【世界三大料理】日本料理でもイタリア料理でもない「トルコ料理」が世界三大料理に入っている理由

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Sep 23rd, 2022

世界を代表するとされるものを3つ取り上げて、「世界三大〇〇」と呼ばれるさまざまなものがありますよね。そこで、どんな事物がそういわれているのか調べてみました。あなたはどれだけ知っているでしょうか? 今回は、世界三大料理について紹介します。


トルコ共和国大使館・文化広報参事官室のプレスリリースより
 


 

どうしてトルコ料理なの?

トルコ・地中海の眺め
「世界三大料理」といえば、どこの国の料理が入っていると思いますか? 英語では「The three greatest cuisines」などと言い、世界の大部分で共通の料理が認識されています。

3つのうち2つはフランス料理と中華料理、そして最後の1枠をトルコ料理が占めています。

日本では、なかなかトルコ料理を食べる機会が少ないと思います。その意味で「なんでトルコ?」と感じてしまいますよね。日本料理が入ってもよさそうですし、イタリア料理が入ってもよさそうです。どうしてトルコ料理なのでしょうか?

オスマン帝国のミッション

オスマン帝国のイメージ
そもそも論として、世界三大料理という言葉をいつから誰が言い始めたのかについてはわかっていないようです。学術的な根拠も証拠も存在しないとの話。

しかし、トルコ料理を知るほどに(味わうほどに)、世界三大料理の1つにトルコ料理が入る意味を多くの人が納得できるはず。

トルコ文化観光省によると、1299年にトルコ人がオスマン帝国をつくるにあたって、アジアのほうからアナトリア(小アジア)に至るまで、長い距離を移動してきたそうです。アナトリアとは、黒海とエーゲ海、地中海に囲まれた西アジアの半島ですね。現在のトルコの国土でもあります。

多種多様な文化的背景をルーツに持つトルコ人は、「飢えた人を食べさせ、貧しい人に服を着させ、荒れたまちを再建し、人口を増やす」といったミッションに新しい土地で取り組まなければいけませんでした。

そこで、オスマン帝国独自の文化が発展していきます。

四季折々の新鮮な食材が類を見ないほどある


トルコ共和国大使館・文化広報参事官室のプレスリリースより

発展した独自文化の中には当然、食文化も含まれていました。

黒海・マルマラ海・エーゲ海・地中海に囲まれ、ボスポラス海峡・ダーダネルス海峡を持つトルコは、内陸部に3,000m級の山々も持つため、各地で気候の特色が異なり、国土全体に他に類を見ないほど四季折々の新鮮な食材が存在します。

また、オスマン帝国の最盛期には、アジア・アフリカ・ヨーロッパに国土を拡大したため、各地の調理法が混ざり合って、さまざまな料理が生まれました。

香辛料の貿易を押さえたり、1,300人のスタッフによる宮廷料理がイスタンブールでつくられたりと、帝国の影響力拡大とともに食文化が豊かになる条件がどんどんそろっていき、豊かな食の土台が築かれていくのですね。

スローフード運動を世界で最も体現する国の1つ


トルコ共和国大使館・文化広報参事官室のプレスリリースより

トルコにはさらに、スローフードの価値観も伝統的に根付いています。

北イタリアのブラで1980年代に始まったスローフード運動を世界で最も体現する国の1つがトルコだと評価されるくらい、トルコでは、地元生産者の食材を日々の料理に使う人たちが多いと知られています。

スローフード運動とはそもそも、有機栽培のブランド野菜やトレーサブルな食品を食べようという話ではありません。ファストフードに対立する考え方で、食の共同体自治が本来の狙いです。

地元でつくられた食べ物を、少し高くても地元の知った人から買う、地元のつくり手を地元の人たちが守り、ひいては、地元の食文化を守るといった食生活全体を見直す運動です。

現代社会の慌ただしい時間軸の中でも、スローフードの価値観が深く根付くトルコでは、地元の食材を使った手間ひまかけた料理が各家庭で食べられているとの話。その家庭料理も各地の地域性を大いに取り込んでいます。主要な農産物の自給率も100%超え。

『ミシュランガイド』に掲載されるレストランの料理のみならず、トルコ人の暮らしに深く根差した食文化全体を意味するからこそ、トルコ料理は世界三大料理に数えられているのですね。

トルコの市場で買い物
John Wreford / Shutterstock.com

筆者はかつて、「味覚は、日本人の最後の砦」と語る人に取材した経験があります。

毎回の食事をショッピングモールのレストランで済ませて味覚を均一化してはいけない、観光立国を目指す面でも、それぞれの地域に根差した食の豊かさを日本人は失ってはいけない、といった趣旨の発言でした。

われわれ日本人もトルコ人に見習って、日本各地で培われてきた郷土の食材と料理の味を、日々大切に味わいたいですね。

[参考]
The Ottoman Cuisine – Ministry of Culture and Tourism
Among The Greatest Cuisines, Turkish Is A Delight – npr
【トルコ共和国大使館・文化広報参事官室】 伝統的なローカルフード ~トルコの「スローフード」  トルコ観光の魅力の一つとして、今秋よりさらにアピール
第8回 宮台 真司 – 水王舎
「世界三大料理」の一角、トルコが本気を出してきた! – 朝日新聞
世界三大料理の認定は何が基準になっているの? – 京都調理師専門学校
トルコの農林水産業概況 – 農林水産省
トルコ国東部黒海地域農村開発事前評価調査団報告書 – 独立行政法人 国際協力機構
HOKUROKUの「考える技術」を読んで人気の建築家が考えた話(アート思考編) HOKUROKU

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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