会議にバリスタを呼ぶ!?オーストラリア観光局の日本人が見た現地のカルチャーショック

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Apr 13th, 2021

新型コロナウイルス感染症の影響で海外旅行が自由に行き来できるようになる時代は、もう少し先かもしれません。そこで、少しでも海外を感じてもらえるように、TABIZINEで新企画をスタートします。各国の政府観光局に勤務する日本人スタッフに焦点を当て、彼ら・彼女らの向こう側に透けて見える諸外国の文化や暮らしを感じてもらうという内容です。初回はオーストラリア政府観光局の加藤典子さん。筋金入りのオーストラリアファンはもちろん、漠然と「オーストラリアに行ってみたいな」と思う人も、最後まで読んでくださいね。

オーストラリア・シドニー

現地人のフレンドリーさと開放的な空気感

冒頭でも紹介した通り、最初に話を聞いた人は、オーストラリア政府観光局に勤務し、シニア・マーケティング・エグゼクティブとして働く加藤典子さん。

肩書が立派すぎてわかりづらいですが、オーストラリア観光を日本にPRする仕事をしている方ですね。

新型コロナウイルス感染症の影響から、今は自宅で仕事しているものの、普段は都内のオフィスで働いているそうです。

オーストラリア政府観光局のオフィス。州政府観光局も同じオフィスに入る。※住所は非公開。

そんな加藤さんに対する最初の質問は、「どうして海外の政府観光局に勤務しているか?」です。

世の中にたくさん仕事がある中で、あえて海外の国の観光局に勤務するのですから、その国の帰国子女か何かだと想像してしまいます。

その点を加藤さんに聞くと、「完全なる日本人で、自然豊かな東京の郊外で生まれ育ちました」という回答がありました。

「そもそもオーストラリアとの出合いは、高校時代です。ゴールドコースト・マラソンに参加して、現地の人のフレンドリーさと、日本にはない開放的な空気感に一目ぼれしました」

ゴールドコーストマラソン(c)Events Management Queensland

そのときの感動が忘れられなかった加藤さん。高校卒業後に留学を希望し、現地で観光学科へ進んだそうです。

そこからオーストラリアとの関係が始まったのですね。

職場にもFair goの精神

オーストラリアのカンガルー

日本に帰ってから、オーストラリア政府観光局に入局されたそうですが、そもそも政府観光局は、どのように人材を募集しているのでしょうか?

「日本で発行される英字新聞の求人欄に、オーストラリア政府観光局からマーケティングチームの人員募集が出ていました。

当時は日本から、年間80万人ほどがオーストラリアへ渡航していて、マーケットが伸びていた時代です。

オーストラリア政府観光局も、日本の市場開拓に力を入れ始めていました」

オーストラリア・メルボルン

素朴な疑問はまだあります。政府観光局のオフィスには、外国人と日本人がどのくらいの比率で働いているのでしょうか。

「現状でオーストラリア政府観光局の事務所は東京の1カ所です。局長はオーストラリア人ですが、ほかのスタッフは全員日本人です」

てっきり筆者は日本人とオーストラリア人が半々くらい存在しているのかと思いました。聞けば、オフィスでの会話は日本語を基本に、状況によって英語を使うとの話。

「上司と部下との関係も壁がなく、私も上司をファーストネームで呼びます。コミュニケーションもしやすい環境で、この点はおおらかな国民性も関係していると思います」

いわば、オーストラリアでよく使われる「Fair go」(誰もが平等で公平といった意味)の精神がオフィスにもあるといいます。

なんだか話を聞きながら、職場の向こう側にオーストラリアの開放的な青い空が見えてきた気がしました。

No leave, no life

オーストラリアのビーチに止まるバン

オーストラリア政府観光局の場合、日本人が主体の職場といっても、局長はオーストラリア人です。本国にある本局との密な連携、連絡もあるでしょう。日本にある日本人が経営陣を独占した日本人従業員ばかりの日本企業とは、当然カルチャーが違うはずです。そのギャップは、オーストラリアという国を理解する上で、大きなヒントになると思います。ファーストネームで呼び合うほかに、職場環境やカルチャーの違いは、何があるのでしょうか。

「一般的な日本人と違うと感じる部分は、ワークライフバランスです。

政府観光局でも、仕事はまじめに取り組み、休みはしっかりとる人が普通です。長期休暇にはもちろん仕事を休みますし、例えば普段でも、出社する前にサーフィンする人だとか、はだしでビーチウォークする人だとかがたくさんいます。

