雨の熱海 来宮神社へ向かう
来宮神社へはJR来宮駅からがもっとも近いようです。熱海駅からも歩けますが20分ほどかかります。車の場合、来宮神社に30台分ほどの駐車場はありますが、休日には混雑することがあります。その際は来宮駅前の駐車場が便利。ちなみに料金は30分108円です。
この日は雨。歩道が狭く傘をさしているとすれ違いが難しいところもありますが、JR高架線路のトンネルをくぐると・・・
すぐに来宮神社の鳥居が見えました。駅から5分ほどでしょうか。
リニューアルされた来宮神社
竹林のあいだに参道が真っすぐに伸びています。この来宮神社、近年リニューアルをしてきれいに整備されたそうです。
参道の左手には稲荷神社がありました。京都伏見稲荷大社から勧請されたもので、食物を司る神さま、生命の根源を司る「いのち」の根の神さまが祀られ、五穀豊穣や家内安全、商売繁盛などのご利益があるといいます。
稲荷神社の手前にインスタ用としてスマホ撮影台がありました。実はこれから先の境内では、どこに行ってもスマホ撮影台があったのです。すごい力の入れようです。
参道の右手には第二大楠があります。第二とはこの神社で二番目に大きなクスノキという意味です。こちらのクスノキでさえ樹齢は1300年といいます。樹木に隠れていますが、これはこれで巨大なクスノキです。
300年ほど前に落雷にあい、裏に回るとごらんのように根元の幹が空洞になっています。空洞になったところに小さな祠がありました。
幹は空洞になっているのですが、第二大楠を見上げると上のほうは青々としています。下の幹とは無関係に、雨に濡れた緑が生き生きと輝いているようで、強い生命力です。
参道の突き当りにあるのが本殿でした。來宮神社は「来福・縁起」の神として信仰されてきたそうですが、最近では縁結びで訪れる参拝客が多いそうです。参拝客も急増で2008年には15万7000人だったのですが、2017年には4倍以上の68万8000もの人が訪れているそうです。
しかも20~40代の参拝者が約7割を超え、その約7割近くが女性といいます。縁結びの神さまのおかげなのでしょうか。この文様、「ハート」のように見えますが、
「猪目(いのめ)」といい、魔除けや福を招く意味を込めて古くから神社仏閣で使われてきたものです。ちょっとした意匠が女性の心をくすぐるようです。
また本殿の上手にある弁財天は強い気を発しているといいます。江戸時代に徳川家の家臣がここに参拝して出世したことから、開運出世を願う参拝客でにぎわっています。ただしマイナスの気も強めるので気分の落ち込んでいる時は行かない方がよいとされます。
来宮は「木の宮」だった
本殿の下手を抜けて樹木の間をすり抜けると、大楠が現れます。確かに巨大で圧倒されます。ちなみに大楠へ向かう参道には真竹・孟宗竹に加え、新たに日本原産の植物を中心に「祝い」や「災い除け」を意味する植物約6000株の植栽を行ったのだそうです。
この大楠、1933年に国の天然記念物に指定されています。樹齢は2000年以上、樹高約20m、幹周り約24mといいます。蒲生の大クス(鹿児島県姶良市)、武雄の大クス(佐賀県武雄市)と並んで「日本三大クス」なのだそうです。何やら鼻を上に向けて雄叫びしている巨大なゾウを思い浮かべました。
縁起によれば、710年(和銅3年)漁夫の網に1体の木像がかかったといいます。漁夫は海辺のマツの木の根元に木像を安置します。ある夜漁夫の夢に木像が神の姿で現れました。木像は「自分は五十猛命である」と名乗り、「山に7本のクスの大樹があって波音の聞こえない地がある。そこに自分を祀れ。さすれば村民たちを守護しよう」と告げたそうです。そこで漁夫はこの地を選び「木の宮(来宮)」として祀ったそうで、古くは「木宮明神」や「来宮大明神」などと呼ばれました。来宮はまさに「木の宮」だったのです。
来宮神社 パワースポットの由縁
かつて来宮神社の境内には7本の大クスがありました。ところが江戸末期の嘉永年間(1848~53年)に熱海村と伊豆山村の間で漁業権を巡る争い(大網事件)が起こり、熱海村は訴訟費などを工面するためまず5本の大クスを伐採したといいます。そしてこの大楠も伐ろうとしたところ、突如白髪の老翁が現れてこれを遮りました。そのときノコギリが真っぷたつに折れ、老翁の姿も消えました。そのため人々は恐れて伐採を中止したというのです。こうして大クスと第二大クスの2本が神社境内に残されることになり、いまに至っています。
しかし大楠は向かって左側、南の幹が地上5メートルほどのところで折れてなくなっています。1974年8月に襲来した台風23号で折られてしまったのです。 とはいえ今も成長を続けていいて樹上の緑はこんもりとしています。
大楠の周囲には階段があり、歩いて回れるようになっていました。不老長寿や無病息災のシンボルと考えられ、幹の周りを1周すれば1年寿命が延びると伝えられています。
木の周りを周回しながら改めて大きさに感心しました。木の幹と、その脇の人を比べるといかに巨大なクスノキであるか分かります。
大楠の表皮は巨大なゾウの肌のように固いしわに覆われているように見えます。とはいえ雨に濡れた表面に触れるとしっとりとして、どこか温かく、気持ちが安らぐのです。どっしりとして安心感があるのですね。パワーをおすそ分けしてもらう気分でした。
お守りやカフェも霊験あらたか
境内の「新参集殿」では御神札やお守りを頂いたり、「報鼓」と呼ばれるカフェでは意匠に富んだスイーツを頂くことができます。こちらはとても珍しい「酒難除御守り」。来宮神社は、古くから「禁酒」の神として断酒のために来られる参拝者も多いのだそうです。
カフェ「報鼓」では、神様が好物とされる材料を使った来福スイーツがたくさんありました。ここで頂くこともできます。木々に囲まれた高原のカフェで気持ちよくスイーツを頂く気分です。
こちらは「麦こがし饅頭」100円。創建神話では「麦焦がし、百合根、橙、ところ」を浜辺で神さまにお供えしたところ、喜んで召し上がったとの伝説があります。来宮神社では地域活性化のためにこうした縁起のある「神饌食材」を使った「来福スィーツProject」を進めているそうです。
頂いたのは、タピオカ富士山サイダーに麦こがし饅頭。近くの商店街を始め11店舗が50品ほどの「神饌食材」を使った新たな商品を提供しているといいます。
ちなみにこのストローも吸い口が「猪の目」だったのです。細かいところまで徹底してこだわっているようです。大楠に元気を分けてもらい、心地よい気分で美味しいスイーツを頂きました。
[All Photos by Masato Abe]