都心から1時間でアメリカに行ける!?「ジョンソンタウン」は元米兵の町

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Feb 3rd, 2018

埼玉県入間市にあるジョンソンタウンは、都内近郊でありながら異国情緒あふれるスポット。アメリカ郊外の暮らしを濃密に感じることができます。都心から1時間でアメリカ気分!?ジョンソンタウンのなりたちや風景をご紹介します。

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

去年は海外に旅行できましたか? 「海外に行きたいな」と思っていても、予算的な問題や時間の都合で、なかなか行けないという人の方が多いと思います。そうなると国内で異国情緒あふれるスポットに出かけるという現実的な方法が出てきますが、どこか近場でいい場所はないのでしょうか?

そこで今回は埼玉県入間市にあるジョンソンタウンというスポットを紹介したいと思います。同地は西武池袋線の入間市駅から徒歩18分ほどの距離にある、アメリカ郊外の暮らしを濃密に感じられるスポット。入間市は池袋から40分ほどですから、都心から1時間で「アメリカ」旅行に出かけてみてください。

 

ジョンソンタウンは米軍の兵士が暮らしていた町

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

埼玉県入間市と言われると、何を思い浮かべますか? 「何も思い浮かばない」「どこそれ?」という人も少なくないと思いますが、入間市は埼玉県南部にある自治体。東京都西部の瑞穂町、青梅市と都県堺を共にしています。狭山茶などの名産品が知られていますが、他の目立った特徴もあります。ずばり、航空自衛隊入間基地ですね。

<計18個の部隊と、そこに従事する約4,300人の隊員を擁する航空自衛隊最大級の基地>(入間基地の公式ホームページより引用)

この基地は戦前の1938年、陸軍航空士官学校の飛行場(豊岡飛行場)として設立され、1945年の敗戦を受けて米進駐軍に接収された歴史があります。接収とは権力機関が必要上、権力を使って他人の所有物を取り上げる行為ですね。

豊岡飛行場は接収後、米軍入間基地になりますが、その後ジェラルド・G・ジョンソン有名パイロットの名前をとって、ジョンソン基地という名前に生まれ変わります。米兵たちは最初は基地内に暮らしていたそうですが、次第に住宅が足りなくなり、オフベースとして基地の外に米兵と家族向けの住宅街が作られるようになりました。その町並みが現在のジョンソンタウンの原型になっています。

 

荒廃した町を再生した事業は都市景観大賞を受賞

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

実は筆者の育った町も入間市。土地の古老に話を聞くと、ジョンソンタウンに暮らす米兵はオープンかつフレンドリーで、地域の子どもたちが遊びに行けば、キャンディやガムをくれたと懐かしそうに教えてくれました。

当時の米兵が支払っていた家賃はアメリカの基準で決められており、1軒あたりおよそ100ドル前後の設定。当時は1ドル360円の時代でしたから、日本の家主にとっては相当な収入だったようです。

しかし、1954年に航空自衛隊が発足し、1958年には入間基地がスタート、1961年に日米共同使用協定が成立し、1978年に基地の全面返還が行われると、米兵が住んでいた磯野住宅(ジョンソンタウンの前身)は荒廃していきます。

この荒廃ぶりに心を痛めた磯野住宅の家主である磯野商会の社長は一念発起し、渡辺治建築都市設計事務所とタッグを組んで再生をスタート。進駐軍の残した⽂化遺産を改修・保全して、現在のジョンソンタウンに⽣まれ変わります。

<戦後進駐軍の住宅を建設し賃貸運営してきた民間会社が、その後の荒廃・スラム化した困難な状態を克服し、「進駐軍ハウス」という文化遺産を改修・保全して、文化的で魅力溢れる住宅地の景観を生み出した価値ある事例である>(都市景観大賞の資料より引用)

