気軽な民泊にはトラブルも
ホテルよりも気軽で、現地に住んでいるような気分も味わえる民泊。オンライン予約サイトで予約できるところもあり、価格も手頃に泊まれる物件も少なくありません。そんな民泊ですが、予約したのに実際には存在しなかったり、鍵を受け取れなかったりして、宿泊できなかったといったトラブルも発生しています。予約した民泊物件に泊まれなかった場合の補償などについて、アディーレ法律事務所の佳山亮子弁護士が解説します。
Q. 予約した民泊物件を訪れたが存在しなかった場合、宿泊代金は返してもらえる?
この場合、詐欺に当たりえますので、法律上は返却してもらえますが、実際このようなケースでは、請求先自体が存在せずに現実的に返却してもらうのは難しいです。民泊を利用する際には、その物件が都道府県等に届出をされているかどうかを予約前に確認しましょう。
Q. 予約した民泊物件が存在しなかった場合、損害賠償請求はできる?
損害賠償請求することは難しいです。民泊を利用する場合、平成30年6月15日から施行された民泊に関する法律である住宅宿泊事業法 (以下「民泊新法」 )に基づく届出住宅であることを確認してから予約、利用しましょう。
民泊新法に基づき観光庁長官の登録を受けた「住宅宿泊仲介業者」が運営する予約仲介サイトには、「住宅宿泊事業者」が都道府県知事等に届出をした住宅(以下「届出住宅」)が掲載されることになりますので 、「住宅宿泊仲介業者」が運営する予約仲介サイトにおいて、届出住宅かどうかなどを確認してから、民泊を予約、利用するようにしましょう。
なお、海外に所在する民泊物件については民泊新法の適用は受けません。
Q. オーナーと連絡が取れず鍵を受け取れなかったために宿泊できなかった場合、宿泊代金は返金される?
事前に鍵の受け渡し方法や緊急連絡先を確認したにもかかわらず、鍵が受け取れなかった等の事情があれば、相手に落ち度がありますので、宿泊代金を返金してもらえる可能性はあると思います。
Q. 補償はしてもらえる?
補償してもらうのは難しいです。民泊の場合、鍵の受け渡しが、宿泊当日に現地で電話により案内されたり、マンションに設置しているキーボックスなどから暗証番号で取り出すように指示されたり、さまざまです。鍵の受け渡しがうまくいかず、結局宿泊できなかったというケースもありますので、事前に鍵の受け渡し方法や緊急連絡先を確認しておきましょう。
Q. 宿泊前にキャンセルしたが宿泊料の全額をキャンセル料として請求された場合、拒否できる?
こちらも拒否するのは難しいです。宿泊に必要な料金総額、キャンセル規定などの情報が予約仲介サイトに表示されていたが、消費者が表示を十分に認識することなく予約申し込みをしているケースが多くみられます。予約申し込みする前に、宿泊料金のほか、清掃料金等の宿泊に必要な料金がないか、キャンセル料が宿泊予定日の何日前からいくら発生するのかなどをよく確認しましょう。
民泊のサービスの質はさまざま!十分に確認をしてから利用しよう
平成30年6月15日から、民泊新法が施行され、一定のルールの下で、民泊新法上の「住宅宿泊事業者」等が民泊を事業として行うことができるようになりました。
民泊新法は年間営業日数に制限があるため、年間180日しか民泊を運営できません。しかし基本的な消防設備を設置して、条件さえクリアすれば、民泊の申請が通る点が特徴です。
旅館業法で民泊を始める際は、物件への立入検査がありますが、民泊新法の場合は、書類を揃えて届出を行えば許可が下ります。基本的に都道府県知事へ「住宅宿泊事業届出書」の届出を行うだけで営業可能です。
そのため、届出をされた民泊物件であっても、サービスの質が保証されているわけではない点に注意が必要です。利用の前には予約仲介サイト等で、宿泊に必要な料金総額、キャンセル規定、鍵の受け渡し方法などをよく確認し、納得したうえで民泊を利用するようにしましょう。
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アディーレ法律事務所
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