【パリの穴場観光とお得旅のコツ】暮らすように旅するパリの一人旅の魅力に迫る|松﨑桃子さんインタビュー

Posted by: しげたまこと

掲載日: Dec 18th, 2025

「フランス人は英語を話さず、プライドが高い」なんて、とっつきにくいイメージを持っていませんか? 実は英語を話すフランス人も多く、観光客にやさしく接してくれることも珍しくないのだとか。2025年9月に『新しいパリでしたい100のこと ガイドブックに載っていないパリひとり旅』を上梓した松﨑桃子さんに、エッフェル塔やルーブル美術館といった定番スポット以外のパリの魅力を伺いました。

チュイルリー公園アイキャッチ2

毎年パリに通い続けて20年!国際都市・パリの魅力とは?

——松﨑さんのパリとの関わりについて教えてください。

松﨑:元々フランスのカルチャーが好きだったこともあり、大学生の頃に初めてパリを観光で訪れました。大学卒業後はパリに留学し、語学学校で2年間フランス語を学び、パリ第八大学に編入する形で進学。大学院まで修了して2005年に帰国しました。

帰国後から現在まで、構成作家としてラジオ番組の制作に関わっています。パリは自分にとって「第二の故郷」のような存在ですね。帰国してから20年ほどたちますが、毎年1〜2回はパリを訪れています。

——パリのどんなところに魅力を感じていますか?

松﨑:パリの魅力は寛容でカオスなところでしょうか。フランスは歴史的に移民を多く受け入れてきた国なので、パリはミックスカルチャーがあふれる街なんです。インド人街やアフリカ人街、アラブ人街と多彩な顔があります。パリは少し歩くだけで世界旅行ができるのでお得ですよ。

夢と希望を持ってやってきた移民たちが、地道に実績を積み上げて繁盛しているレストランがたくさんあります。彼らの故郷を感じる料理を食べるのは好きですね。私もフランスではマイノリティになるので、訛りのあるフランス語を駆使しているスタッフの姿を見ると、彼らに親近感を覚えます。

物価高にも負けずにお得にパリ旅行を楽しむ方法

——物価高や円安で欧州への旅行はどうしても費用が気になります。普段パリに行く時はどのようなルートで向かいますか?

松﨑:直行便でパリに向かうこともありますが、ウクライナ戦争以降、ロシアの上空を通過できないので以前よりフライト時間がかかります。やっぱり乗り継ぎの方が安いので、もし時間に余裕があるならトランジットで向かって、浮いた分を宿泊費に使ってみるのもいいですよね。

中東の空港で乗り換えると、片道のちょうど半分くらいのタイミングで乗り継ぎになります。ドバイやドーハは今バブルなので、空港の施設を楽しみながらリフレッシュできると思います。

トルコで乗り継いだ時は、朝に飛行機を降りて日中はイスタンブール市内を観光し、夜再びフライトに乗るスケジュールでパリに向かったこともありました。もちろん、中華圏や東南アジア経由でもいいと思います。

——現地で食費を抑えるコツはありますか?

松﨑:日本だとあまり身近ではありませんが、安くて早い中華のファーストフード店が意外と多いんです。
クルドサンドイッチ1

クルドサンドイッチ店舗外観
サンドイッチもお腹がいっぱいになるのでおすすめですね。バインミーやクルド・サンドイッチ、シャワルマなど、様々な国のサンドイッチがあるので、各国の特性を感じながら食べ比べてみてはいかがでしょう。

  • バインミー
  • 軽くて食べやすいパンに、肉やなます、パクチーなどをたっぷり挟んだベトナム発祥のサンドイッチ。フランス統治時代に根付いたバゲット文化がベトナム現地の食材と融合して誕生。

  • クルド・サンドイッチ
  • 薄焼きパンに、グリルした肉や野菜、ポテト、ピクルスなどを包んだ中東・クルド地域で親しまれるサンドイッチ。片手でも食べられるので、食べ歩きスタイルにも合う。

  • シャワルマ
  • スパイスでマリネした肉を回転させながら焼き、薄くスライスしてパンに挟む中東発祥のサンドイッチ。日本でよく見るケバブに近いスタイルで、香ばしい肉とスパイスの風味が魅力。

ビオコープ外観

オーガニックスーパー店内
もしステイ先にキッチンがあれば、マルシェやビオスーパー(オーガニックスーパー)で食材を買って自炊するのもいいと思います。フランスは農業大国なので、新鮮な野菜が手に入りやすく、冷凍食品でもおいしいですよ。

ちなみに、フレンチのコース料理は高いので、フランス人でもあまり食べません。日本でも毎日のように天ぷらや懐石料理を食べませんよね。旅行中に毎日コース料理を食べていたら出費はかさむし胃腸も疲れると思います。旅行終盤の記念に行くくらいでちょうどいいのではないでしょうか。

——普段のご宿泊は、どのようなスタイルが多いでしょうか?

