【1日目】駅を降りれば、非日常が広がります
JR高崎駅から吾妻線に乗り換え、揺られること約1時間15分。下車駅は「川原湯温泉」駅です。ICカードが使えず、さらには無人駅ということで、旅の気分が盛り上がります!
・・・が、ICカードを使用してしまった場合、別の有人駅での精算が必要になるため、JRに乗車する駅で切符を購入することをオススメします。
外に出た瞬間、緑、緑、緑!鳥たちのにぎやかなさえずりも響き渡ります。
面倒なこと一切ナシでバーベキューが楽しめる!
到着していきなりですが、“ここでしかできない体験”をさっそくしたいと思います。向かう先は、「川原湯温泉あそびの基地NOA」(以下、NOA)。駅からなんと徒歩1分で到着です。
ここで楽しむのは、バーベキュー!買い出しの準備や片付け、さらには重たい食材など、そもそもハードルの高いバーベキューですが、NOAなら手ぶらでOK。目の前に広がる「八ッ場あがつま湖」の素敵な景色を眺めながら、お肉はもちろん野菜やソースまで、こだわりの食材を味わうことができるのです。旅先で、手ぶらでバーベキュー素敵な景色付き・・・って最高じゃないですか?
「バーベキューだからこそ、豪快なお肉を食べてほしい」という想いから、お肉は塊で一人前300g。専用のグリルでお肉を焼き上げるので食感は柔らかく、旨みをギュッと閉じ込めます。また、炭で焼くのとは違って煙も出ず、洋服にニオイがつかないのもうれしいですよね。
さらに豪快なのが、丸ごと焼き上げる野菜たち!真っ黒になったこの玉ねぎには衝撃を受け、一瞬不安になりますが・・・。
中身はこの通り!トロッとやわらかくジューシー。口の中には強い甘みが広がります。
きのこの風味や香りがたまらないアヒージョやクリームスープ、スパイシーなチョリソーなど、地元のおいしい食材が並びます。
ドリンクもソフトドリンク、アルコールとも飲み放題や単品でも購入が可能です。バーベキューメニューもいろいろ選べて、もちろん場所利用だけでもOK。スタッフさんは皆バーベキューのプロなので、焼き方はもちろん困ったことはなんでも質問してみれば、より楽しい時間になりますよ。
NOAにはバーベキューのほか、キャンプや源泉かけ流しの日帰り温泉「笹湯」、「笹湯カフェ」などもあります。薪風呂やテントサウナ、カヤック、カヌー、SUPといったアクティビティーもできるので、まずはHPを確認して、「やってみたい!」とピンときたことにチャンレンジしてみては!?
住所:群馬県吾妻郡長野原町大字川原湯223-5
電話:0279-82-5250
定休日:月曜・月曜が祝日の場合営業
【バーベキュー・食材付きプラン】
料金:1dayプランB 4,400円
BBQサイトはコチラ!
レンタサイクルで快適な移動を!
おなかもいっぱいになったところで、観光へ出かけます。NOAには、周辺観光案内や地域情報を提供する「ら♪ら♪らステーション」が入っており、ここでは電動自転車のレンタルができます。
実は、この地域には路線バスが通っていないため、移動は基本、車かタクシー、もしくは徒歩かレンタサイクル。自転車があるとかなり快適です。
さっそく自転車を走らせると、数分で「不動大橋」に到着。目の前に広がる景色は、都心では絶対に体感できない開放感。爽やかな風を受けながら、自分だけの特別な景色と時間が流れます。その爽快さは、日常の嫌なことが一気に吹き飛ぶほど!
