淡水で生育したビワマスは安心して生食できる希少な魚
琵琶湖は言わずとしれた滋賀県にある日本最大の湖。古くは「淡海」とも呼ばれ、まるで淡水の海のように広大です。世界でも、そんな琵琶湖にしか生息しないサケの仲間が「ビワマス」。
本来、マスという魚は川で生まれ、下流へとくだり、海で成長して、再び川に戻って産卵をするライフサイクルですが、たどり着いた琵琶湖を海だと思って、回遊しながら成長するのがビワマスなのです。
琵琶湖に生息する鮎を食べて脂が乗り、小さいエビなどを食べることで身が美しいサーモンピンクに変色するのだとか。海に下りないためアニサキスの心配がなく、冷凍せずに生で刺し身にして食べられるのはサケ・マス類でもビワマスだけといわれています。
そんなビワマスも個体数が少なくて希少となり、これまで漁獲したビワマスは滋賀を中心とした関西圏で食べられていました。そんなビワマスのおいしさを広く知ってもらい、首都圏にも販路を拡大する目的で行われたのが、今回の「『旬のビワマス』を味わう会」です。
会場は、東京・日本橋の滋賀県アンテナショップ「ここ滋賀」2Fのレストラン「日本橋 滋の味」と、滋賀県大津市の青年会館1Fレストラン「ラコンテ」の2カ所。Zoomでつなぐことによるオンラインでの開催となりました。
琵琶湖の水産業を振興させ、首都圏にトン単位でビワマス出荷を
フェイスブックなどのSNSや公式サイトで集まった東京10名、滋賀20名の参加者に、まず提供された料理は「ビワマスお刺身」。淡水魚というと、独特の臭みが気になるという方も多いと思いますが、このビワマスは臭みがまったくありません。
トロっとした脂が乗り、サーモンよりも味が濃い印象を受けました。しかも口溶けがよく、後味がスッキリ。口の中に魚臭さが残らないのには驚きました。
続いて提供されたのは「コアユの天ぷら」。川に上らず、琵琶湖で生活して、あまり大きくならない小鮎は、初夏になると琵琶湖周辺で炊く、ふくよかな香りが漂う季節の風物詩だそうです。
ひと口食べてみると、鮎独特の爽やかな香りが広がります。身がとても柔らかく、塩を付けて食べるとお酒の肴にピッタリ。もちろん、ご飯にもよく合います。
滋賀会場のゲストで、ラオス料理愛好家の小松聖児さんによると「ビワマスで淡水魚の“泥臭い”“おいしくない”という偏見を取り除きたい。安心して刺し身で食べられるのはもちろん、塩焼きにしてもおいしい。入荷されたら、ぜひ食べてみてほしい」とコメント。小松さんは京都市中央卸売市場で働く「魚のプロ」なので、ビワマスのおいしさはお墨付きでしょう。
特に、夏においしい魚といわれているビワマスなので、これからがまさに旬の季節です。琵琶湖で水揚げされたビワマスは、瞬間冷凍技術によってマイナス35度の液体で冷凍されるため、鮮度はそのままで細胞を壊さず、おいしさや旨味が維持されます。こうした冷凍技術の進歩によって、琵琶湖から遠く離れた首都圏でも、新鮮でおいしいビワマスが食べられるようになったのです。
東京会場のゲスト・水産庁の広報班に勤める溝部倫之さんは、琵琶湖の水産業振興、水産経営の改善、魚食文化の啓蒙と創出のために「琵琶湖の水産業を本気で何とかする会」を昨年2月に設立。各種SNSを通じて議論を行い、琵琶湖の水産関係者が増収でき、若い人が琵琶湖で水産業に就きたいと思う環境づくりを進めています。
その一環として、琵琶湖で水揚げされたビワマスの首都圏における販路拡大を考えているそうです。溝部さんは「SNSで湖魚や琵琶湖の紹介をして、漁師や魚屋の改善への取り組みや努力、思いなどを伝えていきたい。それにより、消費の多様化を想起させることが狙いです。すでに昨年7月、ビワマス5kgを実験的に東京へ出荷し、ツイッターでバズったため、1晩に300件という注文が殺到して“ビワマス祭り”が起こりました。5kgという小さな一歩ですが、これからトン単位で出荷することになる夢の詰まった5kgだったのです」と熱く語っていました。
「ここ滋賀」では滋賀県の魅力を発信中!
1時間15分という短い開催時間でしたが、琵琶湖のビワマスやコアユといった淡水魚のおいしさ、魅力、そして琵琶湖の水産業が置かれている現状について知ることのできた、濃密な時間となりました。
なお、東京会場となった滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」では、ご紹介した琵琶湖のビワマスやコアユだけでなく、滋賀のブランド牛である「近江牛」や名産品がたくさん取りそろえられています。お近くに行った際には、滋賀旅行をした気分で立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
住所:東京都中央区日本橋2-7-1 ここ滋賀1・2F
電話:03-6281-9871
営業時間:1Fマーケット 10:00〜20:00
交通:東京メトロ東西線「日本橋駅」徒歩2分
HP:https://cocoshiga.jp/
[All photos by Takashi Mizusawa]