
トルコ最大の都市イスタンブールは、その首都がアンカラに移るまで、ビザンツ帝国とオスマン帝国という二大帝国の帝都として栄えました。
ビザンツ帝国時代にはキリスト教文化、オスマン帝国時代になってからはイスラム文化という異なる宗教の祈りの場であったアヤソフィアは、1985年に世界文化遺産に登録され、現在は博物館として一般公開されています。

アヤソフィア博物館の最大の見どころといえば、やはりキリスト教聖堂時代のモザイク画です。現在私たちが見ることができるモザイク画はいつ頃作成され、何を意味しているのでしょうか?
『キリストと皇帝』
このモザイク画は、本堂への中央入口の上部にあります。この入口はかつて皇帝の典礼用にのみ使われていて、いまとは別のモザイク画がありました。現在見ることができるものは、キリストを囲うように大天使と聖母マリアが描かれ、キリストに皇帝が礼拝をしている様子が描かれたものです。10世紀初頭のものかといわれていますが、定かではありません。

『聖母子、ユスティニアヌス1世とコンスタンティヌス1世』
西南の玄関入口上部にあるモザイク画です。ユスティニアヌスがアヤソフィアを、コンスタンティヌスがコンスタンティノープル(現イスタンブール)を、中央に建つ聖母子に捧げている様子が描かれています。作成の時期や動機は定かではありませんが、10世紀後半のものとされています。

『キリストと皇帝コンスタンティヌス9世、皇后ゾエ』
2階の南側の回廊に残されたモザイク画です。この図像は、もともとは皇后のゾエの最初の結婚相手ロマノス3世によって寄進されましたが、ゾエは再婚を繰り返したため、その都度皇帝の顔の部分は作りなおされました。いま見ることができるのは最後の結婚相手、コンスタンティヌス9世の顔です。皇帝と皇后がキリストに捧げ物をしている様子が描かれています。1042年から1055年頃の作品です。

『聖母子と皇帝ヨハネス2世コムネノス、皇后イリニ』
12世紀に作成された、コンスタンティノープルに残る唯一のモザイク画です。図像の配置は、側にある『キリストと皇帝コンスタンティヌス9世、皇后ゾエ』に影響を受けています。ヨハネス2世コムネノスは東ローマ皇帝のなかでも名君と評されています。1122年から1134年頃の作品です。

『デイシス』
最も有名なのが1260年頃の作品、『デイシス』です。もともとは2階の回廊の壁面いっぱいに画かれたものという説がありますが、現在は下部がほとんど失われています。それ以前のモザイク画に比べてキリストの顔がより立体的に描かれているのが特徴です。また、南側の窓から入る光を効果的に利用するという工夫が施されているため、このモザイク画はビザンツ美術の最高傑作ともいわれているのです。一時はラテン帝国に奪われていたコンスタンティノープルを奪回したことを記念して作られたという説もありますが、詳細は不明のままです。

おわりに
アヤソフィア博物館は知れば知るほど奥が深く、イスタンブールの歴史をより深く知るきっかけにもなります。時を経てもいまなお黄金に輝くモザイク画を見に、イスタンブールに足を運んでみてはいかがでしょうか。

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zon ライター
トルコ イスタンブールの魅力を発信しています。奈良に近い大阪で育ち、神戸で学び、ロシアに留学し、色んな国に旅した末、イスタンブールに辿り着きました。ガイドブックには載らないけれど魅力的なスポットなど、歴史もトレンドも交えてご紹介していきます。
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