「十分」と「充分」の違いって?【正しい日本語解説Vol.3】

Posted by: 熊本沙織

掲載日: Jun 12th, 2022

社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らないビジネスシーンの頻出ワードを徹底解説! 今回は、読み方も同じで、違いがわかりにくい「十分」と「充分」について、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。



 

「十分」の意味


「十分」は、満ち足りていて、不足がないこと。漢数字の「十」が使われていることからもわかる通り、一、二、三……と順番に満たされていき、十になって初めて不足がない状態となったことを表しています。数や量が満たされていて、客観的に見ても満たされていることがわかる、というニュアンスがあります。

また、あるものを10に分けること、という意味もあります。

【例文】
食料の買い出しはこれで十分でしょう

 

【プラスアルファ】十分は100%、十二分は120%
「十二分に力を発揮してください」のように、「十分」の代わりに「十二分」を使うと、意味をより強調することができます。十分は100%、十二分は120%と覚えておきましょう。

「充分」の意味


「充分」も、満ち足りていて不足がないこと基本的には、「十分」と同じ意味ですが、「充分」には「十分」のように数や量が満たされているというニュアンスはなく、もっと感覚的・主観的に満たされているというニュアンスがあります。プラスのニュアンスが強く、「充分に気を付けて」という使い方はしません。

【例文】
そう言っていただけるだけで、私には充分です

「十分」と「充分」の簡単な覚え方


「十分」と「充分」は基本的に同じ意味。文科省では「十分」を使うことを推奨していて、「充分」は当て字であるとしています。ただし、「充分」を使っても間違いではありません。

基本的には「十分」を使うようにして、「感覚的・主観的に満ち足りている」というニュアンスを表現したいときは「充分」を使う、と使い分けるとよいでしょう。

また、「十分時間をかけて説明します」などのように、文字だけでは「じゅうぶん」か「じゅっぷん」かわかりづらい場合には「充分」を使うとよいでしょう。あるいは「じゅうぶん」→「不足のないように」、「じゅっぷん」→「10分」と書き換えるのも一つの方法です。

【クイズ】適切なのはどっち?

【答え】
1→充分
2→十分

1の正解は充分。幸せという主観的な尺度に対して使っているので、「充分」がしっくりきます。もちろん、「十分」も問題なく使えます。

2の正解は十分。蓄え(=貯金、資産)という数量的な尺度に対して使っていますし、警告のニュアンスが強いので、「充分」より「十分」がいいでしょう。

監修:吉田裕子先生
国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。

>>>吉田裕子先生の(株)裕泉堂 公式サイトはこちら

PROFILE

熊本沙織

saori-kumamoto

編集プロダクションと出版社での勤務を経てフリーの編集者・ライターに。ウェブメディア・書籍・雑誌・広報誌などで幅広く活動中。隙あらば航空券をウェブ検索し、旅のプランを練っている旅行好き。自宅に3台のたこ焼き機を所有する関西人。

編集プロダクションと出版社での勤務を経てフリーの編集者・ライターに。ウェブメディア・書籍・雑誌・広報誌などで幅広く活動中。隙あらば航空券をウェブ検索し、旅のプランを練っている旅行好き。自宅に3台のたこ焼き機を所有する関西人。

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