貸出場所:川原湯温泉あそびの基地NOA、道の駅 八ッ場ふるさと館
貸出時間:10:00〜16:30
利用料金:2時間まで1,000円 ※延長料金 1時間500円(上限1,000円)、1日2,000円
八ッ場ダムのおかげで知ることができた江戸の暮らし
自転車を走らせること、約13分。スタイリッシュな建物が出てきます。次の目的地は、「やんば天明泥流ミュージアム」。こちらは江戸時代後期の天明3年(1783年)、群馬県と長野県の県境にある浅間山の大噴火により発生した「天明泥流」の被害の全貌や、飲み込まれてしまったこの地域の暮らしを知ることができるミュージアムです。
このミュージアムが出来あがったのも、八ッ場ダムと密接な関係があります。というのも、ダム建設工事に伴い26年もの長い間大規模な発掘調査が行われ、なんと縄文から江戸時代までの遺跡が見つかったのだとか!その中でも特に、「天明泥流」の際に埋まってしまった村落が広範囲に見つかったのです。
その当時の暮らしや、浅間山大噴火から村が「天明泥流」という自然災害に襲われるストーリーを、実際に見て体感できるのが、この「天明泥流体感シアター」。まるで飛び出してくるかのような大迫力の大画面で、当時の村民の恐怖がひしひしと伝わってきます。
「天明泥流展示室」では、その映像と重なるかのように、さまざまな展示物が並んでいます。
展示物は、「ついさっきまで暮らしがあった」と思えるほど生々しく、きれいな状態で見つかっています。
この桶の中を覗いてみると、なんと梅干しの種が残っています。
こちらの茶釜の中には茶葉が残っています。いかに、着の身着のまま逃げたのかが想像できますよね。この茶葉自体も貴重な実物資料なのだとか。
また、調理器具や食器、女性が使用する鏡や櫛、お歯黒など、見つかったものからうかがえる江戸時代の人々の暮らしは、我々の想像よりも豊か。年中行事や趣味などで彩られ、毎日を忙しく過ごしていたようです。
八ッ場ダムが建設されなければ、知ることもできなかったこの事実。自然災害が多発している現在とも、どこかリンクしているようで、「昔のこと」と一言では片付けられない興味深いミュージアムとなっています。
また、同じ敷地内には、「長野原町立第一小学校旧校舎」が併設されており、八ッ場ダム建設により水没してしまった地から一部を移築し保存しています。
群馬県民なら誰もが知っているという「上毛かるた」の生みの親・浦野匡彦さんがこの小学校の卒業生ということもあり、校内には上毛かるたに関する展示がされています。そして、まるでタイムスリップしたかのような懐かしい風景が広がります。
住所:群馬県吾妻郡長野原町林1463-3
電話:0279-82-5150
開館時間:9:00〜16:30(最終入館16:00)
休館日:水曜日
※水曜日が祝日・振替休日の場合は、その翌日
※年末年始
入場料:一般600円、小・中学生400円
※町民無料
HP:https://www.town.naganohara.gunma.jp/www/yamba-museum/
「道の駅 八ッ場ふるさと館」でお土産タイム
不動大橋の近くには、車や人がたくさん行き来しているにぎやかな場所があります。こちらは、「道の駅 八ッ場ふるさと館」。
お土産はもちろん、地元の新鮮な野菜など、さまざまな商品を販売しています。
「八ッ場ダムカレー」といったユニークなメニューのある食堂や、焼きたてパンが人気のコンビニ「Yショップ」などもあります。個性あふれるオリジナルパンが多数あり、早々に売り切れてしまう商品もあるのだとか。
また、「道の駅 八ッ場ふるさと館」は、景色もよく足湯もあるため、休憩にもぴったりの場所です。
小さなお宿で癒やしの時間を
自転車を返却し、日が暮れる前にお宿へ向いたいと思います。この日のお宿は、八ッ場ダム建設に伴い代替地に移転したという「やまた旅館」です。
玄関を開けると、ふんわりと硫黄の香りが鼻をかすめます。
客室は、和モダンのどこか懐かしい雰囲気。
窓からの広がる景色もこの通り!
