吉備高原の山あいに、かつて銅山町として発展した吹屋ふるさと村があります。場所は岡山県西部の高梁市内ですが、不安を覚えるほど市街地から離れており、自家用車で行くかツアーに参加するかしないと、まず行く機会はないでしょう。
しかし現地に足を踏み入れると、その童話のような美しさに茫然となります。
国内唯一のベンガラ生産地の栄華を偲んで
印象的な赤銅色はベンガラと呼ばれる赤い着色剤です。本来は陶器や漆器の赤色を出すために使われるのですが、防虫、防腐、防錆効果もあるため、そしてなによりその色合いの美しさから、建物の塗装に使われたようです。もちろんたいへん稀な例です。
吹屋は国内唯一のベンガラ生産地だったそうで、不便な立地にも関わらず、かなりの栄華を誇ったことが伺えます。
しかし、現在は過疎化が進んでひっそりとしています。
そのわびしさが、タイムスリップしたかのような不思議な感覚に浸らせてくれるのです。
なによりエキゾチック
全国各地に宿場町の町並みが保存されています。しかし吹屋のそれは、レトロというのとは若干ちがいます。なによりエキゾチックです。この町並みは、吹屋の旦那衆が石州(現在の島根県)から宮大工の棟梁たちを招き、統一感のある景観をつくりだしたのだそうです。
国内観光の穴場?
ギリシャやイタリアなどに行くと、町中が同じ色合いで統一された街並みがありますが、日本にも同じような街並みがあるとは思いませんでした。
決してメジャーな観光地ではありませんが、覚えておいて損のない場所のひとつです。
[All photos by Dambala Tell-Kaz]