「日本人の読書時間は、世界の中でも最低ランクである」というデータが、少し前ですが発表されました。読書時間の短さ以外にも、見逃せない問題があります。他国と比較しながら、日本の読書事情を見てみましょう。
世界一の読書家はインド人!
NOP Worldの調べによると、先進国を中心とした世界30か国のなかで、1週あたりの読書時間が最も長かったのはインドでした。ちなみに調査対象国の平均読書時間は、1週6.5時間です。
上位10位は以下の通り。
2位 台湾(9.4時間)
3位 中国(8.0時間)
4位 フィリピン(7.6時間)
5位 エジプト(7.5時間)
6位 チェコ(7.4時間)
7位 ロシア(7.1時間)
8位 スウェーデン(6.9時間)
8位 フランス(6.9時間)
10位 ハンガリー(6.8時間)
10位 サウジアラビア(6.8時間)
日本の読書時間はワースト2位!
下位10位はこちら。
20位 カナダ(5.8時間)
22位 ドイツ(5.7時間)
22位 アメリカ(5.7時間)
24位 イタリア(5.6時間)
25位 メキシコ(5.5時間)
26位 イギリス(5.3時間)
27位 ブラジル(5.2時間)
28位 台湾(5.0時間)
29位 日本(4.1時間)
30位 韓国(3.1時間)
日本人の1週あたりの読書時間は4.1時間。韓国に次いで、2番目に短い読書時間です。
下位層を占めるアジアの国はワーカーホリック国としても知られており、もしかしたら読書をしている暇がないのかもしれません。
日本ではどんな本が売れている?
そんな日本で、今年最も売れている本は何でしょうか。
2016年上半期のベストセラーランキング(トーハン調べ)を見てみましょう。
2位 『おやすみ、ロジャー』、カール=ヨハン・エリーン (ジャンル:絵本)
3位 『正義の法』、大川隆法 (ジャンル:幸福の科学)
4位 『羊と鋼の森』、宮下奈都 (ジャンル:小説)
5位 『君の膵臓を食べたい』、住野よる (ジャンル:小説)
1位につけたのは、石原慎太郎氏による田中角栄の“自伝”でした。日本人の読書事情では高齢者の読書離れもよく聞きますが、二者の名前は、読者の年齢層の高さを思わせます。
さらに、2015年通年のベストセラーランキング(トーハン調べ)を見てみましょう。
2位 『フランス人は10着しか服を持たない』、ジェニファー・L・スコット (ジャンル:実用)
3位 『家族という病』、下重暁子 (ジャンル:エッセイ)
4位 『智慧の法』、大川隆法 (ジャンル:幸福の科学)
5位 『聞くだけで自律神経が整うCDブック』、小林弘幸、大矢たけはる (ジャンル:実用)
6位 『置かれた場所で咲きなさい』、渡辺和子 (ジャンル:エッセイ)
7位 『新・人間革命(27)』、池田大作 (ジャンル:聖教新聞)
8位 『一〇三歳になってわかったこと』、篠田桃紅 (ジャンル:エッセイ)
9位 『人間の分際』、曽野綾子 (ジャンル:エッセイ)
10位 『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』、坪田信貴 (ジャンル:ノンフィクション)
ここでも、高年齢の著者による本がランキングを占めます。下重暁子氏(80歳)、渡辺和子氏(89歳)、篠田桃紅氏(103歳)、曽野綾子氏(85歳)。日本人女性のパワーを感じますが、書き手も読み手も高齢化している現実が現れているようです。
インド人はどんな本を読んでいるの?
