「動物を見に行く」ことも旅の目的のひとつ
海外の動物保護区にせよ国内の動物園にせよ、「動物を見に行く」というイベントは、立派な旅の目的になってくれますよね。
では、旅の目的として一番見たい動物と聞かれたら、どの動物を挙げますか? 筆者は、シロテテナガザルです。あの変な鳴き声(テリトリーソング)が好きだからです。
海外では、サバンナのサファリ体験に行って、キリンやアフリカゾウ、シマウマを生で眺めてみたいです。カバもいいですね。実は走ると、むちゃくちゃ速くて、絶対に怒らせてはいけない動物の1つだと聞きます。
国内では、上野動物園のジャイアントパンダでしょうか。展示場所はいつも混雑していて、行列しながら順番待ちを余儀なくされるので、結局諦めてしまいます。しかし、これだけ人気なのですから、一目見たい気持ちもやっぱり出てきます。
「世界三大珍獣」はジャイアントパンダ、オカピ、そしてコビトカバ
オカピ
そこで、本題に戻って問題です。何気なく今挙げた動物の中に「世界三大珍獣」と呼ばれる動物が含まれていましたが、おわかりでしょうか?
珍獣の定義を辞書で調べると、
<生息がまれで、数すくない、めずらしいけもの> (『精選版 日本国語大辞典』より引用)
と書かれています。
珍しい動物といえば、やはり行列してまで多くの人が見たいジャイアントパンダですよね。
日本では、このジャイアントパンダを含めたコビトカバ(リベリアカバ)、オカピが「世界三大珍獣」に挙げられています。
発見史が興味深い動物たち
コビトカバ
「日本では」と書いたように、この「世界三大珍獣」という考え方は、日本でしか通じないラインアップのようです。
上野動物園元園長・小宮輝之さんの『動物園ではたらく』(イースト新書Q)によると、1960年(昭和35年)にコビトカバが上野動物園に初めて持ち込まれる際に、動物学者の高島春雄さんが唱えたという起源を持つそうです。
高島さんは『珍しい動物たち:わたしの空想動物園』(社会思想研究会出版部)の冒頭でも、世界三大珍獣であるジャイアントパンダ・コビトカバ・オカピについて記述しています。
コビトカバは、カバの10分の1に満たない(カバと比較すれば)小さな生き物で、オカピについては、キリンに唯一近い種ながら、ウマ類の祖先かと最初は思われていたと百科事典などには書かれています。
世界三大珍獣については、限られた地域に少数しか生息しない上に、発見史が興味深い動物が選定の基準になっています。ジャイアントパンダとオカピについては、どちらも19世紀に、ヨーロッパ人が現地で「毛皮」を発見するところから探究の歴史が始まったそう。
コビトカバについては、同じく19世紀に発見報告があるものの、カバの奇形として扱われていたようです。20世紀に入ってすぐに、ヨーロッパ人が生きた個体を捕獲し、世界的に存在が認められました。
世界三大珍獣はどれも個体数が限られていて、国際自然保護連合(IUCN)により絶滅が危ぶまれています。
それでも、東京の上野動物園では世界三大珍獣を全て見られる状況が整っているようですから、東京とその周辺に住んでいるTABIZINE読者の皆さんは、今週末にでもちょっと出かけて、あらためて眺めてみても楽しいのではないでしょうか。
[参考]
※ 上野動物園に全部いる!通説「世界三大珍獣」とは – Tokyo Metro ※ 『動物園ではたらく』(小宮輝之・著/イースト新書Q) ※ 【いしかわ動物園】夏の特別展「世界三大珍獣」始まる – いしかわおでかけガイド ※ 『珍しい動物たち : わたしの空想動物園』(高島春雄・著/社会思想研究会出版部)
※ 世界三大珍獣「コビトカバ」の新エリア きょうからオープン 神戸どうぶつ王国 – 産経新聞 ※ 動物図鑑 – 東京ズーネット ※ テリトリーソング~よく通る美しい歌声~ – HOKUROKU
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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