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クリムトが描いた「ベートーヴェン・フリーズ」を鑑賞!ウィーンの憧れ「分離派会館」を現地ルポ【オーストリア】

Posted by: 鈴木幸子
掲載日: Feb 5th, 2020. 更新日: Feb 5th, 2020

今年のベートーヴェン生誕250周年を祝い、魅惑のイベントが多数予定されているウィーン。まず、真っ先に、ウィーン世紀末芸術の立役者グスタフ・クリムトが描いた作品「ベートーヴェン・フリーズ」を鑑賞しましょう。

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ひと目で圧倒されるパワーの塊「セセッシオン(分離派会館)」


生まれて初めて、セセッシオンを車の中から見た時の衝撃は今でも忘れられません。真っ白なスクエアの建物の天辺に、黄金の葉っぱ模様の球体! 「おおお~っ!! あれ、何???」


ウィーン市内のクラシックな建物が続く中、いきなり現れたこの摩訶不思議な建物は、圧倒的なパワーを放っていました。そして、その存在感に目が離せなくなりました。それが憧れの「セセッシオン(分離派会館)」であったと分かった時の感激はひとしおでした。


正面には“聖なる春”を意味する「ベアル・サクルムVer Sacrvm」。「その時代にはその時代のアートを! 芸術には自由を!」の文字が刻まれています。

セセッシオン(ウィーン分離派)とは何か?


まずはクリムトが生きた19世紀末の大切なキーワード「分離派」の簡単な説明から。パリで新しい芸術運動アールヌーヴォーが流行すると、ウィーンでは個性的な芸術家クリムト、エゴン・シーレ、コロマン・モーザー、オットー・ワーグナーなど多くの天才が活躍し、ウィーン世紀末芸術が花開きます。


現代絵画を模索するクリムトは、保守的な帝室アカデミー(美術協会)から除名となり、1897年、新しい芸術団体セセッシオン(分離派)を仲間と結成します。※写真は分離派会館の裏側に描かれたコロマン・モーザーの壁画


その活動の拠点となったのが、セセッシオン(分離派会館)。絵画のみならず工芸、家具、建築など生活全般の芸術化を目指しました。

クリムトのベートーヴェンへの想い


1902年、ベートーヴェンを讃える「ベートーヴェン祭」が開かれた時、クリムトは、自分がイメージする「交響曲第九番」と、ベートーヴェンを崇拝する音楽家ワーグナーの「第九」解釈を元に、分離派展覧会のために巨大な壁画を制作しました。

展覧会で展示された後は一度外され、1973年、オーストリア政府がこの作品を買い戻して修復し、1986年からセセッシオン内の地下に収められて公開されています。


幅34m、高さ2m。左面から順に、「幸福への憧れ」、「悪に立ち向かう黄金の騎士」、「敵対する力」、「この接吻を全世界に」を表現しています。


昨年、日本で「クリムト展」が開催され、この壁画のレプリカが展示されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。筆者は分離派会館の建物同様、このクリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」を一目見た時は、その名のとおりフリーズしてしまいました。


フリーズとは、神殿の柱の上部の帯状装飾を意味する建築用語です。


クリムトが大好きであったかというと、そうではありません。作風が好きかどうか、そんなことより何より、これを描きたかったクリムトの想いが、ダイナミックに、ダイレクトに伝わってきます。彼の決意・心意気・覚悟、そんなものがこの地下室を支配しています。見る人の心を動かすのです。


これこそ本物のソウルアート。苦難に満ちた日々を送りながらも世を驚かす最高傑作を制作し続け、力強く生きた’天才’ベートーヴェンへの溢れる賛歌。愛そのものではないでしょうか。

作品に関する詳細説明は、下記HPをご覧ください。

クリムト展公式ページ:https://klimt2019.jp/special/beethoven-fries.html

世紀末ウィーンに生きた芸術家たちの時代の空気を少しでも感じたい、そう思う方は、ぜひともこのセセッシオンを訪れてみませんか。

建物の細部に施されたトカゲやフクロウ、カメ・・・すべてのデザインが楽しく、愛おしくなってきます。

1階と2階の展示室では、現代アーティストによる斬新な企画展が開かれています。こちらも、毎回目が点になるほど、素晴らしいものばかり。ミュージアムショップもお忘れなくです!

セセッシオン Secession
住所:Friedrichstraße 12, 1010 Vienna
電話番号:+43(0) 1 5875307
開館時間:10:00~18:00
閉館日:月曜日
入場料:9.50ユーロ(スーバニアショップのみは入場料不要)
HP:https://www.secession.at/en/

取材協力:
ウィーン市観光局
オーストリア航空

[All photos by Sachiko Suzuki]

鈴木幸子

sachikosuzuki 旅行記者、エディトリアル・ディレクター
出版社勤務や地球の歩き方編集を経て2001年に独立。世界60か国以上を頻繁に取材し、一期一会のハッピーな記事を書いています。JTBるるぶ「アンコールワットとカンボジア」初版制作。著書『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』ほか。有限会社らきカンパニー主宰。「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前です。


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