関西圏で知られるたこ焼き器のトップメーカー「山岡金属工業」
「ヤマキンのたこ焼き器」 と言われて関東でピンと来る人は、ほとんどいないのではないでしょうか。「ヤマキン」とは、山岡金属工業(大阪府)の略称で、関西圏で知られるたこ焼き器のトップメーカー です。
総務省によると、お好み焼・焼きそば・たこ焼店がもっとも多い都道府県ランキングで、兵庫・大阪・京都・和歌山・奈良がトップ10にランクインしています。関西圏と密接な関係を持つ岡山、四国の徳島も入っています。
人口1,000人当たりの都道府県別事業所数で考えると、広島県が第1位になりますが、単純な事業所数で言えば大阪と兵庫が1位と2位です。
そんな粉ものグルメが浸透する関西で「1家に1台たこ焼き器がある」とまで言われるくらい、たこ焼き器を普及させたトップぺーカーが「ヤマキン」=山岡金属工業なのですね。
累計で4,000万台を生産してきた「ヤマキン」
毎日新聞経済部の『増補版 日本の技術は世界一』(新潮社)という本が筆者の手元にあります。
同書の中で山岡金属工業が紹介されていて、同社が1959年(昭和34年)に家庭用たこ焼き器を売り始めたと書かれています。本の発行年である2003年(平成15年)の時点で、累計4,000万台を生産 してきたとも書かれています。
日本経済新聞によると、ヤマキンのたこ焼き器の販売先は9割が関西だといいます。要は4,000万台以上のたこ焼き器を、ほぼ関西で売ってきたのですね。
同社の現会長にインタビューしたブログ記事によれば、発売後のシェアはほぼ100%、ガスを使った家庭用たこ焼き器では今でもシェア90% を誇るようです。
関東の人にはちょっとしたカルチャーショックだと思いますが、ヤマキンのたこ焼き器は、ガス用ゴム管をガス栓に接続して使います。
カセットボンベや電源コードで使う「やわ」な卓上たこ焼き器ではありません。なんだか本場といった感じがしますよね。
関西圏における「たこ焼き器」の普及に大きな役割を果たしてきた
とはいえ、もともと山岡金属工業は、子どものおもちゃ感覚でたこ焼き器を出したことが知られています。
<大企業がやらない隙間商品を狙っていくしかない。人生と経営は同じ。楽しく愉快に> (毎日新聞経済部『増補版 日本の技術は世界一』より引用)
との現会長の言葉からもわかるように、親しみ深いコテコテの大阪企業らしく、楽しさや遊び心が根底にあったみたいです。
たこ焼き器に「たこ焼きパーティー券」やたこ焼き屋ののれんを付属品で入れたり、たこ焼きのおいしいつくり方を紹介する「ヤマキンのたこ焼きごっこ新聞」を作成したり、社内ミュージアム『夢工房』の中に「タコ焼きミュージアム」をつくったりして、関西圏におけるたこ焼き器の普及に大きな役割を果たしてきました。
たまにしかたこ焼きを食べない関東の人がたこ焼き器を買う場合、カセットボンベを使うタイプやコードで電源を取るタイプの卓上たこ焼き器を選ぶのが一般的だと思います。
それでも本場の雰囲気を自宅でも再現したいとなったら、ヤマキンのたこ焼き器を買って、ガス用ゴム管をキッチンでつなぎ、料理感覚でがんがん焼くスタイルも新鮮で楽しめるかもしれませんね。
[参考]
※ 企業情報 – 山岡金属工業株式会社
※ たこ焼き器メーカーがオシャレに? 北欧風コンロでグッドデザイン賞 (1/3ページ) – SankeiBiz
※ 関西人の心の味 どう浸透?(とことんサーチ)こなもん、おやつから進化 こむぎ産地に近く なっとくの美味 探求 – 日本経済新聞
※ ランキングでみた産業別・地域別の経済活動-平成28年経済センサス‐活動調査結果から- – 総務省統計局
※ ミュージアム夢工房 – 山岡金属工業ミュージアム夢工房
※ 家庭に“たこ焼き器”を普及させた会社
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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