丸亀城 (C) Shutterstock.com
30m以上が「深井戸」
香川県丸亀市にある日本一深い井戸 写真提供:丸亀市観光協会
「井戸」といわれたら、一般的にどのくらいの深さがあると思いますか?
井戸といえば村上春樹さんの作品『ねじまき鳥クロニクル』で主人公が井戸を降りる描写がありますし、司馬遼太郎さんの作品『夏草の賦』で土佐の覇者・長曾我部元親が籠城する相手を落とそうと城内の井戸に砂金(毒)をまく戦国時代のシーンの描写もあります。
しかし、現代人の生活に井戸は縁遠く、想像もつかないのではないでしょうか?
井戸工事を手掛けるタシマボーリングの公式ホームページによると、
<一般的に深さが30m未満の井戸を「浅井戸」、30m以上を「深井戸」と言います。>(同社ホームページより引用)
とあります。例えば信号機の高さは5m程度。大人のキリンの身長も同じくらいです。そう考えるとなかなかの深さですよね。
仮に30メートルの深さの井戸に水が満ちていて底まで潜ろうとしたら、学校の25mプールを端から端まで息継ぎせずに泳ぎ切るくらい静かで息苦しい時間が続きます。しかも、直下に潜るために浮力との戦いもあり、底までついてもプールと違って息継ぎができないために、帰ってくる余力を残さなければいけません。
想像するほどに、深井戸とはかなりの深さがあるとわかりますよね?
深さ約65mの井戸
丸亀市のまち並み (C) Shutterstock.com
30m以上あれば深井戸と呼ばれる井戸の世界で、その倍以上の深さを誇る「日本一深い」井戸が実は香川県にあります。うどんで有名な香川県北西部にある丸亀市です。
丸亀といえば、金刀比羅宮(ことひらぐう)参拝の船着き場としてもかつて知られた場所です。城好きにはたまらない石垣の名城・丸亀城もあり、同城跡には国の重要文化財に指定される天守も現存します。
写真提供:丸亀市観光協会
この敷地内の一角に日本一深いといわれる井戸があります。
現地にある立て看板の解説によれば、深さは36間(約65m)、直径は1間(1.8m)。自然の小山を利用した日本一高い石垣の上に築かれた丸亀城の中でも最も標高がある二の丸広場に井戸があります。
井戸自体の深さ自体は65mで、その中には水深30mの水がたまっているのだとか。丸亀市観光協会の担当者によると、 この井戸の深さ65mという数字は、 丸亀市立資料館に所蔵されている絵図に合わせて算出したそうで す。 一方で水深30mに関しては、文化財保存活用課の担当者が実際に測 ったみたいですね。
大江戸線の六本木駅より深い
転落防止のために金網が張られている 写真提供:丸亀市観光協会
この深さはどのくらいなのか『小学館の図鑑 NEO+もっとくらべる図鑑』(小学館)を頼りに比較してみました。
例えば東京にある日本一深い地下鉄の駅・都営地下鉄の大江戸線六本木駅の深さ(42.3m)を超えています。あの長大なエスカレータ―を降りていく六本木駅よりもさらに深いのですね。トルコにあるカッパドキアの地下都市(50~60m)よりもちょっと深く、東京湾アクアラインの海底トンネル(60m)の深さとほぼ等しくなります。
これだけ深く水が豊かな井戸があれば、丸亀城は籠城戦でもしぶとく生きられそうですよね。
もちろんですが、丸亀城の井戸は周りに柵もなく自由に見学できます。昼間にのぞくと、時間帯によっては水面に光が反射して見えるとの情報もあります(落下防止用の金網があるので安心を)。
さらにその下には六本木駅よりも深い世界がつながっているのですから、身震いが来ますよね。
丸亀市観光協会の担当者によれば、全国の井戸にありがちな殺人の逸話も、やはりこの井戸には残っているとの話。
「石垣を築いた羽坂重三郎が石垣を簡単に登ったのを殿様が見て、敵に通じるのを恐れ、井戸底の調査を命じ、中に入ったところに石を投げ入れ殺したという悲しい伝説が残っています」
新型コロナウイルス感染症が終息して実際に訪れるタイミングになったらあらためて逸話を調べ、雰囲気を高めてから見学してみてくださいね。
[参考]
※ 丸亀城 ※ 丸亀城天守 – 文化遺産オンライン
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
【2024年開運】香川県のパワースポット3選!金運上昇、弘法大師生誕の地
Jan 2nd, 2024 | 青山 沙羅
【2024年1月2日更新】2024年こそ、パワースポットのよい運気をいただき、人生に立ち向かう勇気を養いたいものです。日本全国にあるパワースポットで、災いを退け、健康運や金運、仕事運を上げましょう。北海道から沖縄まで、47都道府県のパワースポットをご紹介します。今回は徳島県です。今回は香川県です。
【日本の不思議スポット11】浦島太郎にまつわるスポットの多い「荘内半島」
Jul 26th, 2023 | あやみ
日本各地に残る「浦島太郎伝説」ですが、そのなかでも浦島太郎にまつわるスポットが数多く残っているのが香川県の「荘内半島」です。かつては荘内半島にある大浜・積・生里・箱・香田・粟島・志々島を総称し、「浦島」と呼ばれていました。そこで今回は、荘内半島に伝わる浦島太郎伝説にフォーカス。この物語の教えにも迫ります。
【日本三大うどん】香川「讃岐」・秋田「稲庭」、もうひとつは?
