「ビール村」に「卵とベーコン湾」、長すぎて読めない村名も!世界のユニークな地名3選

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Feb 15th, 2021

先日、AFP通信(フランス)の記事を読んでいたら、オーストリアにある「Fucking村」が、「Fugging村」に改名したというニュースを見つけました。Fucking(「くそ」などの意)の言葉には好ましくない意味が込められているので、SNSで世界中からからかわれている現状に、我慢ができなくなったという背景があるみたいですね。そこで今回は同様に、世界のユニークな地名を取り上げ、その背景を紹介したいと思います。

世界地図

BEER村(イギリス)

イギリス・デボン州ビール村

最初はイギリスのデボン州にある小さな漁村「ビール村」から。イギリスとフランスの間にはイギリス海峡が横たわっていて、その海峡に面したイギリス側には、海岸線が大きく湾入したライム湾があります。

そのライム湾岸には、ビール村というユニークですてきな名前の漁村があります。綴りもBeerですから、ビール好きには聖地のような響きの村ですね。

ただ、Beer村によれば、地名の由来とアルコール飲料には何にも関係がないそう。村の公式ホームページにも、

<Its name has nothing to do with alcohol! The interpretation of the name is actually uncertain and is therefore open to debate.>(Beer Villageの公式ホームページより引用)

と書かれています。日本語にすれば「村の名前はアルコールと何にも関係ありません!名前の解釈については、実際にはわかっていないため、広く議論されています」的な内容です。

現在は存在しないものの、かつて同地には森があり、その森の木を意味する言葉が変化してBeer Villageになったのではないかと、一説にはいわれているみたいですね。

住民は旅行中に「どこから来たの?」と問われるたびに、話題に事欠かないはずです。ちょっとうらやましいですね。

EGGS AND BACON湾(オーストラリア)

ベーコンエッグ

村ではないですが、ちょっとユニークな湾の名前を紹介します。タスマニア島にある地名で、直訳すると「卵とベーコン」という湾名です。テーブルと椅子を持ち出して朝食を食べる分には、最高の海辺かもしれませんね。

そもそもタスマニア島とは、オーストラリアの南部にある島でした。カフェのまち、メルボルンなどがあるビクトリア州から見て、バス海峡を挟んだ対岸にある巨大な離島です。

『広辞苑』(岩波書店)によると、面積は6万8,000平方キロメートルと書かれています。このサイズは、北海道よりは小さいものの、九州よりは大きいので、離島という表記はそぐわないかもしれませんね。

日本の江戸時代初期に、オランダの航海家タスマンが「発見」して、もちろんアボリジニー(先住民)も暮らしていたわけですが、「発見者」タスマンの名前が付きました。

タスマニアの南部には、氷河がつくったのか、リアス式海岸なのか、入り組んだ湾(フィヨルド)が地図からも見て取れます。この出入りの激しい海岸線の一角を、「卵とベーコン湾」と呼ぶのですね。

エッグスアンドベーコン湾

Eggs and Bacon湾。WikipediaのCC画像より。Photo by Lumenatrix

どうしてこのようなユニークな名前が付いたのでしょうか?諸説あるようですが、オーストラリア政府観光局に聞くと、11月と12月に辺り一面に咲く、黄色と赤の野生の花の名前から来ているとの回答がありました。

「The yellow-and-red wildflower is called eggs and bacon flowers.」

といった感じで、まさに黄色と赤の野生の花の名前が、「卵とベーコン・フラワー」と呼ばれているのですね。

ただ、この「卵とベーコン湾」という名前に関しては、動物の権利を訴えるPETAという団体が、改名を訴える運動を起こしているそうです。動物性の食物の名前ではなく、もっとヘルシーな名前に変えろと。

団体の関係者によると、今のカロリーが高すぎる名前は、「心筋梗塞湾」と呼ぶにふさわしく感じるそうです。同団体の別の関係者は、例えば「リンゴとサクランボ湾」を代替案として出しているのだとか。

このあたりの自由な議論、見方によってはどうでもいいかもしれませんが、見方によってはすてきではありませんか?

Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch村(イギリス)

イギリス・ウェールズLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch村

(C) chrisdorney / Shutterstock.com

最後は、イギリスのウェールズ地方にある小さな村の名前です。とても小さな村なので、住民よりも村名のアルファベットの数のほうが多いのではないかと、一部でジョークにされてるようです。

何度見ても、すさまじく長い名前ですよね。住人は各種の申請で村名を書くたびに、正しい表記を公的な資料で確認しながら、書き写さなければいけないはずです。

同村の公式ホームページには、

<Welcome to the Welsh village with the longest name in Britain!>(同市の公式ホームページより引用)

と書かれています。日本語にすれば、「イギリスで最も名前の長い村へようこそ」といった感じ。さらに、公式ホームページのURL、llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogochuchaf.org.ukは、

<LONGEST VALID DOMAIN NAME IN THE WORLD>(同市の公式ホームページより引用)

とも書かれています。日本語にすると「世界で最も長い、有効なドメインネーム」です。

どうしてこのような長い名前になったのでしょうか?同村の歴史は、紀元前までさかのぼれるため、数千年分を割愛しますが、19世紀の1850年代にはLlanfair Pwllgwyngyllという名前だったそうです。

この段階でも十分に長いですが、鉄道が同地に敷設されると決まって、地元を大勢の人と鉄道が立ち寄る一大観光地にしようとする動きが、地元で生まれます。

その仕掛けとして、靴屋の職人がLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogochという長い名前を考えたみたいです。変な名前にすれば、人の関心が集まるのではないかと考え、改名を提案したわけです。

結果としてその工夫が功を奏しました。実際に筆者のような日本に暮らすライターが、何のゆかりもないのに村の名前を取り上げ、知名度貢献に一役買っているわけですから。マーケティング戦略としては、ばっちりですよね。

ちなみに現地の交通標識は、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogochという長い名前を表記するために、大変な横長になっていました。

気になる読み方はあえてカタカナ風に言えば、「ラン・ヴァイル・プル・グウィン・ギル・ゴ・ゲリ・フ・ウィルン・ドロブ・ウル・ランダス・リオ・ゴゴ・ゴホ」みたいですね。

イギリス・ウェールズLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch村

以上、ユニークな地名を3つ紹介しましたが、世界には、ほかにもユニークな名前の村や地名がいっぱいあります。旅行を自由に楽しめない今は、こうした名前を世界に探して、現地を旅した気分になるだけでも、息抜きになるはずですよ。

[参考]
※ Beer – Devon’s Best Kept Secret – Beer Village
※ PETA launches bid to change Eggs and Bacon Bay to healthy alternative
※ Welcome to the Welsh village with the longest name in Britain! – llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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