2019年4月から、働き方改革の一環で、有給休暇取得の義務化が開始されました。企業は有給を取らせる時代に入りました。日本は有給に対する意識の変わり時にあります。有給取得が義務付けされて喜んでいる人や、いきなり有給が義務化されては仕事に支障をきたすんじゃないかと考えている人、この変化に対してそれぞれ意見があるのではないでしょうか。
有給休暇の議論になれば、日本は有給未消化率がワーストクラスと、海外と日本の有給消化率が比較されます。有給消化率が高い外国では、有給を当たり前のように取っているようだけれど、有給休暇取得について、どのように考えているの?と、疑問に思う人も多いのではないでしょうか。今回は筆者が住むフランスでは、有給をどのように捉えているのかについてお話したいと思います。
有給は権利の一つ
そもそも、フランス人の有給消化率はなぜ100パーセントなのでしょうか。その答えの一つが、フランス人の有給に対する考え方にあります。フランス人は、有給を権利の一つと捉えていることです。従業員だけでなく、経営者もまた同じ考え方を持っています。
フランス人が有給休暇を取るときに、仕事を休んでしまっては、上司や同僚に迷惑がかかるのではないか、印象が悪くなってしまうのではないかと考えて躊躇するということはありません。有給休暇は労働をする上で、当たり前に使うことができるものと考えているのです。
経営者や管理職の人間が、従業員や部下の権利の一つである有給を取れる職場環境を作ることも、仕事の一つと考えられています。
有給を取ることは持ちつ持たれつ
筆者がフランスの企業で働いていたとき、有給で長期休暇に入る直前に、同僚が辞めることになり、仕事が普通に回らないという事態に陥ったことがありました。随分前に日本に帰国するチケットも買っていたし、今更有給休暇を取りやめることはできません。「こんなときに有給休暇が重なってしまって申し訳ない」と、残った同僚に話すと、「仕方ないよ、なんとかなるよ。楽しんできてね」と、迷惑がる様子はありませんでした。
誰かが有給を取って、仕事のしわ寄せが来ても、それは仕方ないこと。自分も有給を取るときは、誰かが穴埋めをするもの。有給を取る同僚を迷惑がる人はいません。フランスの会社では有給取得の公平性が保たれているように思います。
休暇のために働くフランス人
フランス人は休むために働くと言われているほど、休暇を重要視します。有給を使いしっかりと休暇を取ることによって、また仕事が頑張れるという考え方がフランス人の根底にあるからです。フランスで仕事人間と言われている人であっても、有給休暇は必ず取ります。そういった人たちに話を聞いても、「どんなに仕事が好きでも、休暇で仕事から離れて、リフレッシュすることも必要なこと」と言います。有給休暇を使うことに後ろめたさを感じるのではなく、ポジティブに捉える。フランス人の有給休暇に対する考え方の特徴の一つです。
意外と知られていないのですが、フランスには日本のようにコールデンウィークやお盆休み、正月休みなどで、一斉に休暇を取るというシステムがありません。また、日本に比べて祝日も少なく、有給を取ることでしか、まとまった休みを取ることはできないのです。
病欠に有給は使わない
フランスでは、病欠に有給は使いません。病欠の場合は医師によって発行された病欠証明書を会社と社会保険当局に提出します。そして、医師によって指定された期間を休むことができます。病欠4日目より健康保険助成金庫から病欠手当てが支給されるという仕組みになっています。ただ、会社によっては、健康保険助成金庫によってカバーされない3日間分を会社が支払ってくれるというところもあります。有給はあくまでも休暇のために使うものとフランス人は考えています。
以上、フランスと日本の有給休暇取得の捉え方の違いをお話しました。フランス人の有給休暇の捉え方から、有給を取ることは決してネガティブなことではなく、むしろポジティブなこと、そして有給をしっかり取り、リフレッシュをすることも仕事をする上で大切だということを学んだように思います。
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Nanako Kitagawa ライター
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。
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