とにかく海と空が広い!開聞岳の頂きへ
標高924m。薩摩富士と呼ばれる指宿のシンボル、開聞岳は周辺のどこからでも富士山のような美しい円錐形を望むことができる美しい山です。太平洋戦争の末期、近くの知覧から飛び立った特別攻撃隊の戦闘機は、この開聞岳を最後に見る日本の景色として、故郷や家族に別れを告げたという悲しい話も残っています。
さて開聞岳です。標高1,000メートルにも満たない山なのですが、深田久弥は著書「日本百名山」で「高さこそ劣れ、ユニークな点では、この山のようなものは他にないだろう。これほど完璧な円錐形もなければ、全身を海中に乗り出した、これほど卓抜な構造もあるまい。名山としてあげるのに私は躊躇しない」と記しています。
まずは登山の入口となる「かいもん山麓ふれあい公園」の駐車場に車を置きました。ここは、広々とした自然公園で、キャンプ場も整備されています。このキャンプ場を横切って目の前の山頂を目指すことになります。
登山口、そして登山のルートはひとつしかありません。円錐形の丸い山をぐるりと回り込みながら高度を高め、山頂を目指すことになります。
北アルプスや南アルプスの山とは全く景色が違います。登山道の両側には、南の国のジャングルのような亜熱帯の樹木が茂っています。
しかも足元は火山性のざらざらした小石で、滑りやすいのです。上の写真のような深い溝のような登山道も、人が歩いているうちに足元の土が崩れて掘り進んでしまったものかもしれません。
ちょうど5合目に休憩できるベンチと見晴らし台があり、東の池田湖や錦江湾を望むことができました。一説にはこの山の名前は、錦江湾の入口=「海門」にあることから「かいもんだけ」と呼ばれ、「海門岳」がいつしか「開聞岳」となったともいいます。一方、「日本百名山」で深田久弥は、ふもとにある、薩摩の国の一の宮・枚聞(ひらきき)神社の「ひらきき」が「開聞」となったとも記しています。
7合目を過ぎたあたりから岩場が増えてきて、大きな岩穴もありました。上の写真の右寄りの洞窟は「仙人洞」と呼ばれているそうで、昔むかし、この洞窟に修行僧たちがこもって、修行を行ったそうです。
ちなみにマグマが地表で急に冷えると固い安山岩になるそうです。登山口のあるふもとは火山灰のような崩れやすい土。そして山頂付近は固い岩場となっていて、ひとつの火山でも土の成り立ちが違うのです。
8合目になると登山道は海側になるので、これまでは全く見えなかった西側の枕崎方面の海岸線が見えます。山の反対側に回り込んでいるので景色が全く違ってくるのですが、不思議な気分になります。
やがて山頂手前に差し掛かります。大きな岩がごろごろしていて、それらを乗り越えると山頂に近づきます。
登り始めて2時間ほどで頂きに到着です。周辺に高い山が全くないので、大きな空と広い海を感じながらの道のりでしたが、山頂につくと、さらに海と空を独占したような気分にさえなります。素晴らしい天気で痛快な気分でした。
さらに東の指宿や池田湖、そして、その向こうの錦江湾、さらに遠くに桜島が見えます。
上の写真の樹海の向こう、南の方角に屋久島の宮之浦岳がうっすらと見えていたのですが、写真には写りませんでした。とにかく広い空と青い海を実感できる、不思議な気分の山登りでした。
指宿名物の砂蒸し温泉を体験
開聞岳を下りて汗を流そうと向かったのは、指宿名物の砂蒸し温泉・砂楽です。入場料は1,100円。砂除け用の記念手ぬぐいは200円。バスタオルの貸し出し200円もあります。以前訪ねたときはとても混雑していたのですが、コロナ禍のために8割を占めていたという外国人観光客がいないといいます。施設経営は大変でしょうが、それだけに、のんびりと砂蒸しを楽しめました。頑張ってください。
浴衣を着て、手ぬぐいを頭に巻き砂に横たわります。そうすると係の方が砂を体にかけてくれます。砂の微妙な圧力が心地よいのです。しかも疲れた体をほぐしてくれるような気がします。10分ほどの砂蒸しですが、けっこうな汗をかきました。砂蒸しの後は温泉に入って砂と汗をきれいに洗い流します。これで気分爽快。指宿を訪れたら、ぜひとも砂蒸し温泉を体験してみてください。
すべてオーシャンビュー「指宿ロイヤルホテル」
今夜の宿は、指宿温泉の中心街からは少し離れた、海沿いの高台にある指宿ロイヤルホテルです。
玄関を入ると広々とした海原が見えるオーシャンビューのロビー。大きな窓の向こうには錦江湾と南の大海原が広がっているのですね。
プールもあるのですが、さすがにこの時期は入ることはできません。でもプールがあるだけで南国気分を高めてくれます。
もちろん客室もベランダ付きのオーシャンビュー。ゆったりとした気分を味わえます。
お楽しみは、海に面した露天風呂です。こちらも気分爽快。顔を乗り出せば、向こうに開聞岳を望むこともできました。
こちらの温泉は「古毛曽湯(こもそゆ)」と呼ばれていて、その昔、虚無僧たちが湯治したことにちなんでいるそうです。源泉かけ流しなんだとか。泉質は温まるナトリウム塩化物泉。そして肌の新陳代謝を高めくれるメタケイ酸が143.3mgもあるんだそうです。
そして夕食です。美しく山海珍味が盛り付けられました。黒酢のジュレやきびなごの刺身も鹿児島ならでは。それぞれ丁寧に作られています。
そして、サツマイモを飼料として育てられ、肉質が良いという鹿児島県産の六白黒豚!しゃぶしゃぶでいただきました。ごちそうさまでした。
旅を左右するのは、もちろん目的とする体験や宿泊先の居心地ですが、それをさらに楽しませてくれるのは、天気かもしれません。秋の日の穏やかな天気は、絶景と温泉の旅をいっそう爽快なものにしてくれました。
住所:鹿児島県指宿市十二町4232-1
電話:0993-23-2211
HP:https://ibusukiroyalhotel.co.jp/
指宿温泉砂むし会館 砂楽
住所:鹿児島県指宿市湯の浜5-25-18
電話:0993-23-3900
HP:http://sa-raku.sakura.ne.jp/
[All photos by Masato Abe]