として、平成27年度には都市景観大賞を受賞しました。

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

現在では約2.5ヘクタールある敷地に、進駐軍の遺産である23棟の米軍ハウスと、その米軍ハウスを模して作った35棟の平成ハウス、景観に溶け込んだワンルームタイプのフラッツが軒を連ね、独特の景観を作り出しています。

 

人が訪れる住宅地

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

ジョンソンタウン最⼤の特徴は、人が訪れる住宅地という点になります。例えば富⼭にある世界⽂化遺産の五箇⼭合掌造り集落のように、実際に⼈が暮らす住宅街に人が集まるというユニークさがあるのですね。

聞くところによると、ジョンソンタウンは住居の敷地と敷地を隔てる塀がなく、各戸がオープンに開かれているため、入居者同士がすぐに顔見知りになれる居心地の良さがあるのだとか。

古い米軍ハウスそのものも水回りが改修され、断熱性と保湿性が高められて、家屋そのものの住み心地も悪くないと言います。賃貸でありながら、リノベーションやDIYも可能な普通ではないところも特徴です。

また、敷地に隣接して、武蔵野の緑を感じさせる大きな公園があり、敷地内には植樹が施されています。家賃は周辺の相場と比べると段違いに高い印象がありましたが、埼玉に居ながらアメリカ郊外のような暮らしができる唯一無二の住宅地として、みなさん満足しているみたいですね。

 

敷地内には歯科クリニックまで存在する

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

⼈が訪れる住宅地として、ジョンソンタウンにはショップも多く出店しています。カフェや雑貨屋、レストランはもちろん、住⼈向けの⻭科医院や接骨院なども開業しています。

⽣活に密着したお店が多数軒を連ねていても、さすがはジョンソンタウン。トータルで景観がぶれておらず、ショップの店主や住⼈の皆さんも⾃主的に景観の統⼀感に留意して、愛⾞選びなどをしているみたいですね。

ただ⼊居するお店のコンセプトをざっと眺めると、 ジョンソンタウンの古き良きアメリカ⽂化と連動したお店が意外にも少ない印象もあります。お店の外観はアメリカ的でも、中のサービスは無関係だったりする場合も・・・。

かと⾔って同じ無関係でも、接骨院や⻭科医院などは、⽣活に根差したサービスのため、逆にジョンソンタウンが⽣活の場という点を実感させてくれて素敵です。そう考えると、ジョンソンタウンの居住者にとってもっと⾝近なショップ、例えばWhole Foods Marketなどアメリカの品をそろえたアメリカのスーパーマーケットが隣地に出店するなどすれば、住⺠も便利で、観光客もより楽しめそうですよね。

 

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

ちょっと机上の空論で話がそれてしまいましたが、とにかく現状でも町全体の雰囲気はいかにもアメリカ的ですから、ちょっとした異国情緒を手軽に味わいたい場合は、足を運んでみてくださいね。

 

以上、埼玉県にあるジョンソンタウンを紹介しましたが、いかがでしたか? アクセスは自動車の場合、圏央道入間インターから、電車の場合は西武池袋線の入間市駅南口から徒歩になります。

⼈気のスポットですが、実際に暮らしている⼈がたくさんいるエリア。TABIZINEの過去記事「【SNS映えする国内スポット ランキング】話題の第1位はどこ︖」 で紹介したインスタ映えスポットランキングでも上位に⼊る場所ですが、住宅の写真撮影は禁止。商用の写真撮影は事前の許諾が必要になっています。

住宅とそうでないところが分かりづらいこともあり、 トラブルの原因になりかねませんので、撮影にあたっては、 くれぐれも注意したいですね。

 

埼玉にある「アメリカ」!?住民が暮らす観光地【ジョンソンタウン】は元米兵の町

 

[平成27年度 都市景観大賞]
[JOHNSON TOWN]
[航空自衛隊 入間基地]
[All photos by Masayoshi Sakamoto]
※写真の撮影については全て許諾を得ております。

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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