※写真はイメージです
サンゴとサンゴ礁は違う
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サンゴ礁とはそもそも何なのでしょうか? 「サンゴ」+「礁」ですから、それぞれの言葉の意味を調べるとわかるかもしれません。日本サンゴ礁学会の公式WEBサイトによると、サンゴとサンゴ礁は違うと書かれています。
<サンゴは動物です。サンゴはイソギンチャクやクラゲの仲間で、刺胞動物(腔腸動物)に含まれます >(日本サンゴ礁学会の公式WEBサイトより引用)
骨格=脊椎(せきつい)を軸にして体を支えない「無」脊椎(せきつい)動物が刺胞動物です。
この刺胞動物はいくつかに分類が可能で、その1つにサンゴが属しています。さらにそのサンゴの中には、石灰質の石の骨格を体の下につくり、成長とともに骨格を大きくする種類(造礁サンゴ)が存在します。
いわばサンゴは動物の名前。このサンゴの群れが石灰質の骨格を覆う形で海面近くまで盛り上がった状態をサンゴ礁と呼ぶのですね。
ちなみに「礁」とは「石」+「焦げる」で、焦げた色をした黒い色の岩が水面に見え隠れする状態を意味する漢字です。
長崎県壱岐のサンゴ礁は世界最北
壱岐
どうしてサンゴ礁は温かい「南の海」にだけ存在するのでしょうか? 水温18℃~30℃の温かい海をサンゴが好むため、冷たい海ではまずサンゴが暮らしていけないからです。
さらにサンゴは、小さな藻を造礁(ぞうしょう)体内に住まわせています。藻の光合成によってエネルギーを得ているらしく、光合成に必要な太陽を求めて浅瀬に生息します。透き通った海面も太陽光の通りを考えると適しています。
このサンゴ礁が、それほど温かい印象のない「日本海」の島でも確認されているのが、長崎県の壱岐です。それまでは鹿児島県の種子島が日本のサンゴ礁の北限とされていましたが、それよりも北の隠岐の黒崎で確認され、地球で最北のサンゴ礁として世界に知られるようになったというわけです。
壱岐といえば、九州本土の北の海上に浮かぶ島で、対馬の近くにある島。冬季の風浪が激しいと知られる玄界灘にも連なる島で、サンゴ礁のイメージからは遠いですよね。
ちなみに、日本海側では金沢(石川県)周辺でも造礁サンゴ(サンゴ礁をつくるサンゴ)の生息は確認されているものの、サンゴ「礁」までは確認されていません。
過酷な環境で生き延びている
壱岐の海
環境省の資料によると、壱岐の外洋の水温は3月でも平均水温が14℃だといいます。9月になると平均水温が27.5℃。サンゴ礁が確認された黒崎の湾内は3月の平均水温が13.3℃。8月が26.2℃です。
対馬暖流の影響を受けるため、冬でも温かい印象があります。しかしサンゴ礁をつくる造礁(ぞうしょう)サンゴが水温18℃~30℃を好むと考えれば、かなり厳しい環境ですよね。さらに海藻・フジツボ・カキなどとも激しい生存競争を繰り広げる必要があるため、なかなか過酷な環境で生き延びているようです。
2017年(平成29年)7月には、海水温度の上昇で世界最北のサンゴ礁が白化現象を起こしたというAFP通信(フランス)の報道もあります。それでもJ-CASTニュースの報道によれば、壱岐のサンゴ礁は1400年前から存在するとの話。その間、ずっと過酷な環境下で生き延びてきたのです。
新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いて自由に旅ができる状況になったら、フェリーで・飛行機で壱岐へ渡ってみてはどうでしょうか。
この貴重なサンゴ礁が生きる環境を肌で感じたいですね。
[参考]
※ 長崎県の日本一・世界一 – 国立国会図書館
※ 世界最北のサンゴ礁、白化現象を確認 対馬沖 – AFP
※ 「サンゴ礁」世界の北限 長崎県壱岐島なのか – J-CASTニュース
※ サンゴマップ – 環境省
※ サンゴ礁Q&A – JCRS
※ 日本海(隠岐諸島、壱岐・対馬、五島列島) – 環境省
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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