のんびりと路線バスに揺られて八幡平へ
今回は雪を求めて八幡平の温泉地を訪ねる旅。新幹線で東北地方を北上中、岩手県に入るときれいな虹が左手の車窓に見えました。ちょっとずつ積雪も増えていくようです。ずっとみぞれ雨模様だったのですが、天気が回復してきました。盛岡駅で下車して路線バスに乗り換えます。
盛岡駅から終点の松川温泉へは路線バスで1時間50分ほどかかります。日本百名山の岩手山を時計の反対まわりに移動します。岩手山をずっと左手に見ながら、のんびりと八幡平の山あいに進んでいきます。この日の岩手山は山頂付近にずっと雲がかかっていましたが、空は真っ青で冬晴れ。
盛岡からやって来たバスは、1時間ちょっと走った後、八幡平マウンテンホテル前で終了となります。そこからは上の写真、懐かしいレトロなバスに乗り換えて雪のなか松川温泉まで進むのです。周囲には大自然があふれていますが、スキー場やリゾートホテル、別荘などが建ち、人里離れた山のなかという雰囲気ではありません。およそ20分、雪道をどんどん登っていくと松川温泉に到着です。
岩手県八幡平の秘湯 峡雲荘
松川温泉には3軒の温泉宿がありますが、峡雲荘は終点の標高875m地点、いちばん奥になります。じつは道はさらに八幡平の奥深くに通じているのですが、冬季は積雪のためにバスが走っていません。
峡雲荘の玄関前では大きな雪だるまが迎えてくれました。可愛らしいですね。
松川温泉は発見されてから280年、日本で最初の地熱発電所が作られたほど温泉に恵まれたところなのだそうです。
峡雲荘は古民家風の佇まいでした。日本秘湯を守る会の宿です。もともとは64年前の1956年創業といい、地熱発電所のために場所を何度か移転したといいます。
宿の外は零下ですが、建物の中はぬくぬくしてとても心地よいのです。じつは暖房は地熱発電所の蒸気を使っているといいます。ですから客室の暖房もONOFFのスイッチがなく、窓を少し開けて温度調節をして下さいとのことでした。雪山のなかでなんとぜいたくな。ちなみに客室にはテレビにトイレ、洗面所、コンセントもあり、旅館とまったく変わりません。wifiもできます。
体も心も温まる 雪の硫黄泉
評判の温泉に向かいました。緑がかった乳白色のお湯。雪見の露天風呂です。しかも混浴なのです。この日はスキーに訪れていた外国人男女も混浴で入浴していました。ちなみに女性専用の露天風呂もありますので安心してください。
泉質は硫化水素型の単純硫黄泉です。pHは5.0で、それほど強い酸性ではありませんが、金属類は腐食しやすいので気を付けて下さいとのこと。吹雪が舞う雪の露天風呂のなんと爽快なことでしょう。
内湯には大きな浴槽がひとつ。そしてお湯の出るシャワーもカランもありません。ただひとつお湯が流れ出す桶があり、そのお湯を汲んで硫黄成分を洗い流します。便利さを求める方にはおススメできませんが、これぞ昔ながらの本物の温泉地なんです。
峡雲荘は日帰り入浴を楽しむこともできます。8時から19時まで入浴料は大人600円子ども300円だそうです。
太陽は出て天気は良いはずなのですが、雪が時々強く舞い、温泉から出ている顔や頭に粉雪が吹き付けます。山の天気はこんな具合なのですね。
ちなみにスキージャンプの小林陵侑選手はこの松川温泉のある八幡平市松尾地区出身で、5歳の時にスキーを始めたそうです。雪深い土地で鍛えられていたのですね。
山の幸のおもてなし
さあ夕食です。夕食は客室でいただきます。ご主人は元八幡平の自然保護委員をしていたそうで、植物や山菜にはくわしいのだそうです。しかも料理にもこだわりがあるのだそうで、食卓に出す山菜や野菜も新鮮で、調理師の方が周囲の山を歩き回って摘んだものだとか。
お刺身は幻の魚イトウ、八幡平サーモン、そしてイワナとそれぞれが珍しく、美味しく頂きました。
こんな山あいで刺身だなんて贅沢です。
メインは岩手ならではの短角牛を使ったすき焼き鍋。ちなみに短角牛とは、もともとこの地域の荷役に使われていた牛で、脂肪分が少なく、旨味成分のグルタミン酸やイノシン酸がたっぷり含まれている良質の赤身肉、美味しくてヘルシーと評判なんです。
帰路もあのレトロなバスが宿の真ん前で待ってくれていました。雪ダルマもお見送りです。なんだか懐かしいような温かい気持ちで宿を後にしました。下界は春を迎えても松川温泉の雪はまだまだ消えません。ぜひ松川温泉で雪の露天風呂を味わってみてください。
[All Photos by Masato Abe]
Masato Abe 還暦特派員
大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。
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