絶景と秘湯に出会う山旅【39】武田信玄ゆかりの川浦温泉と乾徳山

Posted by: 阿部 真人

掲載日: May 13th, 2022

山梨県北部に位置する山梨百名山のひとつ、標高2,031mの「乾徳山」。樹林帯に草原、山頂直下の岩場など、山歩きの醍醐味を十分に味わえる登山者に大人気の山です。今回は乾徳山のふもとにある、由緒ある名湯「川浦温泉 山県館」に宿泊して早朝に出発。新緑の山歩きを満喫しました。

露天風呂
(C)山県館

武田信玄ゆかりの名湯「川浦温泉 山県館」に宿泊

「川浦温泉 山県館」は、山梨県の中央を流れる笛吹川上流に位置します。中央道勝沼ICを出て、ブドウ畑を北上。40分ほどで到着。以前は行き止まりの淋しい道でしたが、国道140号線の雁坂トンネルが開通して埼玉県秩父とつながると交通量も増えるようになりました。

ホテル遠景
(C)Masato Abe

山県館は笛吹川の支流・徳和川沿い、大自然のなかに構える歴史ある名湯です。永禄4年(1561年)、「川浦の湯を整備せよ」と武田信玄の命により開発された温泉といい、信玄の書が残されているのです。

ロビーラウンジ
(C)Masato Abe

山梨県には「信玄公の隠し湯」と呼ばれる温泉が多くありますよね。信玄は戦の前には兵たちに温泉で英気を養ってもらい、戦のあとには傷の治療にも役立てたといいます。それが効いたのか、生涯の戦績は戦国武将でも群を抜く、80戦60勝3敗17分けという好成績だったそうです。

山縣三郎右兵衛尉昌景鎧兜
信玄の命
(C)Masato Abe

山県館の先祖は、その信玄公に仕えた武田二十四将のひとり、山縣三郎右兵衛尉昌景といい、現在17代目だそうです。

玄関ロビーやラウンジには武田家の史料や文献、また山縣三郎右兵衛尉昌景の鎧兜が展示され、歴史をリアルに感じることができます。

客室
(C)Masato Abe

今回宿泊したのはスタンダートの和室ですが、露天風呂付きの客室や貴賓室、また絶景リビングルーム付きの部屋など、多彩な部屋が用意されています。

武田信玄の隠し湯で憩う

大浴場
(C)山県館

アルカリ性単純泉の源泉は2本あり、1分間に1,250Lの豊かな湯量。4カ所あるお風呂はすべて源泉かけ流しで「日本温泉遺産を守る会」認定の宿なのです。

そうそう、アルカリ性単純泉で、成分分析表にも記載はないのですが、硫黄の香りもするのが不思議。

露天へのアプローチ
(C)Masato Abe

渓流沿いにある露天風呂がとびきり素晴らしいのです。館内の大浴場にも露天風呂がありますが、ぜひとも入浴しておきたいのは開放感あふれる渓流沿いのお風呂。長い廊下を歩き、エレベーターを渓流沿いに降りて、さらに渡り廊下を歩いて露天風呂に向かいます。アプローチが長いのも、期待感を高めてくれますね。

露天風呂
(C)山県館

その渓流沿いにある露天風呂にやってきました。屋根がついているので直射日光にはさらされませんが、緑がまぶしく、すがすがしい露天風呂なのです。

入浴できる時間は日の出から22時まで。時間交代制で、日の出から10時は混浴、10時から16時までは男性用、そして16時から18時30分は女性用、18時30分から22時は混浴なのだそうです。ぜひ体感していただきたい露天風呂です。

山の幸・海の幸・山梨の味をいただきます

山菜サラダ
前菜
(C)Masato Abe

夕食は食事処でいただきました。先付は山菜のサラダ。そして前菜は菜の花と帆立の雲丹和え、水こぶの胡麻和え、蛸と卵焼きの串刺し、蛍烏賊燻製クリームチーズに、鰆生ハム。一品ずつ、メリハリを考えて工夫を凝らしています。

おざら
(C)Masato Abe

お刺身に続いて供されたのが、山梨県の郷土料理「おざら」(上の写真)。冷たい「ほうとう」のことを「おざら」というのだそうです。夏の暑い日も「おざら」はつるつるいただけます。

