英国最大の陶磁器メーカー「Wedgwood(ウェッジウッド)」。その歴史は深く、今から約250年前に“英国陶工の父”であるジョサイア・ウェッジウッドが1759年に設立。英国王室や全世界の王侯貴族からも愛され、今もなお、世界中の多くのファンを虜にしています。
※博物館の前には、創始者である「ジョサイア・ウェッジウッド」銅像。
言わずもがな・・・私の友達もウェッジウッド大大大ファンが多い! もちろん、我が家でも祖母から譲り受けた幾つものウェッジウッドを愛用しています。
昨年ストーク・オン・トレントを訪れた際は大規模な改装工事中と聞いていた「World of Wedgwood(ワールド・オブ・ウェッジウッド)」に、私も初潜入してきました。とてもじゃないけれど1記事ではまとまらないので、先ずは前編「工場見学」と「博物館」の様子をお届けします。
職人による匠の技に感動! 250年の伝統を感じる「ウェッジウッドファクトリーツアー(工場見学)」
工場見学、博物館、絵付けやろくろ回し体験など、多彩な楽しみ方が出来る「ワールド・オブ・ウェッジウッド」。見学したいエリア(体験)によって、入場チケットの料金が異なります。
博物館のみ・・・7.50ポンド
工場見学&博物館・・・15ポンド
工場見学&絵付けやろくろ回し体験・・・17.50ポンド
絵付けやろくろ回し体験・・・10ポンド
先ずは「ウェッジウッドファクトリーツアー(工場見学)」よりスタート。約1時間ほど取材してきました。
ウェッジウッドの製造工程の全貌がわかる「工場見学ツアー」は、実際の製造過程をじっくり眺められるような工夫もされていたのが印象的。団体客でも受け入れられるようにと、見学スペースも広いので、とても見やすい!
機械を用いて陶磁器を作っているエリアは、真上から見学出来るので面白いです。作業工程を俯瞰して眺めていると、ちょっぴり偉い人になったような気分!?
そして、階下では「焼き上げ~絵付け作業」も間近で眺めることが出来ます。
ウェッジウッドのロングセラーといえば、なんといっても「ワイルドストロベリー」。どの家庭にも一つは備わっているデザイン柄ではないでしょうか。転写技法を用いている為、ウェッジウッドの中でも比較的リーズナブルな価格帯です。
その一方で、ラグジュアリーな価格帯の皿も! こちらは15万円くらいだとか・・・!
こんなにも細い筆を巧みに使って描かれているなんて、感動的ですね。
さらに驚くことなかれ! この繊細な絵付けを・・・コワモテ風(失礼! 汗)の男性が描いてました。
ハーレーダビッドソンの黒Tシャツにいかしたタトゥー。メトロでお隣に座ってしまったならば、正直身構えてしまいそうですが(すみませんすみません!)彼は“キャリア数十年の優秀な腕利き職人”だとか。おぉ、素晴らしい!!!
絵付けゾーンは、私が特に気になるエリアで、ずっとずっと眺めていたかった。
壺などの比較的大きめサイズの陶磁器は、力持ちの男性らによって手作業で作られていました。
こちらのエリアの男性たちは特にユニークな方々が多く、気軽に声をかけて下さって嬉しかったです。
息をのむほどの集中作業をこなしている職人たちを間近に眺めているだけで、ウェッジウッドの作品としての価値を、より身近に体感出来るのでオススメです。
半日かけてもじっくり巡りたい「ウェッジウッドミュージアム(博物館)」
約3000点の陶磁器で創業250年の歴史を辿ることの出来る「ウェッジウッドミュージアム(博物館)」。
私はこの「博物館」にも夢中になりました。時間と条件が許すので有れば、ノートを持参して自由に模写タイムも楽しみたかった。(海外の美術館では気軽に模写をしている人たちもいますよね!)
