全長26キロ 幻想的な光景が広がる野付半島
近年、脚光を浴びる野付半島(のつけはんとう)。日本でありながら、北欧かシベリアのような幻想的で不思議な光景は、“世界の果て”を思わせる絶景として注目されています。そして残念ながら100年後には姿を消してしまう光景ともいわれているのです。
野付半島は北海道の東、知床半島と根室半島の中間に位置し、根室海峡に突き出した砂嘴(さし)です。日本で最も長い砂嘴で全長は26キロ。砂嘴とは、沿岸のゆるやかな波によって運ばれた土砂が堆積してできた、海上に突き出た地形をいいます。民家は見当たりません。フラワーロードと呼ばれる、まっすぐに伸びる1本道の両側は海なのです。
車を走らせていると、ちょうど道路わきに案内地図がありました。ごらんのように根室海峡に向かって半島が細長く伸び、先端は海流の流れでしょうか、丸まっています。
野付半島は、その豊かな自然から北海道遺産やラムサール条約にも登録されています。こちらの光景はフラワーロードから見える、風化したミズナラが湿地のなかに立ち枯れた奇観「ナラワラ」です。
ナラワラとは、ミズナラの原っぱを意味するそうです。かつてはミズナラの広葉樹林が広がっていたといいますが、海水の浸食で立ち枯れたのです。ミズナラの枯れ木は真っ白い小さな骨のように見えます。立ち入り禁止のため、道路わきの駐車場からしか見ることができませんが、不思議な光景です。
半島の先端には、周辺の大自然を紹介する野付半島ネイチャーセンターがあります。1階は観光案内や特産品販売、レストランが併設されています。
2階のネイチャーフロアには周辺に生息する野生動物の剥製が展示され、写真とともに楽しく学ぶことができます。またホワイトボードには、訪れた観光客の目撃をもとに野生生物の発見情報が書き込まれているので、散策の参考になります。
真夏でも太陽が隠れて風が吹くと、とたんに肌寒く感じます。まるで2,000m級の山の上にいるような感覚。ハマナスは海岸に咲く花ですが、ナデシコやエゾフウロなどは高山で見かける植物ですから、不思議な組み合わせの環境なのです。
“世界の果て”を思わせる「トドワラ」の光景
そして“世界の果て”を思わせるのが半島先端に残された、「トドワラ」と呼ばれる不思議な水辺です。トドワラとはトドマツの原っぱという意味。歩き始めると不思議な世界に迷い込んだような気分になります。
かつて、ここにはトドマツやエゾマツの森が広がっていました。しかし地盤沈下とともに海水が浸食し、マツが立ち枯れたまま残されたのだそうです。
しかし、このトドワラはいま危機に瀕しているといいます。長年続く地盤沈下と海水による浸食。さらに近年の異常気象や高潮の影響で木々がなぎ倒され、朽ち果てて一部は土壌に還り、規模は年々縮小しているのだそうです。
地盤沈下は年間1.5センチずつ進んでいるとか。そして100年後にはこの光景も消滅してしまうというのです。
帰り際、かわいらしいキタキツネがふいと草むらから顔を出しました。それほどひとを恐れている様子はありません。じっと動かずに遠くを見つめている姿が、気のせいか儚げに思えたのでした。
道東にもあった秘湯 尾岱沼温泉
直前までこの土地に温泉が湧いていることを知らなかったのですが、この道東にも温泉があります。野付半島からほど近い別海町の港町、尾岱沼(おだいとう)温泉です。このときお世話になったのが、漁港に近い「野付湯元うたせ屋」でした。
ちなみに尾岱沼(おだいとう)とは、アイヌの言葉「オタエト」に漢字をあてたもので、まさに「砂の岬」を意味しているといいます。
野付湯元うたせ屋はこじんまりした和風の宿で、夏休みに親戚の家に遊びに来たような気分でした。
温泉は塩化物泉。源泉が53度と高いために加水していますが、源泉かけ流しといいます。夏場でも天気が悪ければ上着が必要な土地柄ですから、塩化物泉は体が温まります。
楽しみな夕食。道東ならではの海の幸が並びます。赤い色をしたエビはこの海でしか獲れないという「北海シマエビ」です。アオモという海草が生えるきれいな浅瀬にしか生息せず、漁期は年に2回、6月中旬から7月中旬と10月中旬から11月中旬なのだそうです。
野付半島は日本国内ですが、はるかに遠いところまで来たという印象です。ですが一度訪ねただけで、切なくなるような光景が心に染み入る、不思議な場所でした。
[All Photos by Masato Abe]
Masato Abe 還暦特派員
大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。
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