
4つの“禅”体験
“禅”体験の内容は、坐禅、写経、永平寺での朝のおつとめ、精進料理です。今回はこの中の「精進料理」をご紹介します。
料理による出汁の味わいの違いに感動!

食事は1階「水仙」でいただきます。シンプルで清潔感にあふれる空間です。

夕食です。まずは前菜。小皿に種類豊富なお料理がズラリと並びます。
まずは名物の「胡麻豆腐」(中央)。こちらでの手作りです。なめらかでコクがあってたまりません!「蓮根と山芋の蒲焼」(左下)はシャキシャキとした蓮根とトロトロの山芋を合わせて焼いた、食感もあわせて創意工夫を感じる印象に残るおいしさでした。
ほかのお料理も滋味深い味わいがあり、一皿一皿が心からおいしい!とにかくひとつひとつの仕事がきめ細やかなんです。椎茸や昆布、野菜のだしで旨味を上手に生かすと、こんなに味わいに違いが出るものかと感心してしまいます。家庭でここまでするのは手間がかかると思いますが、しようと思えばできるんだな、と永平寺の修行の内容を垣間見るようでした。
前菜:胡麻豆腐 銀餡 山葵/椎茸旨煮と胡瓜のあいまぜ/車麩フライ 蛇腹胡瓜 菊花
昆布有馬煮 加減酢ジュレ/大野産すこと茸の白和え 菊菜/
蓮根と山芋の蒲焼 粉山椒 酢取り蓮根/翡翠茄子 卸し生姜 美味汁
小鉢:竹田のあげ焼 水菜 染め卸し

お魚のお造りではないのです。湯葉がトロけるようななめらかさです!アボカドでコクが添えられているのもうれしいですね。
造り:重ね湯葉 柚子蒟蒻 アボカド/海藻麺 妻一式

飛龍図(「ひりゅうず」関東では「がんもどき」)の中には、つぶした豆腐、人参、ひじきなどが入っています。だしの旨味が口中にじゅわりと広がります。
煮物:飛龍図 しめじ 隠元

小さなお鍋です。豆腐、湯葉はやわらかくてなめらかで、新鮮なのがよくわかります。これからの季節にうれしい一皿ですね。
台の物:湯葉野菜小鍋(巻き湯葉、豆腐、白菜、水菜、椎茸、榎、紅葉人参)

筆者は大根餅が大好きなのですが、これは揚げ出しで本当にやわらかくてもちもちで、かなり気に入りました!新鮮でないとできないおいしさです。ところどころに油物が取り入れられているので、飽きることがありません。
揚物:揚げ出し大根餅、九頭竜舞茸、大葉、紅葉卸し

主食はご飯か麺を選べます。お米の「いちほまれ」は地元福井県の「こしひかり」といわれるほどの質の高さで知られています。小さなお釜での炊きたてです!

見事につやつやで、しかも新米とのことで、久しぶりに本当においしいご飯をいただきました。

福井産の大豆を使用したという「麦とろ麺」は、言われなければ素麺かなと思うほどのあっさり風味。天かすがコクを添え、だし汁で身体が温まります。
味噌汁には少し砕けた大豆入り。砕くと味わいが増すんですね。ここにも創意工夫が見られます。自宅での料理の参考になりそう。
自家製の漬物は塩気が少なくて、ご飯のお供にいただくと思わず「あぁ、日本人で良かった!」と実感します。やっぱりご飯、味噌汁、漬物は最強セットですね。
食事:福井県産「いちほまれ」または福井県産大麦使用「麦とろ麺」
留椀:福井県産打ち豆汁(大根、人参、牛蒡、蓮揚げ、三つ葉)

デザートまでついています。福井産のさつまいも「とみつ金時」のようかんです。昆布を甘く煮たものが添えられています。精進料理のシメにふさわしい、あっさりとした後味です。
甘味:とみつ金時ようかん、昆布密煮、銀杏丸十
同料金で普通の和食を選ぶこともできます。筆者は2泊したので1回は和食にしましたが、上記のような精進料理に鶏肉や鴨肉、魚介類が加わり、丹念に作られたおいしい和食でした。
地元・福井の地酒も充実!

そして、こちらでうれしいのはお酒が充実していること!修行ではいただけませんが、おいしい和食にはやっぱりお酒が不可欠ですね。というわけで、期間限定でおすすめの「梵 純米吟醸ひやおろし」(小160ml・1,100円・サービス料込・税別)をお願いしました。だしを味わう精進料理に寄り添うような、やわらかい味わいです。こちらは福井県鯖江市の蔵元「加藤吉平商店」による地酒です。

ほかにも「一本義」「黒龍」「越前岬」など福井の地酒8種がそろいます。この辺りにも、精進料理ながらも柔軟な配慮が感じられます。

胃腸に優しい料理が並ぶ朝食

朝食は、こんな棚状の入れ物に小鉢が並びます。野菜を中心にお粥に合わせるのにぴったりな数々。一度の食事でこんなに多品目を取れて、しかも胃腸に負担がかからないものばかり。毎日こんな食事を続ければ、腸内環境が良くなるはずです。修行僧たちは健康状態が非常によいのではと、少しうらやましく思います。
小鉢:胡麻豆腐 甘味噌 けしの実/麩の辛子和え/椎茸軸甘辛煮 大根卸し 針唐辛子/大根葉炒め/沢庵煮 茄子皮炒め煮/人参金平、香の物

朝からお鍋までいただけます。野菜とお麩で軽めなのがちょうどいいです。
台物:紙鍋 味噌仕立て、大根 人参 茸 粟麩 水菜
御飯:お粥 鼈甲餡
デザート:水ようかん
土地でとれた旬の素材の持ち味を生かし切る

料理長の大平英幸さんは、東京の某有名高級ホテルの料理長を務めた方で、永平寺の食事を司る僧「典座(てんぞ)」から手ほどきを受け、調理されているそうです。旬の素材を生かして、手作りにこだわり、見かけの派手さを追い求めない。そして水や食料を無駄にせず、野菜の切れ端なども“始末の精神”で生かし切る。
基本的には永平寺町または周辺でとれた地の新鮮な素材を使い、その巧みな技術で洗練された料理を生み出しておられます。小さな一皿一皿が滋味あふれるおいしさで驚きました。それぞれのだしの味わいの違いがここまで感じられたのは、初めてかもしれません。素材の持ち味を丁寧に生かし切る、こんな料理が極上といえるのかもしれません。

自宅でも豆腐、大豆、野菜、茸、昆布など、もっと自由な発想で活用できそうです。永平寺の「典座」が精進料理のレシピ本を出版しているので、購入して試してみてもいいかもしれませんね(http://tenzo.net/book/)。
「精進料理」とはいっても、バラエティに富んでいたり高い技術のせいもあるかもしれませんが、淡泊で物足りないという印象は持ちませんでした。肉や魚なしでも、工夫次第でこんなに多彩な料理が生み出せるとは、和食は奥が深いな・・・と感じずにはいられません。
時にはこちらで精進料理をいただいて、身体をリセットするのもいいかもしれません。このおいしい料理を堪能するためだけに、宿に滞在するのも大いに価値があると思いますよ!
[All photos by ロザンベール葉]
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ロザンベール葉
主に横浜・東京で育ち、縁あって京都に在住。美術書出版社勤務を経て、フリーランスライター歴20年余り。フランス人のパートナーと共に、フランスとイタリアを中心に気ままな旅をする。海はどこも好きだけど、「地中海」という響きに憧れる。マイペースが好き。
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