
すべての神社の最高位

伊勢神宮は125からなるお社の総称で、正式には「神宮」といいます。「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を祀る内宮、「豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祀る外宮ほか、14所の別宮、43所の摂社、24所の末社、42所もの所管社など構成するお社は実にさまざま。
日本神話には多くの神様が登場しますが、その中でも皇族のご先祖にして日本人の総氏神である「天照大御神」は最も尊い神様と言われています。伊勢神宮が日本最高位の神社と称されるのは、この神様が祀られているからなのです。

伊勢神宮が創建されたのは約2000年も前のこと。もともと「天照大御神」は代々天皇のお近くに鎮座していましたが、第10代崇神天皇が宮中外に祀ることを決意。これにより天照大御神は大和の笠縫邑(現在の奈良県桜井市)にお引越しします。
その後、第11代垂仁天皇の皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)がさらに祀るにふさわしい場所を求め、伊賀、近江、美濃など14もの地を巡ったとのこと。長旅の末、たどり着いたのがここ伊勢でした。
「日本書紀」によれば、天照大御神が「伊勢の国は都から離れているものの美しい国。この国にいたい」(筆者意訳)とお告げをされ、倭姫命はその教えのまま五十鈴川の川上に宮を建てたとされます。
江戸時代に大ブームとなった伊勢神宮参拝

平清盛や足利義満、織田信長など数多くの歴史上の人物が参拝したといわれる伊勢神宮。庶民のお伊勢参りが一般的となったのは江戸時代で、多い年には年間500万人以上が訪れたとされます。当時の人口が約3千万人ですから、約6人に1人が出かけたという計算です。
ブームが巻き起こった背景には、「御師(おんし)」と呼ばれる神職たちが全国で参宮の勧誘を行い、旅の手配も請け負っていたことが大きいそう。また東海道などの五街道が整備され、全国からの参拝が容易になったことも一因とされます。
もちろん当時は乗り物はありませんから、交通手段はすべて徒歩。平均して1日30〜40kmを歩いていたそうですから驚くべき健脚です! 参拝後は道中にあるさまざまな観光名所や寺社を訪ねたとか。各地でのお土産購入も大事なイベントで、織物や農作物の種が人気アイテムだったようです。
参拝は外宮から

お伊勢参りは外宮から内宮の順に巡るのがならわし。外宮は正式には「豊受⼤神宮」といい、衣食住、産業の守り神「豊受⼤御神(とようけのおおみかみ)」が祀られています。内宮が創建された500年ほど後、天照大御神の食事の支度をする神様として丹波国から迎え入れられたのだそう。

正宮の奥にある御饌殿(みけでん)では、天照大御神をはじめとする神々に食事を供える儀式が行われます。お食事は朝夕の2回。驚くべきは1500年も前から続いていること。さらには戦時中や台風による冠水を受けても毎日行っていたようですからすごい話です。
ちなみにお食事の内容は、ご飯、鰹節、魚、海草、野菜、果物、御酒、御水など。調理にあたっては昔ながらの道具でおこした火しか使えないのだとか。
厳かな雰囲気漂う早朝の内宮

続いて内宮へ。凛とした空気を感じるなら早朝がおすすめです。神宮の森から昇る日の出は圧巻の神々しさ! この鳥居から昇る朝日を望めるのは11月下旬~1月下旬の午前7時半頃。冬至の日には鳥居の真ん中から太陽が昇るため、数多くのカメラマンが集まるそう。

五十鈴川に架かる宇治橋は、俗界と神聖な世界とをつなぐ橋。誰もいない橋は静まり返り、いつにも増して厳かな雰囲気が漂います。

参道も昼間の喧騒とうって変わって静かなたたずまい。ザッザッ……と玉砂利を踏みしめる音が山にこだまするかのように響き、心身が浄化されるのを実感します。

正宮へ向かう深い緑の美しさも早朝参拝ならではの風景。昇ったばかりの太陽の木漏れ日は、ただ眺めているだけで清々しい気持ちに。この静謐で神秘的な空気は、宗教という枠組みを抜きにしても、誰しもの心を動かすはずです。

誰もいない正宮前の石段。一段一段踏みしめ、神様のおそばへ。時が止まったかのような静寂の中での祈りは、不思議なほど心が静まることでしょう。
悠久の遥か昔から、変わらず人々を見守り続けてきた伊勢神宮。新年の始まりは日本最高位の神社で、清らかなパワーを感じてみてはいかがでしょうか?
[All photos by Nao]
Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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