では、読書時間ランキング1位のインドでは、どんな本が読まれているのでしょう。
アマゾン・インディアのベストセラーランキングはこんな感じです。
2位 Manorama Yearbook 2016 (ジャンル:実用)
3位 Everyone Has A Story (ジャンル:実用)
4位 The Monk Who Sold His Ferrari (ジャンル:自己啓発)
5位 Word Power Made Easy (ジャンル:参考書)
1位の『One Indian Girl』は短編小説&短編ノンフィクション集。著者は「インド史上もっとも売れる英文作家」として人気の42歳です。2位はビジネスや就職試験に使うデータブック、3位の小説は著者のデビュー作、4位は自己啓発書で、5位は英語のテキストです。
いずれも若者やビジネスマンが読んでいそうな、元気な本たちです。
アメリカのベストセラー事情
それでは、読書時間ランキング22位のアメリカでは、どんな本が読まれているのでしょう。
以下はアメリカの大手書店バーンズ&ノーブルズの2015年ベストセラーランキングです。
2位 Grey: Fifty Shades of Grey as Told by Christian (ジャンル:小説)
3位 Secret Garden (ジャンル:ぬり絵)
4位 The Girl on the Train (ジャンル:小説)
5位 All the Light We Cannot See (ジャンル:小説)
6位 Enchanted Forest (ジャンル:ぬり絵)
7位 Harry Potter and the Sorcerer’s Stone: The Illustrated Edition (ジャンル:ヤングアダルト小説)
8位 What Pet Should I Get? (ジャンル:絵本)
9位 Old School (ジャンル:ヤングアダルト小説)
10位 The Life-Changing Magic of Tidying Up (ジャンル:実用)
※10位はこんまりこと近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』の英訳版
かなり読み応えのある長編小説が4冊もランクインしています。何より特筆すべきは、ヤングアダルト小説(YA小説)が2冊ランクインしていること。日本では「売れない」のが定説で次々レーベルがなくなってしまっている小中学生向けの小説が、アメリカではよく読まれているのです。
2016年の現時点でのベストセラーも、ヤングアダルト向けのハリーポッター続編です。
ハリーポッターはもはやヤングアダルト小説の域を超えてしまっていますが、それでも次世代の読者が着実に育っていることを感じさせます。
若い読者を育てるアメリカ
アメリカでは、ストーリータイムと呼ばれる読み聞かせが、図書館、書店やおもちゃ屋さんなど様々な場所で毎週のように開催されています。
書店には必ずといっていいほど広い絵本コーナーがあり、親子連れでにぎわっています。
小さなころから本に触れさせる機会がとても多いように感じます。
また教養として、読書が非常に重要視されています。お勉強や仕事ばかりできる真面目人間はあまり好まれず、日常会話で好きな本の話ができる人のほうがスマート、というイメージがあります。
ビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏も読書家として知られています。「成功するなら本くらい読んでおかなければ」という価値観が社会の底にあるのです。
忙しい人も読書ができるオーディオブック
さらに、読書の手段が様々にあり、ハードルを下げてくれます。
ハードカバー、ペーパーブック、電子書籍に加え、オーディオブックも一般的です。ランニング中、運転中、家事の合間など手が離せない時にとても重宝します。
英語は日本語より耳で聴くのに向いている言語なので、日本よりオーディオブックが浸透しているのかもしれません。
そして、紙の本が新刊でも瞬く間に値引きされます。ベストセラーランキングに載っている売り上げ好調書籍でも、です。
日本では再販制度という流通形態のため、本のセールがされません。消費税の免除もありません。お金のない若者が毎月何冊も本を買うのは、なかなか厳しいものがあります。
近い将来、本は時間とお金があるシニアのためのぜいたく品になってしまうかもしれません。
「このままでいいの?日本人〜フランスと日本、読書量の圧倒的な違い〜」では、フランス人との読書事情の比較も紹介しましたが、日本の活字離れ、このままでいいのでしょうか・・・?
[Which Country Reads the Most? | Mental Floss]
[NOP World Culture Score(TM) Index Examines Global Media Habits]
[Amazon Bestsellers in Books | Amazon India]
[The top 100 bestsellers of the year | Barnes and Nobles]
[2015年 年間ベストセラー<総合>]
※情報は2016年10月現在のものです