【実はこれが日本一】ベンチの脚の長さが違う!ホームの傾きが最大の「大谷駅」

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Jul 25th, 2023

日本一高い山は「富士山」、日本一大きな湖は「琵琶湖」、日本一高いタワーは「東京スカイツリー」など、有名な日本一はいろいろありますが、あまり知られていない、ちょっと意外な日本一を紹介するシリーズ「実はこれが日本一」。今回は日本一、ホームの傾きが激しい駅を紹介します。


城山, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
 


 

軌道建設規程の決まりを逸脱した駅


Hahifuheho, CC0, via Wikimedia Commons

日本には、いろいろな分野で日本一の駅が存在します。今回の日本一は、ちょっと変わった分野で日本一に輝く駅です。その日本一とは、ホームの傾き。

一般的な駅は、あるいは皆さんが普段、利用している駅のホームは、平らな場合が多いのではないでしょうか?

もちろん、山岳鉄道の場合は別です。しかし、普通鉄道の駅に限って言えば、平らなホーム以外を思い浮かべるほうが難しいはず。

その理由として、大正12年(1923年)に公布され、直近では令和4年(2022年)に改正された軌道建設規程(省令、各省の大臣が、自らの主管する行政事務について発する命令)によって、10パーミルよりこう配のある線路を駅のホーム(停車場)に通してはいけないと決められているからです。

10パーミルとは、1,000m進んだら10mの高低差が出るくらいのこう配を意味します。要するに、急こう配に駅はつくらないようにという話ですね。

しかし、京阪電車の京津(けいしん)線には、その決まりから大きく逸脱した、日本一急こう配の駅が存在します。滋賀県から京都府に入る、あるいは京都府から滋賀県に入って間もない逢坂山に存在する駅です。

関東在住者が多いTABIZINEの読者にはかなりの難問だと思いますが、何か思い浮かぶ駅名がありますか?

ホームに設置されたベンチも脚の長さが左右で異なる


日本一急こう配のホームがある駅は、京阪電車京津線の「大谷(おおたに)駅」です。この京津線自体がネタに富んだ路線と言えますが、その沿線上にある大谷駅も話題豊富で、ホームの傾斜が40パーミルになります。

先ほどの軌道建設規程からすれば、かなり型破りな駅ですよね。もちろん、当時の内務大臣(当時は内務省が主管していた)の特別な許可を得てつくった正式の駅です。しかし、ホームに降り立つと視界が斜めに傾くと、京阪電鉄の公式ホームページにも記述があります。

ホームの傾斜がきついため、ホームに設置されたベンチも、脚の長さが左右で異なります。脚の長さを一緒にしてしまえば、体が傾いて座っていられないからですね。

この大谷駅以外にも、神社の参道の目の前を電車が通過していたり、極端なこう配やカーブをやり過ごすために電車が極端に遅く走ったり、スプリンクラーで線路上に水をまいていたり、日本人の手で初めて掘られたトンネルが沿線にあったりと、見どころが尽きない路線です。

この夏の関西旅行で、京都・滋賀間を移動する際には、京阪電鉄の京津線を移動の手段として使いたいですね。移動そのものが、忘れられない旅の思い出になるかもしれませんよ。

[参考]
日本で最も急勾配にある駅 – 日本記録認定協会
湖都から古都へ 鉄の路 – 京阪電車
軌道建設規程(大正十二年内務省・鉄道省令) – e-Gov

[画像:Wikipediaより]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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