(C)Masato Abe
日本百名山 石鎚山へロープウェイで
石鎚山の登山道は、東側・西条のルートを表参道、西側・面河からのルートを裏参道と呼ぶそうです。「参道」という言い方は、石鎚神社にお参りに行く道だから。今に至るまで信仰の山として、あるいは修行の山として大切に守られてきた山なのです。
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今回、石鎚登山ロープウェイに乗って表参道コースに向かいました。公共交通機関では、ロープウェイ山麓下谷駅までJR予讃線伊予西条駅前から、せとうちバスの路線バスが運行されています。
ロープウェイ料金は大人が往復で2,000円。夏場は平日が8:00運行開始、土日祝日は7:40運行開始となっています。春や秋は少しずつ遅くなるようですので、お確かめください。
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ロープウェイに揺られること10分ほどで、標高1,300mの成就駅に到着です。実は下から見上げた時すでに気付いていましたが、成就駅の周囲は霧(ガス)が立ち込めていて何も見えません。
「成就社」という不思議な名前は、1,300年以上もの昔、石鎚山を開いたと伝えられる役小角(えんのおづぬ、役行者とも)が「成就社」というお社を山の中腹7合目に祀ったことによります。
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ロープウェイ駅から歩いて20分ほどの所にある「成就社」に着きました。荘厳な雰囲気で、霧の中に立派な本殿が佇んでいます。実はこの本殿の中から、向こうにそびえる石鎚山の頂を遥拝することができます。
言い伝えでは、石鎚山にやって来た役小角、心身を清め山頂を目指しましたが登頂できません。あきらめて下山しようとしたところ、この場所で懸命に斧を研いでいるひとりの白髪の老人に出会いました。小角は、不思議に思って尋ねてみると「この斧を研いで針にする」といいます。
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つまり、たゆまぬ努力が必要だという例えに小角は感銘し、苦行を続け、石鎚山頂を極め、開山することができたというのです。ちなみに、小角が出会った老人は石鎚山の神さまで、この場所を「成就社」と名付け、社を建てたというものです。
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教訓ですね。思いを深くしたところで、準備を整え、ここからが登山となります。とはいえ、いまだ霧が立ち込めています。どうなることでしょう。
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成就社を発ってまもなく、ルート路程図がありました。ここから緩やかな登りで、山頂手前で多少の急登という感じです。
ところで、この石鎚山は、ひとつの主峰があるのではなく、天狗岳と南尖峰(なんせんぼう)、そして弥山(みせん)という3つの峰を総称しているのだそうです。最も高いのが天狗岳と南尖峰で標高1,982m。冒頭に紹介した写真は天狗岳。石鎚山といえば、この峰が登場します。
石鎚山名物 鎖場へ
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石鎚山名物の鎖場にやってきました。これは「試しの鎖場」という場所だそうで、この後の登山道にも3カ所の鎖場があります。それが関門なのです。この「試しの鎖」は高さなんと74mだそうです。
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とはいえ、あきらめるのは早計です。迂回ルートがちゃんとありますので、ご安心ください。それでも鎖場に挑戦したい方は、せいぜい2〜3m登ってみて無理と思ったら、すぐに迂回すること。修験者の道なのですから。
ちなみに、この後の「一の鎖」の高さは33m、そして「二の鎖」は65m、「三の鎖」は68mもあるといいます。
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「試しの鎖場」の迂回ルートを登ったところに「前社ヶ森小屋(ぜんじゃがもり)」という休憩所があります。この小屋の名物が「力飴湯」という熱い飴湯だそうです。ショウガと水飴の入った熱い飲み物でしょうか。飲んでいないのでわかりませんが、きっと昔から飲み続けられてきた、元気の素だったに違いありません。
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上の写真は「前社ヶ森小屋」から15分ほどの「夜明峠」。気持ちの良い、なだらかな道がちょっとだけ続きます。はるか向こうに石鎚山の全貌が見えていますね。
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「夜明峠」から緩やかに登り始め、いよいよ連続する3つの鎖場です。ここは迂回して安全なルートを進んでください。
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眺める位置にもよるのですが、目の前の石鎚山は屏風のようにそびえ立っています。とはいえ、この壁を登るわけではありません。安心してください。
