よく欧米の学生に比べて日本の大学生は…という批判を聞きます。そういった批判を聞く度、実際欧米の学生ってそれほどまでに日本人の大学生と違うものなのだろうかという疑問を持ったことってありませんか。
筆者は、日本の大学を卒業したあと、フランスの大学で学び卒業しました。経験からこの疑問に答えるべく、日本とフランスの大学と学生の違いについてお話します。
フランス人学生は大学で勉強しない!?
欧米の大学生は大学に入るのは簡単だけれど、卒業するのが難しいという話をよく耳にします。筆者もフランスの大学に入るときは、ものすごい勉強しないと卒業できないというようなことを言われてきました。フランス人の大学生は受験生並みに大学で勉強しているものだと想像していましたが、実際は日本の大学生より少し勉強している程度。
これは筆者の属していた学部だけなのかと思い、他の学部出身のフランス人に聞いてみたところ、「日本でそんなこと言われてるの。日本人の大学生と変わらないよ」という言葉が。フランスでは医学部や法学部であれば、受験生並みに勉強しなければならないようですが、その他の学部の学生たちの勉強量は私たちが想像しているよりも少ないように思います。
ただ留学生は、外国人だからといって言語のハンデを認めてもらえることが少なく、採点は厳しいものでした。外国人がフランスの大学を卒業するのには、かなり勉強しなければなりません。
受験がない
フランスの大学は日本のように入学試験はありません。高校卒業時にバカロレアという試験を受け、取得することができれば、基本的にどの大学に入ることもできます。人気の大学には定員を超える応募があるので、その場合は、バカロレアの成績や志望動機によって受け入れが決まります。
バカロレアについてですが、2017年度ではバカロレアを受験した学生の約80%が取得しています。バカロレアを取ること自体はそこまで難しいことではないようです。
学費が安い
筆者がフランスの大学に入学して驚いたことといえば、学費がかなり安いということ。筆者が登録をしたパリ第八大学の授業料は、2017年度で、保険と授業料を合わせて、約400ユーロ(2018年4月現在約52000円)。授業料が比較的安いと言われている日本の国立大学に比べても、驚くべき値段です。
フランスはなぜこのように授業料が安いのでしょうか。フランスでは、裕福な家庭の学生だけでなく、全ての階級の学生が平等に高等教育を受けることができるように、授業料が設定されているとのことです。
また授業料が安いからといって、授業内容が劣っているということは全くありません。フランスの大学の授業は日本と比べても水準がかなり高いというように思いました。カリキュラムもしっかりしていて、個人的にはフランスの大学で学べたことは大きな財産となりました。
留年、専攻の変更が多い
フランスでは日本と比べて、留年、専攻の変更をする学生が多いのが特徴です。2016年度では1年次から2年次に上がった学生は40%。大学を3年間(フランスは学部は3年、院が2年というシステム)で終えることができた学生は約27%だったという数字が出ています。この数字を見ると、フランスの大学は卒業するのが難しいように思いますが、1年次から2年次に上がる時に、専攻を変えて中退をする人がかなりいること。そして、働きながら大学に通う学生は1年次を2年間で終えるという学生もかなりいるのです。
専攻の変更が多いわけ
なぜフランスでは専攻を変更する学生が多いのでしょうか。「フランスには新卒採用がない〜日本とフランスの就職活動事情、6つの違い〜」の中でも、お話ししましたが、フランスでは専攻と違う分野の職種にはつけません。高校を卒業してすぐに、将来何をしたいのかということを明白に持つ学生の数はそんなに多くはないのです。実際大学に登録してみて、この分野は自分には合わない、将来性がないなど、様々な現実が見えてきます。そういった理由で、フランスの学生は専攻を変更するのです。
また日本のように、専攻を変更する時に編入学試験を受けなければならないという訳ではなく、書類審査のみ。専攻を変えるということ自体、難しいことではありません。
大学院卒じゃないと仕事が見つからない
フランスは大学卒だけでは、仕事が見つからないということがほとんど。それなりの会社に就職するためには大学院卒であることが求められます。
フランス人学生のバイト
日本の大学生は、大学の授業に行かずバイトばかりしているという話を聞いたりします。
フランスの大学生はどのようなバイトをしているのでしょうか。日本のように飲食店やスーパーでバイトをする学生は少ないように思います。ベビーシッターか家庭教師が人気のバイト。フランスの学生は基本的に授業に支障をきたさない程度でお小遣い稼ぎのような感じでバイトをしています。
筆者は日本とフランスの両方ともの大学を経験してみて違いを大きく感じたいのは、大学を卒業すること自体難しいことではありませんが、フランスの大学ではその先の就職のことを考えて専攻を選ばなければならないこと。目的意識がしっかりしていなければ、将来がないのも同然なのです。その点、日本の大学に比べ、フランスの大学生の現実はシビアだということを実感しました。
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Nanako Kitagawa ライター
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。
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