写真中央右は、ウェッジウッド創始者のジョサイア・ウェッジウッド(Josiah Wedgwood, 1730年7月12日 – 1795年1月3日)。
※一番左は、生涯の大親友で最高のビジネスパートナー(共同経営者)であったトーマス・ベントレー
彼の功績の一部を抜粋すると・・・
1766年 シャーロット王妃より「Potter to Her Majesty(女王陛下の陶工)」を拝命
1774年 磁器に近いストーンウェアを下地にした「ジャスパーウェア」を完成
1783年 王立協会の会員に選ばれる
1786年 「ポートランドの壺」の再現に取り組む
1790年 「ポートランドの壺」を「ジャスパーウェア」で再現することに成功
この見事なまでの歴史を知ると、彼がいかに成功者であるかも分かるのですが、実は9歳で父親が亡くなり、11歳で天然痘にかかり右足が不自由となり、苦しみも多かったようです。しかしながら、その哀しみをバネにしながらも、陶器に関する調査と研究に没頭。
1762年31歳の時、ジョサイアはリバプールへの出張途中に右脚を痛めて何週間も寝込むことに。その際、ホテルでかかった医師を通じ、リバプールの商人であった同じ歳のトーマス・ベントレーと運命的な出逢いを果たします。この不思議な縁で二人は意気投合し、単なる利益追求だけの商人ではないベントレーにジョサイアは心魅かれ、また、研究熱心で努力を欠かさないジョサイアにベントレーは好感を抱いたようです。
さらにジョサイアの逸話を加えると、”私は人間ではないのか、友ではないのか”と共に奴隷モチーフを施した「奴隷のメダリオン」を制作。奴隷制度廃止を自身の作品で強く訴えながら、人々に無償で配布したのだとか。
フランス革命へも賛同するなどして、自身の信念を貫きながらも、人々への協力を惜しまない、革新的精神の持ち主であったそうです。
※ジョサイア・ウェッジウッドを囲んだ一家団欒の絵画(一番右がジョサイア、左隣が妻のサラ)
1764年には、いとこのサラと結婚。ジョサイアは家庭をとても大切にしながらも、妻のアドバイスに耳を傾けながら作品作りに反映。些細な作品でも妻の言葉を受け止め、女性好みのデザインを創作するように努めたようです。妻サラとの間に生まれた子どもの話を、さらにさらにもう一つ!!! 二人の間に生まれた8人の子どものうち、長女スザンナはなんと! 進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの母だとか! (つまり、ダーウィンの祖父がジョサイア・ウェッジウッド)
ジョサイア・ウェッジウッドにまつわることだけでも随分と学ぶことが多い! そして、歴史的にみても貴重なウェッジウッドの作品の数々は、さらに見応えがあります。
※1771年、新しいエトルリア工場設立を記念して作られたブラック バサルト『初日の壺』
私も幼少期の頃より愛着のあるウェッジウッドオリジナルの素地「ジャスパー」。この独特な白いカメオデザインとマットな質感に触れると「あぁ、ウェッジウッドだ!」と心が躍るものです。
宝石のような美しい焼き物を作ることを夢見たジョサイア・ウェッジウッドが、幾千回もの実験を繰り返し、1774年に完成させた「ジャスパー」に関するアーカイブも素晴らしい!
実験に使われた貴重な陶片や当時の記録がそのまま残されている点も、感動的です!!!
「博物館」の中でも、特にチェックして欲しい展示物の一つが『ポートランドの壺』。
ジョサイア・ウェッジウッドは、古代ローマ時代に作られたローマンガラスのオリジナル作品に衝撃を受け、当時の所有者であったポートランド公爵夫人より壷を借り受け、完璧なレプリカを作り上げようと奮闘。
※以前はウェッジウッドの象徴としてロゴデザインとしても使用→現在はWのマーク
そして、1786年から4年の歳月をかけ、傑作『ポートランドの壺』をジャスパーで再現することに成功させました。彼が60歳で完成させたこの壺こそ、彼を技術の結晶を集結した最高傑作とも言われています。(大英博物館の『ポートランドの壺』は破損事故があったものの、ウェッジウッド作の存在のお陰で再現に役立ったとか!)
『ポートランドの壺』の完成は、彼が64歳で亡くなるほんの5年前ということからも分かるように、作品作りへの情熱や飽くなき挑戦を最期まで忘れなかった点にも、非常に感銘を受けます。…と、語り尽くせば何時間も経ってしまいそうなので、この辺でウェッジウッドの展示物の写真を一挙に公開します。
長い歴史のなかで様々な作品が生み出された訳ですが、戦時中ともなると物資の不足などの影響から、このようなシンプルな作品も登場したようです。
1900年代になると、よりユニークなコラボレーション作品も誕生。ウェッジウッドの自転車や乳母車は初めて見ました! これはとても気になる!!!!
私も幼稚園の頃より日常的に愛用している、ピーターラビットとのコラボレーションマグカップも発見。
もう30年以上も愛用しているのですが(あら、年齢がバレてしまいましたね。)質感もそのままで色あせることも一切無く、今でも変わらぬ原型を留めているのは、ウェッジウッドのなせる技なのでしょうね。
近年の作品は、より現代的なデザインも多くて・・・うーん、いろいろ欲しくなってしまう。
エリザベス女王の頭文字(Elizabeth Regina II)と王冠をあしらったデザインも素敵ですね。
そういえば「博物館」を入って直ぐのエリアで、こんなモノも見つけていました。
滞在時間は3時間前後であったと記憶しているのですが、とてもじゃないけれど時間が足りなかった・・・。
《ご婦人を驚かせ、楽しませ、喜ばせ、度肝を抜く、それどころか(楽しみで)有頂天にさせることが目的》ジョサイア・ウェッジウッドの言葉通り、私も陶酔の時間を過ごすことが出来ました。ウェッジウッドマニアの皆さん、約半日かけてゆっくり見学されることを心より推奨致します!
住所:Wedgwood Dr, Barlaston, Stoke-on-Trent ST12 9ER, England
TEL:+44 1782 282986
(1)【連載】成田からヘルシンキへ。フィンエアーのビジネスクラス体験記(前編)
https://tabizine.jp/2016/04/22/71169/
(2)【連載】コックピット初潜入!フィンエアービジネスクラス体験記(後編)
https://tabizine.jp/2016/04/23/71752/
(3)【連載】歴史ある邸宅を改装。英国伝統、憧れの「マナーハウス」に宿泊
https://tabizine.jp/2016/04/24/71797/
(4)【連載】英国映画ロケ地巡り。歴史ある貴族の館でタイムトラベル!
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(5)【連載】英国伝統菓子「ベイクウェル・プディング」発祥地のティールーム
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(6)【連載】可愛くて萌える!英国陶磁器の里「ストーク・オン・トレント」大特集
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