島の人々と思いを交わし、伝統文化に触れる
沖縄の方言で“おしゃべり”を意味する「ゆんたく」。地元の人々とのんびりお話しながら、さらに伝統や文化に触れ合えるのが「ゆんたく体験」です。近年沖縄で人気のアクティビティとなっていて、モノづくりや踊り、料理体験などさまざまなコンテンツが用意されています。
筆者が参加したのは、沖縄のローカル体験をプロデュースする「美ら産プラニング」によるゆんたく体験。数あるプログラムの中から「琉装」「三線」「家庭料理」をセレクトしました。開催されるのは沖縄本島の北部、本部半島にある今帰仁村(なきじんそん)。徐々にリゾート化が進んでいるものの、手つかずの自然が随所に残る、素朴な沖縄の風景が魅力のエリアです。
南国らしい鮮やかな色使いが目を引く「琉装」
まずは琉装体験から。琉装とは沖縄に琉球王朝時代から伝わる伝統衣裳のこと。内地の和服や中国の漢服の影響を受けながら、独自の装いとして発展。鮮やかな色彩と大胆な配色が特徴です。今回は上衣と下衣が分かれた「二部式」をチョイス。服の上から着るので気軽に楽しめるのもうれしいポイント。50着以上から好きなデザインを選び、スタッフさんに着付けしてもらいます。
着付け後はビーチで記念撮影。花をモチーフとした髪飾りや琉球舞踊でお馴染みの「花笠」を小道具として使うこともできます。琉装体験は1人から参加可能(2,000円)。スタッフさんが撮影してくれるので、とっておきの思い出写真を作れますよ。
600年以上の歴史を持つ「三線」
続いては「三線(さんしん)体験」。これは主に沖縄や奄美大島で親しまれている弦楽器。中国の三弦(さんげん)が起源とされ、 14世紀頃に福建省からの移民によって伝えられたそう。その名の通り弦が3本あり、胴体部分は蛇皮が貼られているのが特徴です。
今回トライするのは初心者でも弾きやすい「きらきら星」。楽譜には弦を押さえる場所や弾く弦が示されているので、弦楽器が初めてでも安心。
まずはスタッフさんが弾き方のコツを伝授。三味線とはひと味違う独特のやわらかい音色は、ただそれだけで沖縄感満載です。
左手の指で弦を押さえながら、爪(バチ)を付けた右手の指で弦を弾きます。最初は上手く音を出せなかった筆者ですが、慣れてくるとそれっぽく弾けるように。全長が短く弦が太いため、ギターより弾きやすいという印象です。三線体験の所要時間は30分~45分で、2,000円(税別)。1人から参加OK。
脈々と受け継がれる沖縄家庭料理を堪能
三線のやさしい音色に魅了された後は夕食。「美ら産プラニング」代表、与那嶺ミチ子さんによる手作り沖縄家庭料理をいただきます。提供される場所はカフェであるものの、親戚の家に遊びに来たような居心地の良さ。
前菜は地元産もずくや沖縄の冬野菜の代表格であるニガナの白和え、ジーマミー豆腐など。ニガナは文字通り独特の苦味がありますが、甘みを湛えた島豆腐と絶妙にマッチ。
お造りは沖縄産マグロやハマダイなど。旨味が濃厚なマグロはプリッとした歯応え。ハマダイは甘みに奥行きがあり、口の中で豊かな風味が広がります。
てびち(豚足)と厚揚げの煮物。泡盛でたっぷり時間をかけて煮込むという豚足は、お箸でスッとほぐれるほど柔らか。身体にじんわり染み渡るやさしい味わいでした。
〆には、五穀米ご飯と中身汁。中身汁とは、沖縄のお祝いの席に欠かせない郷土料理の一つで、豚の大腸や小腸、胃などのモツを具にした澄まし汁のこと。聞けば、内臓特有の臭みを取り除くため、大変手間のかかる料理なのだとか。じっくり煮込まれたモツはコリコリした歯応えと柔らかな食感のコントラストが格別。生姜の風味がきいた鰹出汁ともよく合います。
デザートには揚げたてのサーターアンダギー。一瞬、「ミント味?」とも思ってしまうこちら、その正体は紅芋だそう。紅芋そのものは紫色ですが、遊び心ある色彩を楽しんでもらおうと、ある工夫をして天然の緑色に仕上げているそう。まずはそのままで紅芋のほっこり感を味わい、次に冷たいアイスとのマリアージュを堪能したいところ。夕食は7品で一人5,000円。野菜、魚、肉、デザートと沖縄食材の魅力を存分に知れる充実の内容でした。
食後には与那嶺親子による三線の演奏がお披露目。伝統的な沖縄民謡から、BEGINの「三線の花」など、独特のリズムと豊かな音色は心に響く美しさ。地元の人とおしゃべりを楽しみ、島の伝統や暮らしを体感する「ゆんたく体験」。次の沖縄旅はいつもと違った新鮮な時間を過ごしてみてはいかがでしょう?
Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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