中国と緊張状態にあった戦後の台湾に40年間も存在しながら、公然の秘密となっていた場所があります。「軍中楽園」とよばれた従軍慰安所(娼館)がそれです。
今年(2018年)5月、日本でも公開された映画「軍中楽園」(2014年制作)で、その様子が描写されています。現在は「特約茶室展示館」という名称で一般公開されているその場所を、そっとご紹介します。
堂々とした門構えですが、当時の名称は「小徑分室」。小規模な慰安所だったことが伺えます。
陰湿な感じは皆無。一見するとリゾート施設。
台湾では慰安所は「茶館(あるいは「茶店」、「茶室」)」、慰安婦は「軍妓」と呼ばれます。
かつて金門島内に11箇所、澎湖島など他の離島、そして台湾本島にもありました。金門島内に設けられたのは1952年。台湾本島では1974年に廃止されていますが、金門島では92年まで存在していました。
現在資料館として保存されているのは、この一箇所だけです。
展示物は少ないものの、ドラマを感じます
当時は10人ほどのスタッフと慰安婦たちが働いていました。残存する部屋のサイズから推察すると、慰安婦は20名弱だったと考えられます。女性たちは割の良い仕事を求め、本島から志願した娼婦たちでした。
軍妓には「軍人以外と接しない。秘密を洩らさない。週1度検査を受ける」などの規則が定められていました。
金門島には数万人の兵士が常駐していました
順番待ちする兵士たち
階級によって料金に差があり、利用する「茶館」が異なりました。
「女性たちは姉妹のような関係にあったが、互いの過去を尋ねることはなかった」とのことです。
「老兵は消え、茶館も軍の歴史のなかへ消えていった」と詩的な言葉が綴られていました。
安ホテルのような飾り気のない部屋。部屋ごとに風呂とトイレが付いています。
カフェも併設されています。ここは本来の意味の「茶室」です。
住所:金門県金湖鎮小径126号
公式サイト:http://www.kmnp.gov.tw/ct/index.php?option=com_eftour&view=gtour&id=23&Itemid=10
[Photo by Dambala Tell-Kaz]