嶽温泉 そして標高1,625mの岩木山へ
嶽温泉へのアクセスは、弘前駅近くにあるバスターミナルから路線バスに揺られて1時間ほど。のんびりとした風景を眺めながらの移動です。小さな温泉街も味わいがありますよ。
岩木山に簡単に登る方法は、車で有料道路の津軽岩木スカイラインを使って8合目まで行き、そこからリフトで9合目までたどり着けば、1時間もかからずに登頂することができます。とはいうものの、やはりここはこだわって麓にある嶽温泉登山口から歩いて登ります。
嶽温泉街のすぐ目の前に鳥居があり、そこが登山口。気持ちのいい自然林ですねえ。ちなみに、もっともポピュラーな登山道は東南にある岩木山神社からのルートだそうです。
ハクサンチドリでしょうか。その名前のように、たくさんの小さな鳥が飛んでいるように見える花ですね。
この日、木立の間から上を見上げると、山頂付近は雲に覆われていました。天気予報では、昼からは晴れるということですが、どうなることでしょう。
樹林帯を進むと、2時間半ほどで車が止まっている駐車場に出てきました。標高1,250mの8合目なのですね。ちなみに嶽温泉からの登山道の西側を津軽岩木スカイラインが走っています。終点のこの駐車場には売店やトイレもあって、休憩することもできます。
駐車場にはリフト駅があり、10分ほどで標高1,470mの9合目まで気軽に行くことができます。ちなみにスカイラインの料金は普通自動車が往復1,830円、リフトが大人往復1,000円だそうです。
山頂への道 天候が回復してきました
歩いて登るにはリフト駅の脇にある、登山道を進みます。それほど急坂ではありません。30分ほどでリフト駅の9合目にたどり着きました。
下から望むだけでは全くわからないのですが、岩木山には上の写真の右奥にカルデラがありました。鳥ノ海噴火口、というのだそうです。岩もゴロゴロしていますね。
ちなみに岩木山は何万年も前から噴火を繰り返し、2,000年ほど前に鳥ノ海溶岩ドームが形成されたといいます。そして、天明3年(1783年)の噴火で新火口を形成して周囲に火山灰を降らせ、天明の大飢饉の一因にもなったのだそうです。
噴火口を通り過ぎると、いよいよ山頂へ岩場の多い斜面を登っていきます。上の写真は振り返って下を見た様子ですが、こんな具合。
汗をかきながら登っていく岩場に、黄色い花が咲き乱れていました。
ミヤマキンバイでしょうか。可憐で美しく輝いていますね。9合目からの登山道周辺にたくさん咲いています。
山頂手前になると、岩が少し大きくなっていきます。足場に気を付けて登っていきます。
そして、ついに山頂に到着。9合目から30~40分、登山口からだと4時間ほどどでしょうか。おお、少し雲が取れてきたようです。天気予報で言っていたように天候が回復してきました。
下を見ると、8合目の駐車場も見えます。天気が良ければ、八甲田山や白神山地、日本海の海岸線に北海道まで見渡せるといいますが、今日はそこまでは見えません。ですが、上空だけでも晴れていれば幸いです。
行列ができていたので訊ねたところ、特別な日だけ山頂の社務所が開いていて、御朱印がいただけるのだそうです。地元の方でなければ、なかなか情報を知ることができませんから。
天気も回復し、岩木山神社奥宮の御朱印までいただくことができました!ラッキー!
嶽温泉の宿でのんびりと憩う
ふたたび嶽温泉に戻ってきました。すっかり天気は良くなっています。山頂の雲もなくなりましたね。
宿泊しているのは、嶽温泉の中心にある田澤旅館。旅館とはいえ、民宿のようなざっくばらんな雰囲気。食堂もやっていて店頭では夏の間、嶽地区特産のとうもろこし「嶽きみ」を販売しているそうです。「嶽きみ」は甘く味が良いことで知られているんだとか。
建物内部も客室もゆったりしています。布団も自分で敷くセルフ。ちなみに料金は、とてもリーズナブルで、平日休前日変わらず1泊2食7,500円だそうです。
嶽温泉の開湯は300年前にさかのぼります。キツネに昼飯を盗られた村人がキツネを追いかけたところ、雪の中に湧き出る湯を発見したという伝説が残されているとか。
大浴場に向かいます。建物の奥まった階下にあります。廊下もゆったりしていますね。
温泉は浴槽が2つあります。男性の脱衣場から浴室に入って手前の浴槽は男性のお風呂。少し白濁している嶽温泉。
泉質は硫化水素性・含ミョウバン・緑バン・酸性塩化土類泉で、水虫、湿疹など皮膚病をはじめさまざまな効能がありそうで、何よりも硫化水素の匂いが強烈なのです。金属はすぐに腐食してしまうといいます。成分分析表がなかったので不明ですが、PHも2.0の強酸性ではないでしょうか。
浴室の一番奥にドドーンと大きくてシンプルな浴槽があり、こちらは混浴になっていました。誰も入っていないのを確認してから奥に向かいます。
大きな浴槽に、打たせ湯風に上からドボドボとお湯が落ちてくるのです。窓も開け放っているので開放感たっぷり。ひとり占めで気持ちのいいこと。肌がつるつるすべすべになるお湯です。
夕食は玄関先にある食堂でいただきました。宿はこの時期、登山客、そして湯治客が多いそうです。
料理は特別なものではありません。家庭料理が並びます。でも野菜も刺身も新鮮で、チキンカツもアツアツ。お母さんの手料理という味わいで、おいしくいただきました。
朝食もごはん山盛り。しっかりいただいてから最後にもういちど温泉に浸かり、岩木山を後にしました。のんびりと気持ちの和らぐ旅でした。
[All Photos by Masato Abe]
Masato Abe 還暦特派員
大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。
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