世界の食が集まるニューヨーク・シティ。世界の観光都市であり、各国の人種が住むこの街には、星の数ほどレストランがあります。それぞれのレストランのメニューも気になりますが、今回は利用客が立ち入ることの出来ない、レストランの裏側に潜入してみました。
レストランの賄い(まかない)が気になる
レストランの利用客が途切れる3時過ぎ頃、ニューヨークのレストランの隅の席で、従業員が賄い(まかない)を食べているのを見かけることがあります。メニューにはないものを食べているので、食い意地の張った筆者などいったい何を食べているのかなあと気になり、チラチラ見てしまいますね。
そこでレストランでバイト中の知人に、気になるレストランの賄いの取材協力をしてもらいました。さてさて、レストラン勤務の皆さんは何を食べているのでしょう。
家庭料理にホッとする賄い
忙しいニューヨーカーは、食事にかける時間に手抜きをしがち。外食や簡単なサンドイッチばかりで済ませていると、野菜のたっぷり入った家庭料理が恋しくなります。そんな気持ちを推し量るかのような賄い。
チキンと野菜の炒めもの
この日は、チキンとキャベツ、長ネギ、きくらげの炒め物。味付けは、味噌とガーリック味。不足しがちな野菜をたくさん入れてくれるのは嬉しい心遣いだったそう。
梅のたたき入り出汁巻きたまご
最高気温35度を超えるニューヨークの真夏日。夏バテ気味のスタッフに好評だったのが、梅干しのたたきいり出汁巻きたまご。程よい酸味が食欲を誘い、爽やかさが身体に染みたそうですよ。
ベーコンを巻いた出汁巻きたまご
スタッフの人数を考え、出汁巻きたまごがもう1種類。ベーコンを巻いたルックスの良さに、皆の手が伸び、あっという間になくなったそうです。人種が異なり文化や言葉が違っても、美味しいものを食べるのが好きなのはどこの国も一緒です。
野菜たっぷりスープ
時には、前日の残りものも出ます。スープ類はスタッフにも、評判の良いメニュー。サーバーは接客でのどが渇く、キッチンの人は火の気で暑いため、たっぷり水分を補給したいのです。スタッフ用の賄いには洗い物を少なくするため、鍋やフライパンごと出されることが多いそう。
ご紹介した賄いは、炒め物は日本人男性、2種類の出汁巻きたまごとスープは日本人女性が作ってくれたそうです。前日の残りのスープも含めて、4品も賄いが出るのは豪華。美味しそうで、羨ましいですね。
ラーメン屋さんの賄い(まかない)でした。
この家庭的な賄いは、マンハッタンのダウンタウンにある日系ラーメン屋さんの賄いでした。
バイトしているAさんに聞いたところ、賄いで登場回数が多いメニューは、チキンカツ、鶏の唐揚げ、鶏団子のスープ、親子丼、チャーハン、焼きそばなど。
ラーメン屋さんだと、ラーメンや餃子が賄いとして出ると思う人がいるようですが、商品はお客様に売るものでスタッフには出ないそうですよ。
本格的タイ料理の賄い
チキンと野菜たっぷりのオイスターソース味のそうめん
「うちのバイト先の賄いは最高。」と自慢するBさん。本格的なタイ料理が出るので、タイフード好きな彼女にはたまらないそう。キッチンスタッフにタイ人がいるため、タイレストランの上を行く、本場のタイ料理を食べられるためです。
この日は、チキン、ブロッコリ、カリフラワー、玉ねぎ、長ネギがたっぷり入った、オイスターソース味のそうめん。大きなフライパンごと出ています。味の良さにお代わりしたとか。
高級和食店の賄い(まかない)でした。
この本格的なタイ料理の賄いは、マンハッタンの高級和食店の賄いでした。お客様用のメニューには、タイ風のものはなく、完全な和食のみ。タイ料理を食べられるのは、スタッフのみです。
バイトしているBさんに聞いたところ、賄いで今まで登場したメニューは、絶品トムヤムクン、パスタ、カレー、スパイシーなつけめんで、作り手はタイ人男性もしくは日本人男性だそうです。バイトに行く楽しみには、今日の賄いは何かなと期待することも含まれるそうですよ。
賄い(まかない)は、飲食店勤務者の特権
レストランの賄いは、飲食店勤務者の特権。材料は、お客様に出せない端肉や残った材料を使って、美味しく作るのはその店のシェフの腕の見せどころ。お店のメニューと全く違うものが賄いになるのが、興味深いですね。ただし、スタッフに人気の賄いが、お客様用メニューに昇進する場合もあるそうです。毎日作るため、家庭の主婦と同じで「ああ、今日の賄い何にしよう。」と、頭を悩ませるものでもあるようですよ。
サーバー(オーダーを取り、料理を運ぶ仕事)、キッチン(調理)のスタッフ、マネージャー(スタッフの統括、経理など)と普段は持ち場が違うスタッフが一緒に食べる、コミュニケーションの場でもあります。料理は大皿に盛られ(あるいは大鍋や大きなフライパンのまま)、各々自分の好きなだけ、好きなものを取る場合が多いようです。
写真提供および記事協力:ニューヨーカーAさんとニューヨーカーBさん
[Photos by shutterstock.com]
sara-aoyama ライター
はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。
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