台湾南部の港町、高雄。この街に、世界各国からの旅行者がわざわざ足を運ぶ特別な駅があります。それが、「世界で最も美しい地下鉄駅」第2位に選ばれた美麗島駅。4500枚のステンドグラスが描き出す、光と色彩の美は圧巻。作品を紐解いてみると、心を揺さぶられる壮大なストーリーとメッセージが込められていました。
特別な意味をもつ美麗島駅
2008年に完成した美麗島駅は、高雄市地下鉄のオレンジライン(橘線)とレッドライン(紅線)の両方が乗り入れる乗り換え駅。高雄最大規模の夜市として知られる「六合観光夜市」の最寄り駅でもあります。
「美麗島駅」という印象的な名前は、ポルトガル語で「麗しの島」を意味する台湾の別名、「FORMOSA」に由来します。
また、ここは1979年に、台湾の政治と社会を大きく変えるきっかけとなった民主化運動「美麗島事件」が起こった場所。台湾の民衆が手に入れた自由と民主主義の象徴として、美麗島駅舎は「祈り」をコンセプトに設計されました。
吸い込まれるような光のドーム
高雄を旅していると、乗り換えなどで美麗島駅を利用することも多いでしょう。しかし、単に路線を乗り換えるだけでは、この駅のすごさに気づくことはできません。
美麗島駅の一番の見どころは、改札の外にある地下1階のホール。ここに、世界最大級のパブリックアート「光のドーム(Dome of Light)」があるのです。直径30メートルにおよぶ巨大なアートは、4500枚ものステンドグラスの集合体。
吸い込まれてしまいそうな色と光の幻想世界に、ここが駅であることを忘れてしばし立ちつくしてしまいます。
この美しさから、2012年にはアメリカの旅行サイトで「世界で最も美しい地下鉄駅」第2位に選ばれ、2014年には旅行雑誌「CNNトラベル」で、アジアナンバーワンに輝きました。
心をゆさぶる壮大な世界観
光のドームは、イタリアの芸術家ナルシサス・クアグリアータが4年半もの歳月を費やして制作した作品。ステンドグラスはすべて手作業ではめ込まれています。
ドームの中央に配置された2本の柱。赤は陽、青は陰を象徴しています。天井の色の違いにも意味があり、それぞれ「水、土、光、火」という4つのテーマで描かれています。
青のグラデーションの「水」は、生命の誕生を、その隣の緑がかった「土」は、自然との共生の重要性を表現しています。
黄色い色調の「光」は、創造の光を象徴。最も激しさを感じさせる赤い部分は「火」で、戦争と死をテーマに、苦しみ叫ぶ人や愛するものの死を悼む人が描かれています。
しかし、この「火」も単に絶望を描いているわけではありません。暗闇の世界から一羽の青い鳳凰が飛び出し、ふたたび生命の誕生を表す「水」へ。こうして、絶望的な苦しみのなかにある希望が表現されています。
30メートルのステンドグラスに表現された、生の歓びと苦しみ。その世界観は深く壮大で、見れば見るほど心を揺さぶられます。
圧倒的な色彩に目を見張る、美麗島駅の光のドーム。その作品のなかには、さっと見ただけではわからない、特別なストーリーとメッセージが込められていました。
それは、美麗島事件を乗り越えて、自由と民主主義を手にしたこの地にあるからこそ、いっそう特別な意味をもつのでしょう。
美麗島駅
800 台湾 Kaohsiung City, Xinxing District, 中山一路115號
[All photos by Haruna]
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Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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