『真珠の耳飾りの少女』という絵画作品をご存じですか? 芸術に詳しくない人でも、絵を見れば「これ知っている」と思うかも・・・。
オランダのデン・ハーグという町のマウリッツハイス美術館に所蔵される、世界的な知名度を誇る作品ですね。
たまたま仕事でアムステルダムに行く機会がありましたので、せっかくならと電車を乗り継いで“少女”に会いに行ってきました。
同館はオランダで最も美しい建物の1つとも言われる観光名所でもあります。大学時代に芸術を学んだ筆者が、にわか知識を駆使しながらレポートしたいと思いますので、ぜひともチェックしてみてくださいね。
アムステルダムからの電車の旅
そもそもデン・ハーグとは、オランダ第3の都市にしてオランダの国会議事堂、各国の大使館などが集まる政治の中心地ですね。
オランダ南西部にある北海に面した街で、アムステルダムから電車で片道1時間ほどの距離。移動はアムステルダム中央駅からデン・ハーグ中央駅の往復になります。
まずは電車のチケット購入方法ですが、アムステルダム中央駅にあるカウンターで手に入れます。料金は2等席で往復23ユーロでした。
電車は2階建て。オランダでは静かにしたい人の席と、車内で普通に話したい人の席が分かれています。いいシステムですよね。
例えば日本には女性専用車両がありますが、特に静かにしたい人の車両や、乳幼児専用車両などもあれば、子連れのママは子どもの泣き声で肩身の狭い思いをしなくて済みます。
座席は対面式。車内には電光掲示板があり、目的地や停車する駅などの情報がしっかりと表示されていました。オランダ語ですが、英語とさほどスペルが変わらないので、問題なく読み取れましたよ。
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オランダ郊外の電車移動は心躍る時間
電車はアムステルダムを出ると、すぐに田園地帯に入ります。「オランダでは風車を見よう」という人にも、この旅路はいいかも。沿線の田園には昔ながらの風車や風力発電の風車がたくさん見えてきますよ。
途中、ハーレム、ライデンなどの駅を通過して電車はデン・ハーグを目指します。
車内で司馬遼太郎の『飛ぶが如く』を読んでいると、通路を挟んだボックス席に座っていたオランダ人が「日本人ですか?」と声を掛けてきました。
ライデン大学で日本語を勉強している人だと言っていましたが、しばし海外で日本語を学ぶ青年と出会えた幸福に酔いしれていました。こうした出会いも、旅の魅力の1つですよね。
デン・ハーグはオランダ政治の中心地
電車はおよそ1時間程度の時間をかけ、デン・ハーグ中央駅に着きます。日本から持ち込んだ手元のガイドブックによれば、人口は52万人ほどと言いますから、筆者の暮らす富山市よりちょっと大きい同じくらい。世界の大都市と比べれば、小さな町ですね。
とはいえ国会議事堂や大使館などが集まる政治の中心地でもありますから、美術館まで歩く間、物々しい装備に身を固めた警察の姿がいっぱい目にしました。
駅から700m程度歩いて国会議事堂と広場の間にある道に入ると、間もなく左手に美しい建物が見えてきます。マウリッツハイス美術館です。
こちらも手元のガイドブック情報ですが、オランダ美術の黄金期である17世紀にマウリッツ伯爵の私邸として建てられた建築物だと言います。2014年にリニューアルオープンしてからは、美術館としての規模も拡大し、さらに人気が高まっているそう。
何しろフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』や、レンブラントの『テュルプ博士の解剖学講』、同じくレンブラントの自画像なども展示されているのですから、世界中から人が集まる理由にも納得できます。
建物の2階と3階が主な展示スペース
まずは正面の門から敷地内に入り、地下へ向かう階段を降ります。受付で14ユーロのチケットを購入したとき、「音声ガイドは要りますか?」と聞かれましたが、ばっちり予習をしてきた筆者は断りました。
音声ガイドは日本語にも対応しているそう。全く予習をしてこなかった人は、借りてみてもいいかもしれませんね。
荷物を預けて身軽になったら、まずは入り口の階段を上り、展示室に向かいます。日本流に言えば2階と3階が主な展示コーナー。
最初からゆっくりと見ていっても、途中で疲れてしまうほどの広さではない美術館ですが、ざーっと展示コーナーを回りながら、筆者はお目当ての『真珠の耳飾りの少女』を真っ先に探し始めました。
「ええ、そんなのもったいない」と思う人も居るかもしれませんが、大学時代に学んだ美術史の教授も、美術館はまず一通りの展示作品を見て周ってしまうといいと語っていました。
最初から本気で鑑賞するのではなく、ざっと見て周って何か引っかかる作品、感動を覚えた作品があれば、後であらためてじっくり見ればいいみたいなのですね。
今回のマウリッツハイス美術館でも、学生時代の先生の教えを実践して、館内をウロウロしていました。
最大の見どころは『真珠の耳飾りの少女』
やはり同館の見どころは、予想していた通り『真珠の耳飾りの少女』でした。どこに居るのかなと思いながら3階のフロアを周っていると、だしぬけに美しい女性と目が合います。『真珠の耳飾りの少女』ですね。
この作品を見るにあたって、筆者は日本で活躍する同級生の学芸員に見どころを聞いてみました。すると、「専門ではないけれど、柔らかいマチエールを堪能するといいかも」との答えをもらいました。
「マチエール・・・。なんだっけ?」と慌ててgoogleを検索したところ、絵画の肌合いをマチエールと言うそう。
作者のフェルメールは光を描く達人として知られている通り、少女のほおや唇を表現する光の具合、真珠のきらめきには、さすがにしびれるほどの感動がありました。
特にタイトルにある真珠の光は、遠くから見ても何か伝わってくる輝きがあります。多くの旅行者が同作品の前で足を止め、しばらく無言で見入っていたほどです。
『テュルプ博士の解剖学講義』も見逃せない
同館の見どころは『真珠の耳飾りの少女』のみならず、レンブラントの『テュルプ博士の解剖学講義』も挙げられます。
今回のオランダ旅行で、さまざまな美術館を巡りましたが、アムステルダムにある国立ミュージアムの『夜警』と同じくらい、『テュルプ博士の解剖学講義』にもしびれるような感動を覚えました。
他には数点ある、レンブラントの自画像も魅力的です。館内の作品はフラッシュをたかなければ撮影OKとの話でしたので、自画像にカメラを向けました。まさにそのファインダー越しにレンブラントと目が合って、どきっとした覚えがあります。
以上、マウリッツハイス美術館のレポートになりますが、いかがでしたか?
絵画史におけるオランダの17世紀は黄金期と呼ばれています。その時代をさらに代表するような作品が数点、生で見られるだけでも十分な満足感がありました。
オランダに出かけるという人は、ぜひとも電車に乗ってデン・ハーグに出かけて、『真珠の耳飾りの少女』に会いに出かけてみてくださいね。
[All photos by Masayoshi Sakamoto]