古き良きパリといえば、どこを思い浮かべますか。映画「アメリ」の舞台にもなり、芸術家が集まったモンマルトル。作家池波正太郎も映画「北ホテル」の中の下町を感じたサンマルタン運河でしょうか。
これらのエリアは確かに以前は下町情緒溢れる場所でしたが、近年は観光地化されて、残念なことに以前のような下町っぽさは少しずつなくなってきています。しかし、パリには一般的に知られていない、古き良き時代の下町が残るエリアがあるのです。パリの13区にある、ビュットオカイユを紹介します。
ビュットオカイユとは
ビュットオカイユとは、日本語で「鶉の丘」を意味します。中華街のすぐ隣にある小さなエリアで、メトロCorvisartが最寄駅になります。ビュットオカイユは観光客にはあまり知られていないエリア。わざわざ訪れたいような美術館やブティックもないので、地元民やパリジャンがひっそりと訪れる静かなエリアなのです。
ゆったりとした時の流れ
筆者はこのビュットオカイユに何度も訪れています。時々ふと何かを思い出したように訪れたくなる場所なのです。ビュットオカイユは、同じ時を刻んでいるにも関わらず、時の流れがゆったりとしているように感じられます。それは、ホテル暮らしの人たちが暮らす場所だからでしょうか。パリのホテルは高いことで有名なのに、このエリアのホテルは1か月600ユーロ台というのも見かけます。その日暮らしをしている定住地を持たない人たちの自由な空気感がこのエリアを包んでいるようです。
ストリートアートも楽しい
ビュットオカイユには、他のエリアより多くのストリートアートが見られます。古い街並みが残る場所なのに、ストリートアートが街に馴染んでいます。ここのストリートアートはユーモアがありながらも、人の心に響く絵が多く見られます。このエリアでその日暮らしをするアーティストたちが描いたのでしょうか。心の奥底に流れる孤独感のようなものが感じられます。
ビュットオカイユは夜もまた楽しい
昼間は静かなビュットオカイユですが、夜はお祭り騒ぎの様相で、賑やかな一面を見せます。このエリアにはバーやレストランがあって、他の地域と比べてお値段もお手軽。ビュットオカイユのレストランで一番人気は、Chez Gladine/シェ・グラディン。バスク地方料理のレストランです。昔のフランス映画で見るような、ボリュームたっぷりで気取らず楽しく食事が取れるレストランなのです。
ビュットオカイユは、映画の中の下町の世界がそのまま残る場所。パリの中でも日本人の筆者が唯一懐かしさを感じるエリアです。パリに来る機会があれば、下町情緒を感じに、ぜひビュットオカイユを訪れてみてください。
[All photos by Nanako Kitagawa]