さわって・見て・聞いて・食べて世界を知る「JICA地球ひろば」
今回訪れたのは、国際協力機構JICAが運営する「JICA地球ひろば」。SDGsや世界の貧困について、漠然とした問題意識はあっても実際に理解しようとするとなかなか難しく感じてしまいますよね。そんな人におすすめなのがこちらの施設です。ここでは世界が抱える様々な問題について、さわって、見て、聞いて、食べるという体験を通して学ぶことができます。
来館者は、通常小学生や中高生、大学生などが多いそうですが、なかなかどうして大人が訪れても楽しいスポットなのです。
カラフルで楽しい展示たち
入り口では民族衣装を着た人のパネルがお出迎え。カラフルで可愛いイラストです。
中に入って地球が描かれた入り口から続いているのは展示のある「JICA地球ひろば」。
天井の高い明るいスペースにある大きな地球儀と大きなディスプレイが設置された「地球ナビ」が目印です。タッチパネルを操作すると、球体LEDディスプレイの地球儀とスクリーンに映像が反映されます。部屋の壁にはクイズが書かれたカラフルなパネルが並んでいました。
今回は「人間の安全保障」をテーマとした通常の基本展示でした。「人間の安全保障」とは、貧困、飢餓、紛争などのあらゆる脅威から人々を守り、それに対する能力が身に着けられる手伝いをすることで、自由と尊厳を持って生きられる社会を築くことを目指す考え方です。テーマは期間ごとに変わり、レイアウトやディスプレイもガラリと変わるので、行くたびに新しい発見ができそう。
さらに奥の部屋には、世界が抱えている課題を体験を交えわかりやすく学べるブースが並んでいます。
こちらはアフリカの小学校を再現したブース。机や椅子は実際に海外で使われているものと同じものだそう。物が貴重な発展途上国では、このサイズの長椅子であれば、1脚に4人の子どもが座って勉強することもあるのだそう。
黒板に書かれた式は先生が書いたものも含め、間違っています。発展途上国では、教育を与える方もなかなか正しい教育を受けられていません。
また、紙は貴重なので、ノートの代わりに写真のような板や瓶の王冠をおはじきの代わりに利用して数などを学びます。板書を記録できないため復習が難しく、学習の効果が上がりません。
中央には日本の企業が開発した防虫蚊帳。マラリアで苦しむ発展途上国の人たちを日本の技術が救っています。

モーコック
世界の楽器に実際にさわれるコーナー。雨の音のような繊細な美しい音色を奏でるレインスティックやカエルの鳴き声のような音が出る楽器「モーコック」など日本ではあまり見かけたことがない楽器が展示されていました。こちらにある「モーコック」は魚の形ですが、現地ではカエルの形のものが多いのだとか。
キューブを組み立てるパズル。子どもたちに人気だそうです。
2階に上がった奥にある食のゾーン「J’s Cafe」(食堂)。