Jan 20th, 2023 | あやみ
寒いシーズンは、温かいうどんが恋しくなりますね。また、気温が上昇し、暖かくなると冷たいうどんを食べてクールダウンしたくなるものです。そんなうどんは、日本のソウルフードのひとつ。トッピング次第でアレンジ無限大なのも魅力です。さて、「日本三大うどん」といわれているのは、香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」、あともうひとつは何でしょうか?
小豆島の寒霞渓にある通称「1億円トイレ」とは?【編集部ブログ】
Sep 18th, 2022 | TABIZINE編集部ブログ
世界でも最先端とされる日本のトイレ。自動的に便器を除菌や泡洗浄したり、脱臭機能、抗菌機能、自動でフタが開く機能、公衆トイレで空室がわかる機能など日々進化しています。今回ご紹介するのは、香川県・小豆島の寒霞渓で出会った通称「1億円トイレ」。ここ数十年の日本のトイレの進化を痛感するきっかけになりました。
続々誕生している車中泊場所「RVパーク」ってどこにあるの?6・7月新規オ
Aug 20th, 2022 | Mayumi.W
車の中で寝泊まりをする車中泊。安く自由に旅ができて気軽とも思える車中泊ですが、日本ではまだなかなか浸透しているとは言えません。そんな中、安心して車中泊を楽しめる場所「RVパーク」が続々誕生しています。今回は、全国に広がりつつある車中泊スポット「RVパーク」をご紹介。「RVパーク」を知れば、旅の選択肢がもっと広がるかも!
【離島暮らしのリアル】住んだからこそわかる「直島」の魅力!直島移住はじめ
Aug 18th, 2022 | TABIZINE編集部
あなたは「離島に住む」ことを考えたことはありますか? フェリーで島を訪れ、観光したとき「こんなところに住めたら素敵だな。でも不便かも……」と思ったことがあるかもしれません。美術館やかぼちゃアートだけではない、住んだからこそわかる直島の魅力や、町の様子、離島生活ならではの苦労など、知られざる「離島生活のリアル」。現地からお伝えしたTABIZINEライター春奈の連載をまとめてご紹介します。
【実は日本が世界一】もっとも狭い「海峡」は瀬戸内海の島の間にあった
Jun 8th, 2022 | 坂本正敬
意外な世界一を紹介するTABZINEの連載。今回は、人気の観光地である香川県・小豆島にある世界一を紹介します。
【実はこれが日本一】広さはバチカン市国の3倍!日本最古のため池が香川県に
Jan 4th, 2022 | 坂本正敬
日本には、いろいろな日本一があります。意外な例を取り上げてTABIZINEでは紹介していますが、今回の日本一は「ため池」。簡単に言えば人工の池で、田畑に水を供給して潤す目的を持っています。関東圏の人は実物のため池にあまり縁がないかもしれませんが、中国地方や四国地方にはたくさんあります。中でも香川県にあるため池は日本一の大きさを誇るのです。
【香川の難読地名】亀水、久米氏、生野・・・いくつ読めますか?
Oct 23rd, 2021 | 内野 チエ
日本各地には、なかなか読めない難しい地名が多数存在します。地域の言葉や歴史に由来しているものなど、さまざまですが、中には県外の人はもちろん、地元の人でもわからないというものも。今回は香川県の難読地名を紹介します。あなたはいくつ読めますか?
【実はこれが日本一】地下鉄・大江戸線の六本木駅より深い!日本一深い井戸は
Jul 29th, 2021 | 坂本正敬
意外な日本一を紹介するTABIZINEの連載。これまで日本一深い洞窟や、日本一高い場所にある駅を紹介してきましたが、今回は日本一深い井戸です。