キャッシュレス決済で最も評価が高いブランドは?
今回の記事で参考にしたデータは、サービス産業生産性協議会の2020年度「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」第3回調査。同調査は約30業種の顧客満足度を毎年公表する日本最大級の顧客満足度調査です。
キャッシュレス決済の部門で評価の対象となったブランドは、d払い・PayPay・メルペイ・LINE Pay・楽天ペイ・ICOCA・au PAY ・Suica・nanaco・WAONです。
評価する人は過去半年以内に2回以上キャッシュレス決済を利用したユーザーで、個人の好みが回答に強く出ないように1企業(1ブランド)に対し300人以上の回答が集まる工夫もされています。最終的には回答者が十分に集まらなかったため、ICOCA・au PAY・Suica・nanaco・WAONがランキング対象外となりました。
評価ポイントは顧客期待(企業ブランドへの期待)・知覚品質(全体的な品質評価)・知覚価値(コスト・パフォーマンス)・推奨意向(口コミ)・ロイヤルティ(将来への再利用意向)で、それらの総合評価として顧客満足度ポイントが算出されます。
キャッシュレス決済の部門で最も評価が高かったブランドは、どこだったのでしょうか?(カッコ内は顧客満足度スコア)
第3位:Pay Pay(69.7)
(C) slyellow / Shutterstock.com
第3位はまさかのPayPayでした。インフキュリオン(東京都)の「決済動向2020年12月調査」によれば、PayPayのシェアはコード決済アプリとして最大です。現在も決済回数・加盟店数・登録者数は右肩上がり。そうした実績を考えると顧客満足度スコアも1位に輝くと筆者は予想していました。しかし、2020年度「JCSI」第3回調査では、PayPayの顧客満足度の総合スコアが前年と比べても下がって3位に転落していました。
評価の内訳を見ると、知覚品質(全体的な品質評価)はさすがに業界でNo.1の評価を受けています。使い勝手は業界で最も評価されているようです。
しかし、その他の顧客期待(企業ブランドへの期待)・知覚価値(コスト・パフォーマンス)・推奨意向(口コミ)・ロイヤルティ(将来への再利用意向)で業界3位と評価が伸び悩んでいます。
例えば決済カードや銀行・通信などがワンブランドで統一されている楽天と比べて、PayPayは連動する銀行やクレジットカードの名前がバラバラです(でした)。その不統一が、企業ブランドに対するわかりにくさを生んでいるのかもしれませんね。
ただしPayPayもこの先、銀行からクレジットカード・証券会社・保険など関連する企業が全てPayPayの名の下に統一されていくみたいです(ジャパンネット銀行がPayPay銀行になったように)。こうした変化を受けて、顧客満足度がどう影響を受けるのか、今後も注目ですね。
第2位:楽天ペイ(70.0)
(C) StreetVJ / Shutterstock.com
楽天ペイが第2位に輝きました。巨大経済圏を「楽天」のワンブランドで統一し、その中にモバイル決済の楽天ペイを組み込んでいるので、ユーザーとしてはわかりやすいですよね。
評価の詳しい内訳を見ると、推奨意向(口コミ)も業界No.1と高く、顧客期待(企業ブランドへの期待)・知覚価値(コスト・パフォーマンス)・ロイヤルティ(将来への再利用意向)で第2位と幅広く評価されています。
使い勝手そのものはPayPayのほうが便利だけれど、ブランドに対するイメージは楽天ペイのほうが勝っているといった感じですね。
ただ楽天に関しては、楽天ペイと楽天Edyの違いが個人的にわかりにくいです。調べてみると最大の違いは、
- 楽天Edy=完全にプリペイド式
- 楽天ペイ=プリペイド式と後払い式(クレジットカード払い)を選べる
という点にあるみたいですね。
チャージした金額の範囲を超えて楽天Edyを利用する場合は再チャージが必要ですが、楽天ペイの場合はクレジットカードによる後払い(クレジット払い)を選択するとチャージ不要のまま、どれだけでも(クレジットカードの限度額の範囲内で)使えます。
好みや経済状況に合わせて、楽天Edyと楽天ペイを上手に使い分けたいですね。
第1位:d払い(71.7)
(C) soi7studio / Shutterstock.com
2019年度調査から順位を上げ、PayPayと楽天ペイを追い落としたキャッシュレス決済はd払いでした。通信キャリアでドコモを使っている人は別ですが、そうでない人たち、あるいはPayPayユーザー・楽天ペイユーザーからすれば、意外な結果ではないでしょうか?
先ほども紹介したインフキュリオンの「決済動向2020年12月調査」によると、やはりd払いの利用率は業界の中で高いほうとは言えないとわかります。コード決済の部門で限ってみてもPayPay・楽天ペイに次いで第3位です。
しかし、JCSIの顧客満足度調査においては、顧客満足度で第1位を獲得していました。調査の内訳を見ても、顧客期待(企業ブランドへの期待)・知覚価値(コスト・パフォーマンス)・ロイヤルティ(将来への再利用意向)の部門で第1位。知覚品質(全体的な品質評価)・推奨意向(口コミ)で第2位を獲得しています。
全体的な品質評価についてはPayPayにおとります。楽天ペイと比べて銀行やクレジットカードとの連携も遅れています。しかし、dポイントやdポイントクラブを含めたドコモユーザーの企業ブランドに対する期待が、d払いの顧客満足度をしっかりと支えているみたいですね。
以上がキャッシュレス決済の顧客満足度調査の結果紹介になります。旅人の移動や食事・買い物をかなり楽にしてくれるキャッシュレス決済。まだ現金派という人は、新型コロナウイルス感染症の影響で接触の回避が好まれる今だからこそ、この機会に生活に取り入れてみるといいかもしれませんね。
[参考]
※ JCSI日本版顧客満足度指数 第3回調査 詳細資料
※ QRコード決済の利用率が初めて50%を突破 -インフキュリオン、「決済動向2020年12月調査」を発表 –
※ 【2021年版】楽天、PayPay、LINE Payの「強み」と「課題」…キャッシュレス経済圏拡大中 – BUSINESS INSIDER
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