日本の世界遺産【12】太古の自然崇拝が起源、年間1500万もの人々が訪れる和歌山県「紀伊山地の霊場と参詣道」

 

 

独特な景観と聖山の伝統を反映した文化が息づく「紀伊山地の霊場と参詣道」

太平洋を望む紀伊山地には、太古の自然崇拝を起源とする3霊場｢吉野・大峯」「熊野三山」｢高野山」と、それらを結ぶ「熊野古道」「大峯奥駈道」「高野山町石道」という参詣道があります。6世紀に仏教が伝来して以降、紀伊山地は真言密教などの山岳修行の場になったのです。さらに、9～10世紀には、「神仏習合」思想が広く流布し、聖地として信仰を集めました。

神倉神社

また、10世紀中頃から11世紀代に成立した修験道は、山岳修行により超自然的な能力を獲得することを目的とし、大峰山系の山岳地帯が中心的な修行の場になっていました。同時期に、死後に阿弥陀仏の居所である極楽浄土に往生することを願う｢浄土宗」が庶民に広がり、紀伊山地には仏教諸尊の浄土があると信じられるように。

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標高1,000m～2,000mの山脈が縦横に走り、年間3,000mmを超える降水量を誇る紀伊山地は、独特の地形と深い森林を有しています。それも相まって、この地方の神聖性が重要視されるようになったと考えられています。

そして、これらの独特な景観と、脈々と受け継がれている聖山の伝統を反映した文化的背景が認められ、2004年に世界文化遺産に登録されました。

見どころは？

金剛峯寺

816年に真言密教の根本道場として空海が創建した「金剛峯寺」や、政所として建てられた「慈尊院」、官省符荘の鎮守社として建立された「丹生官省符神社」など117の寺院が密集する「高野山」はぜひ訪れたいスポットです。それぞれが参詣道「高野山町石道」で結ばれています。

なかでも、空海が生前に自ら入定の場所として定めたとされる、転軸・摩尼・楊柳の三山に囲まれた「奥院地区」は必見！ 15世紀以降、あらゆる階層の人々が建立した20万基以上の石造五輪塔が続いていて、神秘的な雰囲気です。空海が現在も深い禅定に入っているとされる「弘法大師御廟」も参拝したいですね。

また、吉野山、吉野水分神社、金峯神社、金峯山寺、吉水神社、大峰山寺で構成される霊場「吉野・大峯」も魅力的なスポット。標高1,100mの山々が続く聖地で、10世紀中頃には、日本第一の霊場として信仰を集めていました。「吉野山」は山肌一面に桜が咲く桜の名所でもあり、吉野水分神社・金峯神社・金峯山寺・吉水神社などを徒歩で回れます。

吉野山は桜だけでなく、夏はアジサイ、秋は紅葉、冬は雪景色と四季折々の景観を楽しめるのも魅力。ゆっくりと時間をかけて吉野山を巡りたいですね。

「熊野古道」として親しまれている熊野参詣道の中でも、峠道が多く、起伏の激しいのが「伊勢路」です。伊勢神宮から、いくつもの険しい峠を越え、熊野三山を詣でるために通った“祈りの道”です。尾鷲市の「八鬼山（やきやま）越え」と呼ばれる道は、伊勢路最大の難所といわれています。江戸時代につくられた石畳が美しい「馬越峠（まごせとうげ）」も一度は行ってみたいですね。

そして、熊野三山に祀られる熊野権現が降臨した聖地と伝えられる「熊野速玉大社（新宮）」も見逃せません。国の天然記念物の巨大なナギの木のほか、1000点を超える国指定文化財を所蔵した熊野神宝館もあり、見どころ盛りだくさんです。

高野山・吉野山・馬越峠・熊野速玉大社への行き方

今回、見どころとしてご紹介した4カ所への行き方は下記の通りです。

高野山

南海高野線「極楽橋駅」下車、南海高野山ケーブルで「高野山駅」へ

吉野山

徒歩：近鉄「吉野駅」から吉野山下千本まで七曲をご利用ください（上り約20分）
ロープウェイ：吉野山ロープウェイ「千本口駅（近鉄吉野駅駅前）」から「吉野山駅（下千本）」へ
バス：近鉄「吉野駅」からバスに乗車「中千本バス操車場（竹林院前）」下車

馬越峠

JR紀勢本線「相賀駅」から徒歩約30分
JR紀勢本線「尾鷲駅」からバスに乗車「鷲毛」下車、徒歩約10分

熊野速玉大社

JRきのくに線 「新宮駅」から徒歩約15分

1,300年余りの歴史を持つ、日本三古湯に数えられる「白浜温泉」

「熊野古道大辺路 富田坂」がある「白浜温泉」は、1,300年余りの歴史を誇る温泉地です。『日本書紀』には、当時の歴代天皇が訪れていたと記されています。雄大な太平洋が間近にせまる露天風呂「崎の湯」、2種類の温泉を楽しめる「牟婁の湯」、白良浜海水浴場に隣接し、窓から真っ白な白良浜と青い海を望める「白良湯」があるほか、足湯も充実。癒やしの時間を過ごせますよ。

写真提供：公益社団法人　和歌山県観光連盟

そんな白浜温泉で味わいたいのが高級魚として知られる「クエ」です。クエは本州中部以南に生息するハタ科の魚で、なかなか漁ることができないため、幻の魚といわれています。しかし、南紀白浜では養殖技術が進み、安定供給が可能に。お造り、鍋はもちろん、創作料理を味わうこともできますよ。

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