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夏アートに「和のあかり×百段階段」
1935(昭和10)年に建てられた現存する唯一の木造建築であり、東京都指定有形文化財に指定されている、通称「百段階段」。99段の階段廊下が7つの宴会会場を繋ぎ、各間には当時の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれ、季節ごとに色々な企画展が開催されています。
2022年7月2日(土)〜9月25日(日)まで、「光と影」をテーマにした「和のあかり×百段階段2022~光と影・百物語~」が開催中。日本ならではの感性と光が文化財の空間を温かく彩り、今年は「百段階段の百物語」も展開。妖怪も顔をだすという、夏にぴったりな摩訶不思議なアート展になっています。
~光と影・百物語~の世界を巡ろう
3階の会場フロアで最初に迎えてくれるのは、山口県柳井市の民芸品「柳井金魚ちょうちん祭り」。ユニークな表情の金魚ちょうちんの温かな光が夏祭りのワクワク感を彷彿とさせます。
頭上では、江戸風鈴や鋳物・真鍮風鈴がちりんちりんと音を重ねて涼を運び、幼少期の夏休みにタイムスリップした気分!
「十畝の間」は、木と植物で小さな灯りを創作する照明作家・弦間康仁さんと、かんざし作家・榮さんが共演する“夜の始まり”の空間に。夏の虫の声をBGMに、松明や月明りの影の中に虫か隠れていたり、見えない何者かも此処に遊びに来ていそうで、子どものときの夢現の不思議体験を思い出します。
「暗がりを愉しむ」をテーマにする弦間さん。自宅の庭のたんぽぽや麦、バラの花びらや葉っぱを乾燥させ灯りをともした作品は、植物のもつ生命力が光っているようですね。
ワイヤーで作った輪郭を液体合成樹脂にくぐらせる技法で製作するかんざし。硝子のような輝きと儚さに見とれてしまいます。映画『ホリック xxxHOLiC』でも作品を提供された榮さん。作品を囲む透明ケースに弦間さんの照明が煙のように映りこむと、さらに妖艶な世界観に……。
豪華絢爛な「漁樵の間」は、静岡県を中心に活動する「アカリノワ」の竹あかりで一層豪華に! LED照明は竹を通すことで、眩しくもやわらかな明かりとなり、心震える光景です……。
向かいのガラス戸に反射すると、もう1つの別次元に導かれているような気がします……。
放置竹林による環境問題に向き合い始まった竹あかりアートの竹灯籠は、使用後も竹炭にして田畑の肥料にしたりとリサイクル。人と自然が循環し、共生の道へと繋がっているそうです。
「草丘の間」は、歌舞伎や舞台演劇など舞台衣裳に携わる「松竹衣裳」と、歌舞伎座を拠点に大道具を取り扱う「歌舞伎座舞台」の舞台空間に。歌舞伎の世界に観る[恋の情念]を表現し、男女を表す暖色寒色の番傘から光が透けて艶っぽい舞台です。
蜘蛛の巣のデザインの紗の着物、蜘蛛の巣が張った壁、怪談話で切り離せない井戸などあり、日本の伝統芸能一色。
手作りの井戸の中を覗き込むと背筋ひんやりな体験ができます……。井戸の左端にカメラを置いて、レンズだけをちょっと井戸の中に出して角度をつけて、井戸の中を覗き込みシャッターを押すと……自分と中の人物の写真を上手に撮れます……。
小心者の筆者、大道具さんのリアルな技法に恐怖しました! 他にも、石見神楽の面や妖怪が描かれた江戸風鈴もあるので、じっくり日本の匠の芸を鑑賞しましょう。
「静水の間」は、造形作家・中里繪魯洲さんの『さかさまのあかり』に。部屋の中に入ることも戸惑うほどの閃光と巨大なオブジェ。馬のような頭部で巨人のような体格、明るすぎる白い光故、床の間も格子も近未来的。各所にある水晶の中を覗くと、世界は上下逆さまで、明るいのに怖さを感じ、別の惑星にやってきたような気分です……。
陽気な音楽が流れる廊下には「伊藤権次郎商店×CRAFCULT」の妖怪提灯。福岡県八女市の創業200年以上のちょうちん屋が描く、百物語の妖怪たち。廊下に面した使われていない御手洗いにも妖かしたち。真っ赤な提灯にぼわぁ〜と浮かんで、私たちを笑っているみたいです。
「星光の間」には、造形作家や切り絵作家などいろんなアーティストたちの妖怪がたくさん! ご存じの化け猫や現代版の妖怪など、ついクスリと微笑んでしまう、昔々からの人間の想像力の豊かさが現代にも受け継がれているのを感じるユニークな空間。
少し照明を落とした「清方の間」。幾重にも重なる漆黒の線の美を感じるのは、彫刻家・オオタキヨオさんの作品。影絵が格子造りの線と重なり凛とした空気を漂わせています。
日本画家・園田美穂子さんの水墨画で描く百物語の幽霊画。嫉妬心など複雑な女心を描くだけでなく、尊敬する鏑木清方先生が愛着をもって造ったこの間に調和するようにと、やわらかさも表現したそう。「山川建具」の組子細工の優しい青い光と遠くから届く赤い光に包まれ、怖さの中に温かさがあります。
他にも、炭化彫刻家・ヒョーゴコーイチさんの磨き上げられたスミアート、狐や彼岸花など日本らしい影を映す幻想的な「いろした工房」のガラスランプ、「第一印刷所」の新潟県長岡の花火をモチーフにした「かみはなび」、「ThinKniT®」の美しい曲線で編み上げた3Dニット照明と、様々な陰影の世界を楽しめます。
99段目、最後の「頂上の間」まで上ると、明るく夏の爽やかなアロマの香りが包み込み、今までの長い夜が開けたよう。いけばな・古流かたばみ会の若手華道家「大塚理航」の斬新な生け花が大胆。反物やレース、細い竹を使って躍動感あり開放的です。
藝術家・石井七歩さんの作品名は「血の花の血」。向こう側が透ける赤い模様の着物に、花を活けた御膳。作品名に特に理由はなく、タイトルから受ける既成概念にとらわれず、鑑賞者には自由に感じてほしいとのこと。
若手アーティストの表現する日本美が繊細に溶け込む優しい光の中で、しばしの間、闇夜の余韻に浸りましょう。
音楽もグッズも楽しもう
企画展の音楽を手がけるのは音楽家・ヨダタケシさん。手を触れずに演奏する電子楽器「テルミン」を操り、独特な音色の音楽が各間ごとに変わって訪れる人たちを大いに盛り上げています。また、作家さんのグッズも販売されているのでお土産にも喜ばれそう。
階段を上るごとに夜が深くなり、灯りが照らし、その影では見えない存在も現れるという、幽玄な今昔の夏アート。鑑賞後、あなたのそばにも妖怪がついてきているかもしれませんね……。
●開催期間:2022年7月2日(土)〜9月25日(日)会期中無休
●開催時間:11:30〜18:00(最終入館17:30)/8月20日(土)は17:00まで(最終入館16:30)
●入場チケット代:大人1,500円・学生800円(オンライン販売・当日受付販売)
●問合せ:03-5434-3140(イベント企画10:00〜18:00)
●イベントURL:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/event_h-2
●会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化「百段階段」
●住所:東京都目黒区下目黒1-8-1
●交通:「目黒駅」から徒歩約3分
●HP:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/
[all photos by kurisencho]
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