松﨑:Airbnbを利用したり、友達の家に泊まったりしています。郊外ならホテルでも1泊1万円くらいで予約できることもあるでしょう。昔は郊外=怖いというイメージがありましたが、治安のよいエリアが増えています。

というのも、郊外の方が自然が豊かで子育てもしやすいので中心部から移住するパリジャンが増えているんです。2024年には地下鉄11号線がパリ東部の「ロニー・ボワ・ペリエ駅」まで延伸し、中心部へのアクセスがよくなりました。2030年までに、15〜18号線が新たに開通予定です。

実は、本を書いた理由の一つが、郊外の魅力を伝えたかったことなんです。元々パリは山手線一周分くらいの規模しかありません。郊外の方がスペースがあるので、広い美術館や新しい文化施設がどんどんできています。

アップデートされたパリを体感できるのはここ!

——今が旬のスポットはどこでしょうか?

松﨑:2019年の火災で被災したノートルダム大聖堂の修繕が終わり、2024年12月8日から一般公開が始まりました。さらに、2025年9月20日から塔の見学も再開しています。新しくなった螺旋階段を登ると、高さ69mからパリの街並みを一望できます。

ノートルダム大聖堂は有名どころですが、塔に登る人は少ないので穴場感がありますし、修繕された塔や鐘を間近で見れますよ。

ノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Paris)
住所: 6 Parvis Notre-Dame – Pl. Jean-Paul II, 75004 Paris
電話番号: +33 1 42 34 56 10
営業時間: 月~金曜日 7:50~19:00(木曜日のみ22:00まで)、土・日曜日 8:15~19:30
定休日: なし
施設URLリンク: https://notredamedeparis.fr/en/

——冬ならではのパリの過ごし方はありますか?
パリ中心部の街並み

クリスマスジーズンのルイヴィトン
松﨑:冬は街全体にイルミネーションが飾られてとにかくキラキラしているので、ホットワインやホットチョコレートを片手に歩くのがおすすめですね。体も温まりますし一石二鳥です。

この時期ならクリスマスマーケットもぜひ。

パリ中心部のチュイルリー公園のクリスマスマーケットは、買い物や食事だけでなく、移動式遊園地もあります。本当にキラキラとした夢のような世界が広がっていて子どもから大人まで楽しめます。

チュイルリー公園クリスマスマーケット
住所: Jardin des Tuileries 113, rue de Rivoli, Paris 1e
電話番号: +33 1 40 20 53 17
開催期間:2025年11月15日(土)〜2026年1月4日(日)
営業時間:11:00〜23:45まで
定休日: なし
施設URLリンク:https://www.paris.fr/evenements/la-patinoire-et-le-marche-de-noel-du-jardin-des-tuileries-77078

チュイルリー公園のスケート場
また、パリの冬の風物詩といえばアイススケート。最近のスケート場は氷ではなく樹脂でできているところもあるので、転んでも痛くないし、びしょびしょになりません。

2025年12月1日から2026年1月4日まで、パリ中心部のショッピングセンター「ギャラリー・ラファイエット・パリ・オスマン」の屋上に、期間限定のスケートリンクがオープンします。エッフェル塔とイルミネーションで飾られた街並みを一望しながらスケートができますよ。

また、1900年に開催されたパリ万博の会場として建てられた「グラン・パレ」に、世界最大の屋内アイススケート場が期間限定でオープンします。ここでは、DJがプレイするダンスミュージックに合わせて夜中までスケートができます。

ブルス・ドゥ・コメルス – ピノー・コレクション 外観

ブルス・ドゥ・コメルス – ピノー・コレクション 内部1

ブルス・ドゥ・コメルス – ピノー・コレクション 内部2
フランスでは、古い建築物の外観をそのままに、内装だけリノベーションするような、アップデート力に長けています。安藤忠雄が手がけた現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」も扉を開けるとまるでタイムスリップしたみたいでコントラストに驚きますよ。

