そもそも「お雑煮」とは?
今やお正月に当たり前のように食しているお雑煮ですが、約500年前に誕生したものだと知っていましたか? 当時はお正月のみならず、上流の武家や公家が大事な客人をもてなすための料理の一つだったそうです。
織田信長が徳川家康を招き、信頼関係を築くためにお雑煮を出してもてなしたという記録も残っているのだとか。お雑煮は、京都や江戸から決まったものが広がったのではなく、その土地の食材や食文化が色濃く凝縮したものとなっていきました。
お雑煮の主役であるお餅。東日本では「角餅」、西日本では「丸餅」が多く使われていますが、一部には餅を一切入れない「餅なし」のお雑煮もあるそう。また、餅を焼く、煮るなど、調理方法にも違いがあります。
さらに、だしや味付けも「すまし」と「味噌」(主に白味噌)にわかれますよね。具材も地域によって入れるものが異なり、その土地固有のものや、魚、肉を入れることがあります。
お雑煮を食べ比べ!具材や味付けはこんなに違う
関東風雑煮
まずは関東風お雑煮から。江戸時代の武士の縁起担ぎにちなみ、「勝負に味噌はつけない」ことからすまし汁のお雑煮です。鶏肉や小松菜などの具材が中心ですが、家庭によって人参、大根、椎茸などを入れることもあるようですね。
お餅は焼いた角餅が入っています。角餅は、江戸時代に平たく伸ばして切り分けたことから、別名「のし餅」ともいわれます。
海老をあしらうと華やかで豪華な雰囲気に。今回いただいたものは、だしの味をしっかり感じつつもあっさりと食べやすい味わいでした。
関西風雑煮
関西では、甘い白味噌を使ったお雑煮が一般的。具材は、魚や肉類は入れず、金時人参、里芋、大根などが入っています。関西出身である筆者の実家ではクワイを入れ、必ず柚子の皮をあしらっていました。お餅は、煮た丸餅です。
丸餅に合わせ、金時人参や里芋などの具材もすべて丸く切って入れるのが我が家のスタンダードでした。子どもの頃から、なぜ丸にこだわるのか?と疑問に思っていたのですが、円満を願ってということのようですね。
【新潟県】鮭雑煮
西日本・博多雑煮の鰤に対し、東日本の新潟では縁起魚とされる鮭が入っています。細く長く、長寿の願いを込めたかんぴょう、鮭、イクラが入った豪華で華やかなお雑煮。具材の魚から出るだしがよい仕事をしている、魚介の旨みを感じる味わいです。
新潟出身の同僚に聞くと、「(実家のお雑煮は)こんなに豪華じゃない……」と言っていたので、やはり住んでいる地域や家庭によっても微妙に異なるようです。
【島根県】出雲雑煮
今回ビジュアルを見て、最も驚いたのが出雲雑煮でした。とても洗練された見た目が印象的! 餅の上にのっているのは、十六島(うっぷるい)海苔で、島根県出雲市十六島周辺で獲れる岩海苔。奈良・平安時代より献納品とされ、希少で高級なものなので、新年のお雑煮に入れていただくのにピッタリな食材です。
十六島海苔の磯の香りが漂う、限りなくお吸い物に近い味わいのお雑煮。今回食べ比べした5種類のなかでは、一番あっさりした味でした。
【福岡県】博多雑煮
お雑煮のだしに欠かせないものだったという「あごだし」。具材は、鰤(ブリ)、かつお菜、干し椎茸など。食べ比べでいただいたものは、鶏肉も入っていて食べ応えあり。古くから福岡で栽培されてきた食材・かつお菜は、ほんのり苦みを感じるアブラナ科の葉野菜です。
あごだしに鰤やかつお菜が加わり、だしの旨みたっぷりなお雑煮でした。
地域や家庭に根付く味
新年を迎え、毎年当たり前のようにいただくお雑煮ですが、地域によってこうも異なるのかと驚きでした。その土地の食材が使われたり、家庭によって具材をプラスしたりアレンジしたり、地域や家庭で古くから受け継がれてきた味なのですね。
異なる地域のお雑煮を食べてみて感じたのは、やはり昔から食べなれている故郷の味が一番、ということです。やさしい白味噌の関西雑煮が、筆者にとって唯一無二のお雑煮。幼いころから慣れ親しんだ味のパワーって強力ですね。これぞ我が家の味、そして故郷の味という感じなのです。それはきっと誰もが、自分の故郷のお雑煮に対して思うことなんでしょう。
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[Photos by Chika]