『このままでいいの?日本人〜日本とフランスの休暇、4つの違い〜』の記事を読んだ読者の方から、メールをいただきました。「フランスでは休暇の間、どのように仕事が回っているのでしょうか」。
この疑問に答えるべく、筆者の体験談も含めて、有給消化率が高いフランスでは有給を取る間どのように仕事が回るのかについてお話したいと思います。
基本的に有給の間は仕事はストップ
長ければフランス人は1ヶ月もの間有給を取ります。そのようなフランス人が担当している仕事は、有給の間、どのように回るのでしょうか。当たり前ですが、有給の前に、同僚に現在担当している仕事について説明します。しかし、その同僚は簡単な対応はできても、有給を取っている人の仕事までこなせる訳ではありません。したがって、有給の間の仕事は中断状態になります。
そのことに対してクライアントからも苦情はこない
クライアントから仕事が回ってないことに対して、苦情はこないのかと疑問に思われるかと思います。フランスでは、社員であれば、有給を取るのは当たり前のこと。権利の一つとして捉えられているので、基本的に苦情はきません。
筆者の前職では、休暇を取っている同僚や上司にメールを送ると、「〇〇まで有給で不在なのため、〇〇に連絡してください」という自動返信メールが返って来るようになっていました。その間仕事が進まないので、困ったものだったのですが、それでもフランス人の反応は「〇〇さんは、今休暇中なんだね」といった感じで、仕事が回らないことに対しては、有給なんだから仕方ないと捉えているようでした。
生産性が落ちても仕方ない
有給を取ることによって、生産性は落ちないのかというと、もちろん落ちます。日本であれば、ゴールデンウィーク、お盆、お正月休みと、企業の休みは決まっていて、一斉に休暇を取るシステムなので、突発的に生産性が落ちないようになっていますよね。フランスは、そのような決まった休みはなく、有給を取ることで休暇が取れるので、有給の間は生産性が落ちても仕方ないと考えられています。
基本的には有給を想定した従業員の数とシフト
サービス業など、従業員がいないと全く成り立たないという職業では、年に5週間の有給で従業員が不在になることはあらかじめ想定しており、それに合わせて従業員の数が決まっています。そして、有給も従業員が同時に取るのではなく、交代で取るようになっています。
また、従業員が少人数という店舗では、ヴァカンスで人が減る8月は店そのものを閉め、従業員が一斉に有給を取るシステムにしている会社もあります。実際聞いた話では、8月はパリに人が居ないので、店を開けていても売り上げが少なく、店を閉めて従業員が有給を取ったほうが生産的、とのことでした。
繁忙期などは有給が取れないことも
フランスでは、繁忙期やどうしてもクライアントとの大事な仕事がある時期などは、有給を取ることはできません。有給は、上司の許可がなければ取れないので、いついつ有給を取りたいと話しても、この時期はこういう理由があるから外してほしいなどと説明を受けます。
いくら有給が自由に取れるフランスといえども、仕事によっては、有給が取れない時期というものがあるのです。
最後に
現在、日本政府は2020年までに年次有給休暇取得率を70%にするという目標を「第4次男女共同参画基本計画」の中で掲げています。果たして、将来的に日本でもフランスのように有給を取ることは可能なのでしょうか。
現時点では、日本の会社で有給を自由に消化するということは、厳しいのが現実かと思います。日本では有給を取ると迷惑がかかると捉える人も少なくはありません。少しづつでも、社会全体で有給に対する意識の改革をしていくことで、いずれは欧米のように自由に有給を取れるようになってくるのではないかと思います。
[内閣府男女共同参画局]
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Nanako Kitagawa ライター
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。
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