ギャラリー・ラファイエット・パリ・オスマン (Galeries Lafayette Haussmann)
住所: 40 Boulevard Haussmann 75009 Paris Galeries Lafayette
電話番号: +33 1 42 82 34 56 Galeries Lafayette
営業時間(スケートリンク): 月~土曜日 10:30~19:00、日曜日 11:30~19:00
開催期間: 2025年12月1日~2026年1月4日
施設URLリンク: https://haussmann.galerieslafayette.com
グラン・パレ・デ・グラス(Le Grand Palais des Glaces)
住所: 3 avenue du Général Eisenhower 75008 Paris
電話番号: +33 1 44 13 17 17
営業時間: 10:00 – 13:00 14:00 – 19:00 20:00 – 02:00(2025年12月24、31日は19:00閉館)
開催期間:2025年12月14日〜2026年1月7日 (2025年12月17、18日は特別休業日)
施設URLリンク: https://legrandpalaisdesglaces.fr/
ブルス・ドゥ・コメルス – ピノー・コレクション(Bourse de Commerce – Collection Pinault)
住所: 2 rue de Viarmes, 75001 Paris
電話番号: +33 1 55 04 60 60
営業時間: 月・水~日曜日 11:00~19:00、金曜日 11:00~21:00
定休日: 火曜日
施設URLリンク: https://pinaultcollection.com/fr/boursedecommerce

日本人が抱くパリのイメージとのギャップ

——やはりパリでは英語は通じにくいのでしょうか。

松﨑:いえ、パリでは多くの方が英語を話しますよ。日本だと「フランス人は英語を使わない」「英語で話しかけてもフランス語で返される」といったステレオタイプのイメージがありますけど、全然そんなことないです。そもそも観光都市なので、英語を話さないと観光業は成り立たないのではないでしょうか。

ウーバーの運転手も英語を話しますし、お店にフラッと入っても店員さんから英語で話しかけられることも珍しくありません。

——多くの日本人が抱いているイメージとは違いますね。

松﨑:フランス人は冷たい印象があるかもしれませんが、優しいですよ。メトロの階段でスーツケースを持っていたら一緒に運んでくれる人もいますし、ベビーカーを運ぶのを手伝っている姿もよく目にします。優しいかどうかの次元じゃなく、当たり前のこととしてみんなやっています。

それに、いきなり道を聞かれることも珍しくありません。「フランス人」や「観光客」といったくくりで人を選ばず、先入観なく話しかけられます。外国人でもまず「人」として接してもらえる気がしますね。日本人の感覚だと、逆の立場だったら普通話しかけないですよね。

コロナ禍前のことですが、バスに乗っていたら前の座席に座った人がポテトチップスを食べていて、「あなたも食べる?」と話しかけられたことがあってびっくりしました(笑)。

旅をすると自分のことがどんどんわかるようになる

——最後に、パリを一人旅で訪れる魅力について教えてください。

松﨑:パリは、1人で旅行に行っても寂しさを感じる時間もないくらい見所に溢れています。食べたいものを食べて、行きたいところに行けるのが一人旅の醍醐味ですね。

パリに限りませんが、私にとって一人旅は瞑想、あるいはセラピーのような時間。日常から離れることで今この瞬間に意識が向き、集中力が高まります。さらに、自分と対話する時間が増えるので、「私こういうのが好きだったんだ」と自己理解も深まる気がしますね。

だから、世界遺産や美術館巡りは、興味がなければ無理して全てのスポットに行かなくて良いのではないでしょうか。SNSやガイドブックで理想化されたモデルプランから外れて、自分の心に従って1人で街を歩いてみてください。ローカルの人たちと一緒にポテトチップスを食べるような思いもよらぬ出会いがあるかもしれません。

松﨑桃子さんプロフィール写真
<プロフィール>
松﨑桃子
東京都出身。パリ第8大学にて造形芸術を学び、修士課程を修了。現在はラジオ番組の企画・構成を中心に活動し、J-WAVE「JAM TEH PLANET」や「WORLD AIR CURRENT」などを担当。旅を通じて世界各地のカルチャーに触れるのが好きで、最近はアジアへの一人旅がちょっとした楽しみ。

<参考>

『新しいパリでしたい100のこと ガイドブックに載っていないパリひとり旅』(大和書房)

travelist

PROFILE

しげたまこと

Makoto Shigeta ライター

在外教育施設の教員として、タイと中国の日本人学校に通算8年間勤務。2022年に帰国し、ライターとして活動を始める。出身は奄美大島。ついつい気になってしまう旅先は国境と島。

在外教育施設の教員として、タイと中国の日本人学校に通算8年間勤務。2022年に帰国し、ライターとして活動を始める。出身は奄美大島。ついつい気になってしまう旅先は国境と島。

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