が今では国の重要伝統建造物群保存地区に!
長野県の南西部、岐阜県に抜ける街道に妻籠(つまご)宿という場所があります。住所的には長野県木曽郡南木曽町。木曽山脈の西側で、かつては江戸と京都を結ぶ中山道の山深い宿場町として栄えたそうですが、鉄道と自動車の登場で一気に衰退した歴史を持ちます。
お世辞にも現在の基準で言えば交通の便がいいとは言えない場所ですが、この宿場町に今たくさんの欧米人が集まっているとご存知でしたか?
(C)南木曽町観光協会
上述のオンライン講座では、公益財団法人妻籠を愛する会の常務理事である藤原義則さんが講師の1人として講義を受け持ってくれています。
藤原さんによれば同部落は朽ち果てた家並みがあるだけの状態から、国の定める重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定され、今では江戸時代風の日本を感じられる場所として、多くの欧米人が押し寄せる観光地へと変ぼうを遂げた歴史があるそう。
ちょっと勇気づけられる話ですよね。
議論できる場所づくりは妻籠でも行われてきた
もともと焚き木にしかならないと言われた、朽ち果てた家並みが残るだけの部落を、「何とかしよう」と地元住民が立ち上がったところから、今の発展があるのだとか。
「妻籠を愛する会」を部落内の一角で立ち上げ、住民や行政、学者と連携をして、町のあり方を議論してきたみたいですね。
今までの自由研究では、自分の町に外国人観光客を呼び込むためのスタートとして、志を共にする仲間で気軽に集まれる場所を作るといいと学んできました。まさにその場づくりを、妻籠でもしていたようです。
長い時間を掛けて5つの力を育ててきた妻籠宿
(C)南木曽町観光協会
その議論の中で、有名な料理も名湯もない朽ち果てた宿場町が観光の町として発展するには、古い町並みの保護、中山道を中心にした周辺の自然全てを保護する必要があると考えたそう。
住民は各自で家を「売らない、貸さない、壊さない」と決め、周囲の山村の土地取得も行って、昔ながらの景観を守ろうと動き出したといいます。
(C)南木曽町観光協会
長い時間を掛けて板葺き石置き屋根を改修したり、歴史的建物の復元をしたりして、町の“商品力”を高めてきたのだとか。町並み保存を続けてきた努力が実り、昭和51年には重要伝統的建造物群保存地区に認定されます。
国からも金銭面でバックアップを受け、人材の育成、古い町並みの保存、街道の整備、日本語と英語のガイドマップや道標の整備、洋式トイレの設置などを行ってきたそう。
まさに前までの自由研究で学んだ、文化財そのものの商品力、その文化財を含んだ周辺環境の力、人材の力、イベントなどの仕掛けの力、情報の力を次々と磨いてきたのですね。
「何もない場所」でも磨けば多くの外国人観光客は来てくれる
そうした取り組みが評価されて、アメリカ、オセアニア、ヨーロッパなどから「日本らしい」と多くの観光客が押し寄せるようになったと言います。
街道を散歩する人の数は、平成20年の段階で7,400人ほどだったところ、今では26,800人を超えるそうです。その散歩者の内訳を見ると、日本人観光客を外国人観光客が上回るほどなのだとか。
(C)南木曽町観光協会
妻籠を愛する会の常務理事である藤原義則さん本人が言うように、妻籠は古い宿場町と街道、さらに周囲の美しい自然しかありません。しかし、その文化財を徹底して磨き込んだ結果、今のように多くの外国人観光客を呼び寄せられるようになったのですね。
妻籠宿の例は、多くの町に勇気を与えるような話かと思います。妻籠に追いつけ、追い越せの勢いで、自分の暮らす町に多くの外国人観光客を呼び寄せたいですね。
以上、大まかにですが妻籠宿の成功例をもとに、“何もない” 場所を外国人の集まる人気観光地に発展させる方法を振り返ってきました。
この成功を勝ち取るために、住民が何度も対話を重ねてきたと言います。住人を巻き込み、ある意味で町の全員がボランティア的にまちづくりに参加する、この土台がないと成功はおぼつかないとgaccoの講義では語られていました。
地元の人たちの暮らしを守りつつ、全員で同じ方向を向いて情熱を注いでいく、この団結力こそ成功の源になってくれるのですね。
[今日の妻籠 – 妻籠観光協会 ] [町並みの保存について – 妻籠観光協会 ] [文化財を活用した観光拠点形成 – gacco ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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