鉄道の線路に大量の石があるのはなぜ?【トリビア】
日本一の急坂路線
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皆さん、坂道を上る列車に乗った記憶はありますか?
鉄のレールの上を鉄の車輪で走る鉄道は、ゴム製のタイヤと比べて車輪の変形が少なく、摩擦も少ないという特徴があります。そのため少ない動力で推進力を得られますが、その半面、車輪と線路の接点が少ないので、上り坂が苦手という弱点もあるのだとか。
例えば、角度が2度の坂道でも、電車には急な坂道になるようです。しかし、日本には約4.6度の坂道、言い換えると、最大で80‰(パーミル)、1,000m進めば80mの高低差が生まれる路線もあります。
そんな、100m進めば8mの高低差が生まれる日本一の路線が首都圏にあるのですが、何線だかわかりますか? 答えは、「箱根登山鉄道鉄道線」です。
すべての車両・車軸にモーターがある
箱根登山鉄道鉄道線、一般的には箱根登山鉄道と呼ばれる路線は、箱根山中にある人気の温泉地、箱根温泉に遊びに行く時に、とても便利です。
小田原駅からスタートし、終点の強羅駅まで445mの標高差を移動する間に、湯本・塔ノ沢・小涌谷など、さまざまな温泉地を通ります。
この山の斜面を走る箱根登山鉄道は、ほかの鉄道と違って、特別な仕掛けがあれこれ施されているのです。例えば、すべての車両・すべての車軸に備えられたモーターによって駆動力を分散させ、傾斜がきつくても車輪が鉄の線路の上ですべらないように工夫されているのだとか。
もちろん、上り坂だけでなく下り坂に対応する特別装備もあって、通常は車輪に押し付けるブレーキをレールに直接押し付け、急な下り坂でも止まれるようにしているのです。
箱根登山鉄道には歯を刻んだレールがない
実は、箱根登山鉄道よりも急な傾斜(90‰)を進む路線もあります。静岡県の大井川鐵道井川線のアプトいちしろ駅・長島ダム駅間です。
しかし、大井川鐵道井川線の場合はアプト式鉄道。通常の2本のレールに加え、歯を刻んだレール(ラックレール)を設置し、車両の歯車とかみ合わせて、すべらないようにするタイプなのです。
<【アプト式鉄道】急坂を上下する時、すべりを防ぐため軌道の中央に歯を刻んだレール(ラックレール)を設置し、車両に取り付けた歯車とかみ合わせて滑りを防ぐ>(岩波書店『広辞苑』より引用)
今回紹介した箱根登山鉄道は、私たちが日常的に見る線路と同じで、アプト式ではありません。車両にこそ特別な仕様が施されていますが、日本一急な斜面を走る鉄道路線と考えて間違いないのです。
[参考]
※ 登山鉄道 の科学 – 日テレ
※ 箱根登山鉄道・日本一の急勾配(80‰) – ニッポン旅マガジン
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