ヤマメの塩焼き
焼しゃぶ
(C)Masato Abe

ヤマメの塩焼き、そして豚の角煮冬瓜スープ煮の後、〆は甲州牛の焼きしゃぶ。石焼したものをゴマダレと橙酢でいただきます。大変満足でした。

川浦温泉 山県館
住所:山梨県山梨市三富川浦1140
電話:0553-39-2111
公式サイト:https://yamagatakan.com/ 

樹林あり草原あり岩場あり「乾徳山」へ

翌朝は6時出発で乾徳山へ向かいました。

徳和集落
(C)Masato Abe

川浦温泉は乾徳山のふもとにあり、登山者の駐車場のある徳和集落まで車で10分もかかりません。

登山口
(C)Masato Abe

駐車場からは集落を通り抜けて、登山口にやってきました。

この乾徳山、江戸時代後期の『甲斐国志』によれば、鎌倉時代に臨済宗の僧・夢窓疎石が修行した山で、乾徳山の南にある恵林寺は鎌倉末期の元徳2年(1330年)に夢窓の開いた由緒あるお寺。そのお寺の山号が「乾徳山」なのです。そして恵林寺は武田信玄の菩提寺であり、「武田信玄公の墓」もあります。帰りに立ち寄ったので、後で紹介します。

緑まぶしい樹林帯
(C)Masato Abe

乾徳山の山歩きは、多彩な山の表情が楽しめますが、まずはこの明るい木立。日差しを浴びた緑の林がとても気持ちいいのです。

鹿に遭遇
(C)Masato Abe

ここでは野生のシカに出会えるかもしれません。シカは人をそれほど怖がらないようです。とはいえ、決してエサを与えないでくださいね。

国師が原高原ヒュッテ
(C)Masato Abe

途中にある国師ヶ原高原ヒュッテは避難小屋でもあり、きれいに手入れされています。トイレもあるのでご安心ください。

扇平
(C)Masato Abe

国師ヶ原から扇平の中腹はかつて開拓牧場で、明るい草原になっています。

富士山に雲がかかる
(C)Masato Abe

樹木のない扇平で振り返ると、甲府盆地の向こうに大きな富士山が見えるのです。この日は天気はまずまずでしたが、富士山周辺では下から雲が立ち上ってくるようです。

山頂手前にある岩場は慎重に

岩場
(C)Masato Abe

山頂に向かうと樹林帯があり、そして山頂直下は岩場が続きます。そのために初めて山登りをする方は難しいかもしれません。安全な回り道があるので、迂回するのもおすすめです。

富士山は雲の中か
(C)Masato Abe

山頂下の岩場にやってきました。後ろを振り返ると、次第に富士山が雲に覆われていくようですね。

鳳岩
(C)Masato Abe

この岩場、極めつけは「鳳岩」です。およそ20mの垂直の壁。この岩を登り切れば山頂。いざというときのために鎖をつかんで、三点支持で慎重に登っていきます。

山頂
(C)Masato Abe

ようやく岩場の山頂に到着。それほど広くはありません。登山口から3時間10分ほどで登頂です。標高は2,031mですから、決して高い山ではありませんが、さまざまな山の醍醐味を楽しめる登山でした。

残念ながら富士山は雲に隠れてしまいましたが、天気さえよければ周囲360度が気持ちよく見渡せます。「1点360度の展望」というのだそうです。

乾徳山
住所:山梨市三富徳和
公式サイト:https://www.yamanashi-kankou.jp/kankou/spot/p2_3780.html 

武田信玄が眠る「恵林寺」の山号が乾徳山

恵林寺山門
(C)Masato Abe

中央道勝沼ICに向かう帰りがけに、「恵林寺」に立ち寄りました。さきほども書きましたが、この恵林寺は武田信玄の菩提寺であり、由緒ある大きなお寺なのです。建物の内部も信玄公のお墓も拝観することができます。拝観料は500円。

山号乾徳山
(C)Masato Abe

四脚門(赤門)に掲げられていた山号に(右から左へ)「乾徳山」とあります。ちなみに乾徳山とは、このお寺の「乾」=北西の方向にある「徳和村」の山で修業したことから名付けられたそうです。

受付猫
(C)Masato Abe

歴史あるお寺ですが、拝観受付にいるマスコットの猫ちゃん(オス猫で「ちゃーくん」という名前です)は「オレが門番だ」という感じで堂々と寝そべっていました。信玄公のような豪胆なネコちゃんですね。

乾徳山 恵林寺
住所:山梨県甲州市塩山小屋敷2280
電話:0553-33-3011
拝観時間:8:30~16:30(宝物館は12月~3月は毎週木曜閉館)
料金:恵林寺拝観料500円、宝物館500円
公式サイト:https://erinji.jp

 

PROFILE

阿部 真人

Masato Abe 還暦特派員

大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。

大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。

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