「白山」は日本では珍しい主峰がない山
白山には主峰がなく、山頂部は2,702mの御前峰(ごぜんがみね)、2,684mの大汝峰(おおなんじみね)、2,677mの剣ヶ峰(けんがみね)の3つの峰からなります。これは日本の山では珍しいことです。実は、これらの峰は形成された年が大きく異なります。一番若い峰が剣ヶ峰(今から約2,900年前)、最も古い峰が大汝峰で、この2つの峰の形成された年は、10万年以上の開きがあるのです。
大汝峰は10~14万年以上前に噴火した古・白山火山が侵食され、丸みのある現在の姿になりました。さらに4~5万年前に新・白山火山が誕生。約4,500年前に山体の頂上部が東の方へ向かって大崩壊を起こし、南北にわたって馬蹄形をした尾根、御前峰が形成されました。そして、この崩壊の後、凹地に現れたのが剣ヶ峰です。
開山1,300年!白山信仰の歴史とは?
白山が信仰の対象となったのは1,300年以上前のこと。
奈良時代に越前国(現在の福井県)の僧である泰澄(たいちょう)が、天空に現れた白山神のお告げを受け、717年に白山に登頂し、修行しました。その際、白山の神々の存在を感じたり、見たりしたそうです。それを機に、白山を遠くから遥拝していた人々が、白山の山頂へ登る登拝という祈りに移行。禅頂と呼ばれる頂上へいたる修行の道「禅定道」が生まれました。
白山山頂にある白山比咩神社の奥宮
3方向から整備された禅定道の起点を馬場といいます。その起点は、現在の「白山比咩神社」「長滝白山神社・白山長瀧寺」「平泉寺白山神社」で、「三馬場」と呼ばれた平安時代末期の頃には、白山信仰の崇敬者たちが集まり、登拝していたそうです。
この禅定道は、現在の白山登山道のもとになっています。当時は神仏習合の時代であり、山岳信仰もあったことから、神と仏が融合しているのも白山信仰の特徴のひとつです。
また、山頂を極楽浄土とした「生まれ清まる」という願いをこめて、還暦や厄落としといった人生の節目に登山する方も出てきたそうです。
自然の神秘と畏怖を感じる! 白山の見どころ5選
ここからは白山および白山付近の見どころを5つ厳選してご紹介します。
石川県有数のパワースポット「白山比咩神社」
鎮座2,000年を超える「白山比咩神社」は、全国に3000社余りある「白山神社」の総本宮で、加賀一ノ宮でもあり、地元の人たちから「しらやまさん」と呼ばれ親しまれています。菊理媛尊(くくりひめのみこと)のほか、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)を祀っており、特に良縁成就や夫婦円満のご利益があるとされています。
境内は白山からの水が川となって流れていたり、樹齢1,000年以上の杉や、あすなろがそびえたりしていて荘厳な雰囲気です。白山へ登る際は、まず白山比咩神社を参拝したいですね。
登山している最中に注目したい「柱状節理」と「丸い石の地層」
登山道からは、白山の火山活動の痕跡を示す「柱状節理」を眺めることができます。中飯場付近から柳谷の対岸斜面を望むと、切り立った岩肌があり、それをよく観察すると、いくつもの柱が束になっていることに気づきます。これは噴出した溶岩が急速に固まり、冷えて収縮し、垂直方向に割れ目ができたものなのです。
また、山頂近くの黒ボコ岩付近には、角張ったところがない丸い石の地層があります。実はこの地層があるエリアは、今から約1億7,000万年前、湖の底だったのです。石は水に流されて転がり、互いにぶつかり合って丸くなりました。そして、造山運動が起きて、湖底が地表に現れたのです。そのため、白山では生物の化石も発見されています。
標高2,450mに位置する白山登山の中心基地「白山室堂」
白山の頂上を目指す登山者のための宿泊施設がある「白山室堂」は、ぜひ立ち寄りたいスポット。宿泊棟は「御前荘」「こざくら荘」「くろゆり荘」のほか、自炊をする方専用の「白山荘」、個室タイプの宿泊棟「白山雷鳥荘」もあります。
食堂と売店がある「白山室堂ビジターセンター」も併設しており、夏には郵便局や診療所も開設されます。周辺にハクサンコザクラやミヤマクロユリなどが咲いているのも魅力です。山頂からご来光を拝むのなら、ぜひ宿泊してみてくださいね。宿泊予約の状況はこちらから確認できます。
少し足を延ばして訪れたい「お池めぐり」と「エコーライン」
白山(御前峰)頂上からは、「お池めぐり」コースを通って白山室堂へ戻ることができます。翠ヶ池や千蛇ヶ池などを望むコースは風光明媚です。大汝峰の裾から血ノ池の付近は火砕流の堆積物があり、白山が活火山だと再確認させられますよ。雪渓や高山植物が多いのもポイントです。
一方の「エコーライン」は、白山室堂と白山南竜山荘の間にある、なだらかなルートです。ルート沿いには弥陀ヶ原があり、ハクサンコザクラなどの高山植物が見られるほか、見晴らしのよさも満喫できます。
なお、白山登山をする際は、登山届の提出が必要です。詳しくはこちらからご確認ください。
湯上がりの肌が絹のようにスベスベになる「白峰温泉総湯」
©白山市観光連盟
白山のお膝元にある石川県白山市白峰地区の中心に位置する「白峰温泉総湯」は、地元木材を活かして建てられた温泉施設です。
天然温泉100%の源泉の泉質は、ナトリウム炭酸水素塩温泉で、湯上がりの肌は絹のようにスベスベに! 大浴場は週替わりで左右の男湯と女湯が交代。露天風呂やサウナもあり、山間の景色を眺めながら、ゆっくりと温泉に浸かることができます。白山登山を終えたら、立ち寄って温泉で疲れを癒やしたいですね。
住所:石川県白山市尾添ほか
電話:076-273-1001(白山室堂予約センター)
交通アクセス:
「JR金沢駅」から登山バス「別当出合行き」に乗車(所要時間:約2時間)
「JR松任駅」から登山バス「別当出合行き」に乗車(所要時間:約1時間40分)
公式サイト:https://hakusan-guide.or.jp/
[参考]
白山砂防|国土交通省 北陸地方整備局
ぐるっと白山|環白山広域観光推進協議会
ほっと石川旅ネット|公益社団法人石川県観光連盟
うらら白山人|白山市公式観光サイト
[Photos by Shutterstock.com]