とてもきれいで落ち着くため、一度座ったら最後。すぐにくつろぎモードにスイッチが入ってしまいます。
さらに癒やされようと、夕食の前に温泉へ!今回筆者が入った温泉はこちら。少し狭いタイプだそうで、今回特別に隣の広いタイプの温泉も見せていただきました。
実は、チェックインの際に「温泉はすごく熱いので、お水を入れて温度を下げてから入ってくださいね」という一言があり、熱いお湯好きの筆者はとても楽しみにしていました。身体を洗い、ワクワクしながらそっと手を入れてみると衝撃的な熱さ!静かにお水の蛇口をマックスまで開いたのでした・・・。
それもそのはず、「やまた旅館」の温泉は加水なしの源泉かけ流し。自分で好みの温度を調整できるのも初めての経験で、なんとも楽しいものです。温度を調整している間、壁を見てみると陶器が埋め込まれていました。これはご主人による手作りなのだとか。浴槽にある段差を利用して腰まで浸かってみたり、ちょうどいい温度になったら思いっきり肩まで浸かったりと、なんとも気持ちのよい時間が流れます。
朝から重い荷物を持ちながらあちこち動き回ったため、疲れがスッと抜けていくような感覚を覚えました。そして、部屋に戻ると汗が止まらず、ずっとポカポカなのにも驚きました。
「やまた旅館」で温泉ともに楽しみにしていたのが、このお料理。自家菜園の新鮮な野菜を使用しているそうです。
グラタンからは、バジルの香りが漂ってきたり、ごま豆腐の薬味がハーブだったりと、素朴なお料理の中に個性が光ります。
中でもそのおいしさに驚いたのが、この天ぷら。サクッとした食感とともに、ハーブや山菜、野草など、それぞれ独特の苦味や風味が口に広がります。
シメには手打ちの蕎麦まで!野菜やハーブ、山菜などがお料理の主役になるなんて知りませんでした。品数もたっぷりで、大満足の夕食でした。
また、朝食もこの贅沢さ。ひとつひとつの味付けがとてもおいしく、このお赤飯もふっくらモチモチ。この味がいまだ忘れられません。
そして、出てきた瞬間、思わず声が出てしまったこのデザートとハーブティー。朝からこんなにいい気分になったのは久しぶりです。すっかり元気になり、長野原町での2日目がスタートしました。
【2日目】いざ!「八ッ場ダム」へ
2日目の朝はいよいよ「八ッ場ダム」へ向います。「やまた旅館」からは徒歩10分程度とのことで、朝の散歩も兼ねて歩いていくと・・・出てきました「八ッ場ダム」。ただの道のように見えますが、視線を少しずらせばこの迫力!
ゴウゴウと音を立てて勢いよく水が落ちていく様子は、ずっと見ていても飽きないほど不思議な魅力があります。
また、反対側はウソのように穏やか・・・。この差がたまりません。
「八ッ場ダム」では堤体上を左右自由に歩けるため、一方側からだけではなく自分の好きな場所から眺めることがきます。歩きながらいろいろな角度から見ていると、「あれ!?下に人がいる・・・!?」
そうなんです。堤体上を行き来するだけではなく、多目的エレベーターが一般公開されたため、その下まで行き、より迫力あるダムの姿を見ることができるのです。
エレベーターでダム下まで降りると、先ほどまでは遠くにあった赤い橋が目の前に。
上から見ていたよりもっと大きな音を立てて飛び出していく水は、興奮するほどの勢い。その迫力と、激しく揺れる水面を見ているだけでもなんだか爽快な気分になります。
その先、少し足を伸ばせば、「八ッ場ダム」全体を見渡せたり、「吾妻峡」の神秘的な景色を楽しんだりと、左右、前後と絶景だらけなのです!
住所:群馬県吾妻郡長野原町川原畑
営業時間:10:00~16:30
八ッ場ダムをもっと知る
迫力あるダムと美しい景色を堪能したら、もっとダムを深く知ることができる「なるほど!やんば資料館」へ。
ここでは、紆余曲折を経て完成した「八ッ場ダム」の歴史やその役割、住民の方々の苦悩、そして現在、何の不自由もなく水を使うことができる“ありがたみ”をより深く感じることができます。知ることにより、さっきまでとはまた少し違った気持ちでダムを眺めることができます。
住所:群馬県吾妻郡長野原町大字川原畑1121-31 八ッ場ダム管理支所内
開館時間:10:00〜16:00
入館料:無料
HP:https://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/tonedamu00572.html
八ッ場ダムへ来たのなら!
ダムや景色を楽しみ、そして学んだあとは、おなかを満たしたくなりますよね。「なるほど!やんば資料館」のすぐそばには、「やんば茶屋」もあります。たくさんのお土産が並ぶその奥にレストランがあり、数量限定の「やんば茶屋ダムカレー」などのお食事をはじめ、ケーキやコーヒーといった休憩のお供にぴったりなメニューを取りそろえています。
そんな中、ついじっくりと読んでしまったこの一枚のチラシ。“スープまで飲み干したくなるほどの上州ラーメン・・・”。これは食べずにはいられません!