大使館お墨付きメニュー 700円(税込)
ここでは、施設のイベントと連動した開発途上国のメニューがいただけます。メニューはどれも本格的。大使館お墨付きメニューやエスニックランチセットなど、人気が高く売り切れてしまうメニューもあるので、早めのランチがおすすめです。フェアトレード商品も販売しているので、お買い物も楽しめます。展示を見た後はぜひ食から世界への知識を深めてくださいね! 営業は、平日ランチタイムのみ。「J’s Cafe」の食事も楽しみたい人は、ぜひ平日を狙ってくださいね。
人気の展示はコレ!
数々の展示の中でも特に人気の高い展示を教えてもらいました。どれも楽しみながら知識欲を満たしてくれるものばかりです。
SDGsダッシュボード
中高生に人気だという、SDGsダッシュボードは、それぞれの国のカードを差し込むと世界各国のSDGs達成状況がわかります。167カ国中1位はフィンランド。ほとんどの項目が「目標に達している」の緑色か、「努力を要する」の黄色となっています。
こちらは162位のアフガニスタン。ほとんどが「達成まで程遠い」の赤色。いくつかは「測定不能」のグレーでした。
さて日本は何位でしょう? 筆者は100位と予測。正解は……。
18位! 思ったより高い結果に驚きました。職員さんのお話では、実際の順位より高く回答した人はいないのだとか。日本人はもっと自信を持っていいのかもしれません。
相互依存ブース
こちらのブースは日本の食料自給率について知ることができるブース。食品サンプルについているバーコードをリーダーにかざすとモニターに原材料の産地が表示されます。和食であっても、原材料は世界の国々から輸入したものが半分以上を占めているのだそう。
もし輸入が止まり日本産の食料だけで日々の食事を賄うとすると、おいもとりんごのみといった質素なメニューになってしまいます。今の豊かな食卓は海外と日本の相互の協力があってこそなのですね。
水ブース
安全な水が確保できない発展途上国の人たちは、毎日遠くまで水を汲みに行かなければなりません。こちらはそんな水汲みを体感できる装置。バケツを持ってみるとかなり重たいです。毎日遠くまで水を汲みに行き、戻ってくることを1日4回繰り返さなくてはいけないのだそう。これでは、1日のうちのかなりの時間を使ってしまいます。
水の大切さを身をもって感じることのできる体験でした。
教育ブース
日本の識字率は100パーセントに近い数字ですが、発展途上の国ではまだまだ文字の読めない人が多く存在します。例えば熱を出したとき、解熱剤を飲みたくても文字が読めないと間違ったものを選んでしまうことも。ボックスにはスワヒリ語で薬の名前が書かれた3つの薬ビンが入っています。
もし文字が読めなかったら、薬だと思ったものが農薬である危険も……。充分な教育を受けられないことで、命を落とすことさえあるのです。
民族衣装を纏って現地気分
地球ひろばには世界の民族衣装が実際に着られるコーナーも。各国の個性があふれ、それぞれに素敵な衣装がラインナップしています。
靴や帽子も日本にはあまりないデザイン。異国の雰囲気が漂います。

地球ひろば推進課 白浜 愛唯さん
ウクライナの少女や未婚の女性がつける花冠「ヴィノク」。実際には本物の花で作られます。展示のものは、ウクライナ避難民の方が作ってくれたそう。こんな素敵なリースを身につけたら気分も華やぎますよね。
民族衣装人気TOP3
中でも人気の衣装TOP3を教えてもらいました。
【1位】メキシコ
1位に選ばれたのは、鮮やかな色使いが目を引くメキシコの民族衣装。ベストと大きな帽子が陽気な気分を盛り上げてくれますよ。
【2位】カザフスタン
刺繍の入ったシックな色使いのガウンは、魔法使いや王様のローブのような風格があります。ユニークな形の帽子がセットになっていてなんとも不思議な雰囲気。
【3位】各国のワンピース
3位はワンピース。色々な国のものがそろっているので、選ぶのも楽しいですよ。こちらはモロッコの民族衣装。ミントグリーンの生地にピンクの刺繍がおしゃれ!
フードが付いているのも可愛いですよね。おしゃれをすると気持ちがウキウキするのは万国共通!
今までで一番反響のあった展示は?
今までで一番反響のあった企画は「難民企画展」。もしも自分が難民だったらどんな生活になるのかを体験を通して知ることのできる企画です。現在では広尾にある聖心女子大学に展示を貸し出しているそう。入場料無料で体験できるので、気になる方はぜひ足を運んでみてくださいね。
混雑するのはいつ?
火曜から金曜は団体のお客さんが多く、午前中からお昼前後が混んでいるそう。土曜日は個人見学のお客さんが多く、比較的午後に来場する人が多いので、平日の午後か、土曜の午前中が狙い目かもしれません。
地球ひろばの展示は全て無料! 見応えのある展示がたくさんあるので、お出かけの途中でふらりと寄ってみては? Instagramでも情報を発信しているので、こちらもチェックしてみてくださいね。
東京都新宿区市谷本村町10-5(JICA市ヶ谷ビル内)
体験ゾーン(展示・相談スペース)(1階)
開館時間:10:00〜18:00
休館日:毎月第1・3日曜日 年末年始
J’s Cafe(2階)
営業時間:平日:11:30〜14:00
※J’s Cafeは平日ランチタイムのみの営業です。
https://www.jica.go.jp/domestic/hiroba/index.html