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鎖場(迂回ルート)を過ぎて山頂は近いのですが、ラス前の岩壁の横に長い石段と階段が作られています。延々と続く印象だったのです。
というのも、この時、鼻かぜ気味で調子がいまひとつだったのです。ですから鎖場は全くチャレンジせず、迂回ルートを歩いて登ったのでした。
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とはいえ、終わりはかならずやってきます。成就社から3時間ほどでしょうか、階段を登りきり、ようやく弥山の山小屋が見えてきました。
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そして弥山に到着!標高は1,972m。そして目の前には最高峰の天狗岳が見えていますね。でも、あそこまで行くのは諦めました。今回は体調を考えて無理はしません。
ところで、ロープウェイや成就社付近では霧が立ち込めていましたが、標高が上がるつれ霧が晴れていました。霧は下のほうにたまっているので、山頂部分からは展望がきいているのです。
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石鎚山頂から雲海と山並みが美しく広がります。快晴なら瀬戸内の海も見えるといいますが、最初は展望をあきらめていたので、とても爽快な気分になりました。
知る人ぞ知る名湯 湯之谷温泉
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湯之谷温泉と聞いてピンと来る方は少ないかもしれません。四国愛媛県で温泉といえば道後温泉ですが、個人的にはお湯の質では湯之谷温泉のほうが優れていると感じていました。
実は松山で転勤生活を3年間送ったことがあり、毎日温泉に入ろうと道後温泉本館から徒歩3分の場所に住んでいたのです。その時期に湯之谷温泉には何度も訪れています。
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湯之谷温泉の歴史は古く、飛鳥時代の西暦600年代半ばに第35代の斉明天皇が入浴したという伝えが残っているそうです。ちなみに斉明天皇は数少ない女性天皇です。
石鎚神社本社や四国八十八箇所霊場の第64番札所、前神寺もすぐ近くにあります。
温泉と瀬戸内の海の幸山の幸
(C)湯之谷温泉
敷地内から湧出している温度18度の冷鉱泉を、薪を使って沸かしているそうで、源泉かけ流し。泉質はナトリウム・塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉。優しく柔らかく、芯から体が温まり、とてもいいお湯だと実感します。
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それほど広くはない浴室は、地元の日帰り客で平日の夕方は混雑しています。早い時間か、逆に遅い時間を選んだほうが良いかもしれません。それとシャンプーやせっけんは置いていないので、持参する必要があります。
かつて訪れた時、湯之谷温泉は古びた建物の温泉宿でしたが、その後リフォームをして若い女性客も喜びそうな、レトロモダンな宿に変身していました。
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いまでは露天風呂付の広々とした客室も4室あるそうです。1日10組までの、こだわりの客室と露天風呂だといいます。
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夕食は食事処「無庵」でいただきました。竹さらしを配した空間を作り出し、江戸時代の戸襖を利用したテーブルで古き良き日本を感じさせているといいます。新鮮な地元の食材を使って、一皿一皿丁寧に作られています。
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瀬戸内海に面した西条市。魚介類は近くの来島海峡、その燧灘(ひうちなだ)で鍛えられ獲れたものだそうです。身が締まって甘くて味わい深く感じます。
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完熟梅酒の食前酒から始まり、八寸は彩り八種。瀬戸内の旬の魚のお造りに季節の天ぷら、蓮根饅頭に鱧の酢の物、メインは(ピンボケ写真で失礼しました)おいしい伊予牛の陶板焼。そして愛媛名物の鯛めしで〆となります。
湯之谷温泉は露天風呂付の客室でも1万5,000円あまり。昔ながらの6畳だと1万円もしません。とてもリーズナブルで、料理ももてなしも満足できる、おすすめの宿なのです。
石鎚山をご神体とする石鎚神社
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石鎚山に登り湯之谷温泉を訪れたら、ぜひ石鎚神社にも詣でてください。湯之谷温泉から1kmもありません。ほんの近く。
石鎚神社は石鎚山自体がご神体で、このふもとに本社があるのです。「無事に登山できました、ありがとうございました」とお参りしてきました。