オーストラリアのビーチを歩くひと
昼もランチタイムにジムで汗を流したり、仕事後も同僚と一杯だけお酒を飲んで、夕食は家族と楽しんだりといったカルチャーがあります。

現にオーストラリアでは百貨店など平日は夕方5時に閉まりますし、週末も4時とか5時に閉まります(※週に一度だけ、都市により曜日は異なるものの、『レイト・ナイト・ショッピング・デー』があり、都市部の百貨店は21時まで営業する)。国民全体が精一杯休んで、精一杯遊んでいるのですね。

その背景には、オーストラリアの環境があるかもしれません。シドニーのような都会からでも、20分も行けばビーチがあります。都市と自然が共存しているので、自然に人々はそのような暮らしになるのだと思います」

オーストラリア
日本の場合、都会に暮らす人たちは大変な通勤時間を費やしています。仕事後に飲み始めたら、そのまま遅い時間までという流れが一般的だと思います。

同僚と一杯だけ飲んで、後は家族と過ごすなどの楽しみ方、日本人もまねしたいですね。

会議にバリスタが来る

コーヒーマシン
ほかにも何か「オーストラリア人っぽいなー」と思う瞬間を、聞いてみました。

「コーヒーですね。とにかくコーヒー好きが多いです。例えば日本の会議では、インスタントコーヒーだったり、スタッフの誰かがコーヒーメーカーで入れるコーヒーだったりを飲むと思います。しかし、オーストラリアの場合は、人数の多い会議や商談会の場合、エスプレッソマシンとともにバリスタが来ます。バリスタが注文を聞き、カップに名前を書いて後で届けてくれたり、名前を呼んだりするような光景を普通に見ます。

また、オーストラリアから要人が来日する際は、おいしいコーヒーが飲める場所を事前に調査しておきます。コーヒーに対するこだわりが、オーストラリア人のほうが一般的に強いのかなと思います

オーストラリア人が飲むコーヒーとしては、カプチーノやカフェラテだけでなく、ミルク入りでフラットホワイトというメニューもあります。最近、日本でも少しずつ見かけるようになりましたね」

確かにオーストラリアでは、世界的に有名な大手コーヒーチェーンが根付かず、事実上撤退したというニュースを前に聞きました。観光客向けに数店はあるらしいですが、独自のコーヒー文化が根付いているのですね。

オーストラリア・メルボルン
カフェが並ぶメルボルンの路地裏 (C) Oliver Foerstner / Shutterstock.com

さらに言えば、オーストラリアの中でも南部のメルボルンはカフェのまちとして世界的に有名です。日本人がオーストラリアに行く楽しみのひとつとして、現地のコーヒー文化も挙げられそうですね。

オーストラリアのコロナの状況は?

オーストラリアの地図
最後に、現状でオーストラリアにおける新型コロナウイルス感染症の状況はどうなっているのか、聞いてみました。

「現状でオーストラリアでは、帰国者以外の入国を認めず、国境を閉鎖しており、州や地域ごとに感染拡大の防止策を行っているので、上手くコントロールしています。そのせいもあって、国民に国内旅行を推進しています。日本の『Go Toトラベル』のように『Holiday Here This Year』のスローガンの下、国内旅行が盛り上がっています。

同時に感染者を抑え込めている隣国のニュージーランドからオーストラリアへの入国は、昨年10月より条件付きで始まっています。今後は、感染拡大が収まっている他国からの受け入れも始まるのではないかと期待しています。

オーストラリア・ビーチを歩くらくだ
西オーストラリア州ブルーム

日本からの旅行者の受け入れについては、まだタイミングが見えませんが、コロナが落ち着いたら、ぜひ読者の皆さんにも、お越しいただければと思います。オーストラリアには日本とはまた異なる素晴らしい絶景、文化があります。フレンドリーな人柄にも触れていただきたいと思います」

以上、オーストラリア政府観光局の加藤さんへの取材でした。ワークライフバランス、コーヒーの話から、オーストラリアの国民性や魅力が透けて見えたような気がします。

次はまた別の国の観光局に勤務する日本人にインタビューを続けていきますので、続編を楽しみにしていてくださいね。

ウィットサンデー諸島(c)Tourism Whitsundays

【取材協力】
オーストラリア政府観光局
[Twitter]
[Instagram]

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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