ラーメンは、醤油、塩、とんこつの3種類。そこに「味玉」をトッピングしたメニューや、「味玉」+「チャーシュー」を増量したメニューがあります。写真を見る限りどれもおいしそうで、悩みに悩んだ挙げ句、一番オススメという「味玉とんこつチャーシュー増量」を注文しました。
テーブルにはこの文言が。なんとも楽しみです!
運ばれてきたラーメンは、洗練された雰囲気。食感の良い中太麺とともに口の中に入ってきたスープは、臭みもなく体中に旨みが染み渡ります。
上州豚を使用したというチャーシューは、まるで生ハムのよう。程よい脂身を感じながらも後味はさっぱり。鶏チャーシューは柔らかくジューシー!「観光地のラーメン・・・と侮るなかれ」その意味がよく理解できました。八ッ場ダムへ来たのであれば、ぜひこのラーメンもお試しを!
価格:1,070円
住所:群馬県吾妻郡長野原町川原畑1121-31
営業時間:10:00~16:00(飲食スペース11:00~)
定休日:水曜日
HP:https://gunma-dc.net/tourism/28784/
旅のクライマックスは、湖へスプラッシュイン!
さて、そろそろ旅も終盤に差し掛かってきました。最後にはこの2日間ずっときれいな姿を見せてくれた「八ッ場あがつま湖」へ、実際入ってみたいと思います。というのも「YAMBAダックツアー」というものがあり、水陸両用バスで湖を遊覧することができるのです。
発着所である「八ッ場湖の駅 丸岩」へ向かうことにしたいと思います。ちなみに、やんば茶屋からこの「八ッ場湖の駅 丸岩」までは、かなりの距離があるため、タクシーを呼ぶか、レンタサイクルを借りていくかどちらかをオススメします。ちなみに、筆者は歩くのが好きなため、とても軽い気持ちで徒歩で行ってみましたが、1時間30分くらいかかってしまい、その途中何度も「自転車に乗ったらどんなに気持ちよかっただろうなぁ」と思ってしまいました。
ようやくついた「八ッ場湖の駅 丸岩」は、クラッシックな外観です。なんと、旧長野原町役場庁舎を再現しているそうで、その一部に旧庁舎の木材を再利用しているのだとか。
中に入ってみると、食堂やお土産物がズラリ。
広場もあり、お茶を飲みながら休憩をしてる人や、走り回って遊ぶ子どもたちの姿が見られました。
受付で水陸両用バスのチケットを購入し、出発時間までしばし休憩していると・・・。
やってきました!長野原町マスコットキャラクターの「にゃがのはら」が描かれた大きなバスが!
乗り込んでみると窓は大きく開いており、爽やかな風がどんどん通り抜けていきます。車高が高いため、普通のバスよりも高い位置からその景色を楽しむことができます。ガイドさんの軽快なアナウンスとともにどんどん進んでいき、いよいよ入水を待つのみ・・・
バシャーンと水しぶきをあげて、大きなバスが湖へ向かう瞬間は、誰もが興奮!車内は大きく盛り上がりました。大自然に囲まれながら過ごしたこの2日間。最後は、湖からの景色を存分に味わいながら、「桜や紅葉、雪景色・・・どの季節のも美しいんだろうなぁ」とあれこれ想像を巡らせながら、今回の旅は無事終了しました。
ダムができたことにより町も整備され、自然の雄大さを生かしながらグルメや観光と、さまざまな体験ができる八ッ場地区。息苦しい毎日が続くコロナ禍の今だからこそ、大自然の中で過ごす旅は贅沢な時間になることでしょう。
乗車料金:大人・3,500円/小学生以下・2,000円/幼児(2歳以下)・500円
電話:080-2489-6600
チケットは、「八ッ場湖の駅 丸岩」「道の駅八ッ場ふるさと館」で発売
HP:http://www.javo-jp.com/works.html
[All Photos by koume]